自信を深めたロンドン大会の予選から4年 実力でリオへ、ブラサカ日本代表の挑戦

瀬長あすか

日本の武器は鉄壁の守備

強豪・中国、イランを倒すためには、武器である守備に加え、得点面でエース・黒田(左)の出来が重要になってくる 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 魚住監督は、2位以内に入る最低ラインを「勝ち点11」としている。つまり、予選リーグ5試合を、少なくとも3勝2分以上で終えることが求められる。さらに言えば、中国(世界選手権ベスト4)と、イラン(アジアパラ1位)からも勝ち点をもぎ取らなければならないのだ。

 そのために重要なのは、無失点で抑える鉄壁の守備。日本は、魚住監督が「世界一」と称するいわゆる“ダイヤモンド”(フィールドプレーヤー4人がひし形の陣形をとり、4人全員が連動して守備ブロックを固める戦術)を鍛え上げ、直前合宿でも50センチの単位にこだわって選手間のズレを修正するなど、ここにきて精度を増している(見えない状態で互いの声だけを頼りに4人が連動するのは至難の業と言える)。

予選突破のカギを握るエース・黒田

 中国やイランとの試合では、守備を固める日本の攻撃の時間は長くない。そんな中で最大の武器になるのが、エース・黒田智成の存在だ。

 黒田は、02年にブラインドサッカーを始め、その年に日本代表になって以来、長きにわたり中心選手として活躍しているベテラン選手。4年前のアジア選手権直前に、右ひざの十字じん帯を損傷するケガを負い、アジア選手権を万全の状態で迎えられなかった心残りがある。

 ロンドンパラを逃した後は、しばらくボールを蹴る気もしなかったというが、世界の強豪と競い合う仲間を見て、またサッカーがやりたいと思うようになり、12年に手術。10カ月のリハビリを経て、代表に復帰した。

 昨年の世界選手権の初戦では日本を勢いづけるゴールを挙げ、満員の観客席も爆発的に盛り上がった。ケガをした利き足ではない、左足でのゴールだった。

「ケガで右足をほとんど使えず、手術後も左足限定で練習をしていたことで、シュートの幅が広がったんです。今まで、スピードやパワーだけに頼っていたけれど、GKの動きの逆のコースを狙うかけひきを今まで以上に意識してプレーできるようになりました」

 7月のスペイン遠征も得点した4点すべてが左足で蹴ったシュートだった。

「最近、左足でしかシュートが入る気がしないくらいです(笑)」

 黒田がルーズボールを拾ったときが日本のチャンスだ。右サイドを高速ドリブルで駆け上がり、限界まで縦に突き進む。そこに食いついて来た相手をかわして、左に切り込み、ポスト前まで引きずってから、左足でゴール右隅に蹴り込む。アジア選手権でも、黒田のゴールが見られるか。

 5月のIBSAワールドゲームズ(韓国・ソウル)で、日本は今までゴールを破れなかった中国から2得点を奪った。「守備だけでなく、攻撃でも自信を持ちつつある」と黒田。

「(守備の時間が長く)シュートのチャンスは多くないかもしれない。絶対これを決めるという集中力を高めて、数を打つよりも、少ないチャンスを確実に決めることにこだわりたい」

 ブラインドサッカーに関わる人たちが喉から手が出るほど欲しいパラリンピックの出場権。ホームの声援が彼らをパラリンピックの大舞台に押し上げるはずだ。悲願がかなう歓喜の瞬間を見逃す手はない。

『同じ夢を見よう。見えない人も、見える人も。』――パラリンピック出場を目指すブラインドサッカー日本代表


(映像提供:日本ブラインドサッカー協会)

2/2ページ

著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント