女子バスケ代表、リオ五輪出場への道筋 最大のライバル中国撃破へ好発進

小永吉陽子

五輪出場へのカギは渡嘉敷の適応力

五輪出場へ向け、いかに渡嘉敷を加えたチームプレーを作れるかがカギとなる 【小永吉陽子】

 9月1日の中国戦に勝てば問題なく日本は1位で予選ラウンドを通過し、準決勝では中国と韓国戦を避けることで、決勝進出が濃厚になる。まずは中国戦にすべてを注ぐことが肝心だ。そのカギとなるのは渡嘉敷のエンジンがかかるかどうか、である。

 渡嘉敷は8月末に五輪予選に出場することで、シアトルから離れる試練を承知で米国に渡っている。日本にいては経験できない高さやフィジカルの強さの中で個人を磨くことがWNBA参戦の目的であり、ひいては「日本代表のレベルアップにつながる」(渡嘉敷)と決意してのことである。WNBAでは再建期を迎えたチームの中で平均20分のプレータイムを勝ち取り、外国人選手の中に混じっても運動能力の高さを生かして1対1のディフェンスと外角シュートで存在感を示し、確実な成長を見せている。

 しかし、乗り越えるべき壁も多い。8月23日に米国から帰国したのちに、日本から中国へと移動してきた疲れや連戦からくるスタミナ不足、運動量の多い日本のバスケへのアジャストなど対応すべき課題が多く、まだ完全にチームにフィットしているとは言えない状態だ。

「韓国戦で久しぶりに27分も出て、体が相当きつかった。気持ち以上に体は正直だと感じました。ボールもWNBAとは違うので、シュートを打って慣れるしかないと思う」と言い、WNBAと五輪予選の掛け持ちの難しさを痛感している。だが、気持ちだけは折れていない。「でも大丈夫。徐々にコンディションとコミュニケーションを合わせます。絶対にオリンピックに行きたいですから」と自身を奮い立たせている。

 初戦の韓国戦では噛み合わないながらも、吉田からの絶妙なパスを受けてゴールを突き刺し、要所でリバウンドをもぎ取り、終わってみればチームハイの12得点、9リバウンドをマーク。また、2戦目のインド戦(131−31)の後半には、中国戦に備えて渡嘉敷、高田、間宮のインサイドの3枚を同時起用して試す場面も出てきた。いかに渡嘉敷を加えたチームプレーを作れるかがカギだ。

準決勝以降にピークを持って行く戦いを

粘りきる強さをチームが身に付け、準決勝以降にピークを持って行く戦いが重要となる 【小永吉陽子】

 スタメン平均188.8センチ。さらには地元開催の意地を持つ中国に対し、日本が上回れるものは何か。若さからくる粗削りさを時折見せるため、2年前同様に、プレッシャーディフェンスを仕掛けてミスを誘うことである。

 そのディフェンスの要である吉田は膝の靭帯断裂から今年1月に復帰したこともあり、スタミナ面の負担を減らすためにも、控えガードの町田の出番が重要となる。インド戦では町田を含めたベンチメンバーがきっちりとシュートを決めて走り切ったことでムードは良い。また、韓国戦では不発だった栗原三佳(トヨタ自動車アンテロープス)や山本千夏、ここ一番で出番となる三谷藍(共に富士通)らシューター陣が確実に決め切らなくてはならず、総戦力で臨むことは必至である。

 予選ラウンドで中国に負けた場合はどうなるのか。準決勝では韓国との再戦が濃厚となるが、その場合は初戦のように重い展開にならないように、先手を取ることが重要。そして決勝では高さとパワーの中国対策が必要となり、準備してきたゾーンディフェンスをどこで出すかもポイントとなるだろう。確かに日本の良さは、チームコンセプトに掲げた走力がもたらす“勢い”であることに変わりはない。しかし、勢いだけでは乗り切れないのが完全アウェーで挑む五輪予選の怖さでもある。日本でチーム作りを進める間、柱となって支えてきた間宮は現在のチーム状態をこのように分析している。

「アジア選手権は8日間で7試合とタフな日程。韓国戦のように悪い展開でも我慢することや、悪いところを引きずらないで切り替えることが必要。世界の戦いと違い、40分間ねちっこいバスケをするのがアジアなので、もっと粘ることだと思います」

 準決勝までは、渡嘉敷を入れたコンビネーションを作り上げる我慢の時間となることは避けられない。しかしそこで粘りきることで、その先には必ず走る展開を出す時がやってくる。ピークを準決勝以降に見据えた戦いの幕が上がった。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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