打って声を枯らして、松田宣浩の流儀=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

圧倒的な戦力を象徴する6番・松田

昨季に続き、松田選手会長(中央)の合図で歓喜のビールかけへ。松田はここまで全試合に出場して連覇に大きく貢献した 【写真は共同】

「今年は“熱男”! 今年は“熱男”! ホークス優勝だー!」

 歓喜のビールかけは、今シーズンのスローガンを合図に始まった。拳を突き上げて音頭をとったのは松田宣浩だ。選手会長に就任して2年続けて「大役」を担う悲願も達成し、「寝ずに考えたあいさつです!」と笑っていた。

 リーグ2連覇だ。9月17日の優勝決定はパ・リーグ史上最速だった。他球団をお手上げ状態にしたのは圧倒的な戦力層の厚さ。6番・松田はその象徴の1つである。この日まで全試合(127試合)でグラウンドに立ち続けた。フルイニング出場はパ・リーグでは松田と秋山翔吾(埼玉西武)の2人だけだ。V2を決めたこの西武戦(ヤフオクドーム)の4回には、リードを2点に広げ、優勝ムードを一気に高めた第34号ソロを右中間にたたき込んだ。中軸の後ろを打つバッターが34発、89打点の成績は驚異としか言いようがない。

 これまでの本塁打自己記録は11年の25発だった。激増した背景には今季からヤフオクドームに新設された「ホームランテラス」がある。34本のうち本拠地弾は22本塁打(60試合)を数え、その中の12発が“テラス弾”だ。この日の右中間34号もテラスにたたき込んだ。難癖をつける声も少なからずあるが、そんなことよりも注目してほしいのは“スタンド弾”が10発ある点。昨季の本拠地では5本塁打だったのが、事実上倍増しているわけだ。

「外野フライのイメージ」で本塁打激増

 その“コツ”について、松田はこう語っている。
「今年は『外野フライを打つ』というイメージ。それが功を奏したと思っています」

 昨年までは低くて強い打球。理想は「ゴルフで例えるならドライバーショット」と語っていた。だが、それを意識しすぎて上体が前のめりになってしまう悪癖があった。そうなるとボールの見極めが早くなり、低めの変化球に対応できない。

「大きなフライを打つ。そのためには下半身を使わないとボールは飛ばない。なので、以前は上体が突っ立っているような構えでしたが、今年は重心をぐっと落とすことで、下半身を意識した打撃ができていると思うんです」

 今年、練習ではロングティーに重点を置いた。
「以前は外野にノックを打って遠くに飛ばす練習をしていましたが、ロングティーは体全体を使わないとボールが飛ばないし、打球の角度を自分で考えながら打つことができる練習なので効果があるんです」

 試合前にはフリー打撃を行う前に打撃ケージの横に移動して外野のポールを目掛けて打つ。全体練習前に早出で行うのも珍しい光景ではない。

 松田クラスの選手が常に苦心し、誰よりも練習に時間を割く。工藤公康監督も監督に就任して最初に驚いたのは、選手たちの練習量だった。「王監督、秋山監督時代からの良い伝統が継承されているんでしょう」と語っていた。優勝後の監督インタビューで「僕が苦しいとか大したことはない。朝から毎日練習に励む選手たちの努力をグラウンドを通して見てきました。選手たちのおかげです。ありがとうございます」と選手たちの健闘をたたえたのも、それがあったからだ。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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