守備で貢献した本田、岐路に立つ長友 ミラノダービーで見えた2人の立ち位置

片野道郎

出場機会がなかった長友

マンチーニ監督(中央)は体格を含めたフィジカル能力を重視する傾向が強い。長友が不利な立場に置かれている大きな理由はそこにある 【Getty Images】

 一方、その本田との「日本人ダービー」が期待されたインテルの長友佑都は、残念ながら出場機会なし。右サイドバック(SB)にはダビデ・サントン、左SBには本来センターバック(CB)のファン・ジェススが起用され、そのファン・ジェススが負傷で退いた後には、今夏獲得した新戦力のブラジル人アレックス・テレスがピッチに立ったことから見ると、現時点での序列は左SBの三番手以下ということになる。

 インテルのロベルト・マンチーニ監督は、テクニックや戦術理解力だけでなく、体格を含めたフィジカル能力の高さを重視する傾向が強い。フィジカルコンタクトやセットプレーで負けないだけでなく違いを作り出す「デカくて強い選手」が好きなのだ。実際、このダービーのスタメンも、故障欠場したCBミランダの穴を埋めたガリー・メデル(171センチ)を除く10人が身長180センチ以上。日本人の中では傑出してフィジカルコンタクトに強い本田が当たり負けする強靭(きょうじん)な選手がそろっていた。スピードと持久力では傑出しているがフィジカルコンタクトや空中戦では体格的な限界がある長友が、ポジション争いにおいて不利な立場に置かれている大きな理由のひとつは、まさにそこにあるように見える。

 今夏の移籍マーケットでは放出候補に挙げられ、サンプドリア、ジェノア、ガラタサライ、レスター、レバンテといったクラブに移籍の可能性があったと言われるが、最終的には残留の道を選んだ。インテルとの契約は今シーズン末までだが、現時点で更新の話は聞こえてきていない。もしこのまま出場機会が大きく限られる状況が続くようなら、冬のマーケットでの移籍も視野に入れざるを得なくなるだろうが、このまま来年6月末の満了を迎えれば移籍金がゼロになるため、移籍先の選択肢はむしろ増える。29歳という円熟期を迎えて、長友はキャリアの大きな分岐点に立たされているように見える。

今季はミラノ勢が主役に返り咲く!?

今回のダービーは緊迫感に溢れた好ゲームだった。ミラノ勢がセリエAの主役に返り咲く日も近いかもしれない 【Getty Images】

 さて今回のミラノダービーだが、両チームとも中位に低迷して内容的にも見どころを欠き、マスコミから「リトルダービー」と揶揄(やゆ)された昨シーズンとは異なり、今回はインテンシティー(プレー強度)が高く緊迫感に溢れた好ゲームだった。

 両チームとも今夏の移籍マーケットでは積極的な投資で補強に動き、とりわけ前線には大物を獲得して戦力を増強したが、それがピッチ上にも反映されたという印象である。結果的には1−0というロースコアに終わったものの、インテルはステヴァン・ヨヴェティッチ、ジェフリー・コンドグビア、ミランはルイス・アドリアーノ、バッカといった新戦力がそれぞれ持ち味を発揮して見せ場を作った。

 インテルはスタメン11人中5人、ミランも4人が新戦力ということもあり、チームとしての組織的な連係はまだ構築途上で、攻撃の最終局面はどちらも個人能力だけが頼りだったが、それでも早いタイミングで縦に展開して一気に裏のスペースを狙おうとするミラン、サイドからの崩しを強く意識するインテルという基本的な方向性は読み取ることができた。

 勝ったインテルはこれで3連勝で単独首位、敗れたミランは勝ち点3(1勝2敗)のまま下位に留まっているが、ミハイロビッチ監督は「今日不満なのは結果だけ。内容には満足している。プレーの質も決定機の数もわれわれの方が上だった」と意気軒高。今シーズンはミラノ勢がセリエAの主役に返り咲きそうである。

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著者プロフィール

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。2017年末の『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』(河出書房新社)に続き、この6月に新刊『モダンサッカーの教科書』(レナート・バルディとの共著/ソル・メディア)が発売。

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