優勝争いも阪神の複雑で奇妙な現状 和田監督、古株コーチにNO!?

山田隆道

10年以上居座り続けるコーチも疑問

監督が代わっても、中西投手コーチ(中央)は10年以上もそのまま。いつになったら、コーチ陣にメスは入るのだろうか 【写真は共同】

 また、阪神の場合は和田監督だけに批判の矛先を向けるべきではないとも思う。なにしろ、和田監督誕生のはるか前から居座り続けている古株コーチが複数存在するからだ。

 例えば中西清起投手コーチは岡田彰布監督時代の2004年に就任して以降、真弓明信監督に代わろうが和田監督に代わろうが、自身の座は揺らぐことなく(1、2軍の移動はあったが)、実に10年以上も投手コーチのままだ。また、同じく山口高志投手コーチも03年に就任して以降、途中でスカウトに回ったことはあったものの、ずっと球団の内部にいる。他には久保康生ファームチーフ投手コーチや山脇光治守備走塁コーチ、吉田康夫ファームバッテリーコーチあたりが古株コーチの代表格だ。

 要するに、ここ10年くらいの阪神は監督こそ岡田監督から真弓監督、和田監督と交代させてきたものの、コーチ陣についてはちょっとしたテコ入れ程度で、大きなメスは入れていないということだ。これだけ若手選手の育成が問題視されているにもかかわらず、である。

 今も昔も名コーチと称される人は、同じ球団に何年もおらず、数々の球団を渡り歩くことが多い。彼らは言わば職人であり、契約が切れるたびに他球団からより良い条件の誘いがあったりする。だから、監督交代の余波も受けることなく、同じ球団に10年以上も居座り続けるコーチには、それだけで奇妙さを感じてしまう。推して知るべしだ。

 そう考えると、近年の阪神における「トカゲの尻尾」とは監督なのではないか。フロントがいくら監督を交代させても、それは実は尻尾切りでしかなく、本体が別にあるなら大きな変革にはならないだろう。もしも阪神が今季も優勝を逃したなら、それは和田監督だけでなく、コーチ陣や中村勝広GMも含めた問題として考えるべきだと思う。

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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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