優勝争いも阪神の複雑で奇妙な現状 和田監督、古株コーチにNO!?

山田隆道

優勝は望むが、監督続投は望まれない

今季は勝ちゲームであっても、和田監督(左)の采配への批判が目立つ。首位を走りながら、来季の続投は支持されていない…… 【写真は共同】

 最近、関西の放送局によるプロ野球・阪神戦中継の様子がどうも変だ。解説者やゲストの虎党タレントなどの和田豊監督に対する論調が、これまで以上に厳しいのだ。特にラジオは顕著だ。聴いている私が驚くほど、和田采配を批判する声が目立っている。

 ご存じの通り、現在の阪神はセ・リーグの首位を走っており、10年ぶりの優勝に期待がかかっている状況だ。これまでの在阪メディアなら、そんなチームをさらに盛り上げるべく、どこまでもポジティブかつ阪神びいきの放送をするのがお家芸だった。

 しかし、今季はそういう浮かれた空気があまり感じられない。具体的には梅野隆太郎や江越大賀といった若手の起用法から始まり、バント策の是非や代打・代走・守備固めの起用法にいたるまで、とにかく解説者らが少しでも和田采配に疑問を抱けば堂々と指摘する。負けゲームで批判が目立つのは当然かもしれないが、最近は勝ちゲームでもそれが徹底している。

 もちろん、それだけ本気で優勝を望んでいるからだという解釈が一般的だ。何事も厳しい論調を口にするときの最適のエクスキューズは「期待しているからこそ」である。しかし、それなら2位に終わった昨年も一昨年も同じことが言えるわけだが、現在の批判的論調については、そういう期待の裏返し以上の不穏さを感じる。極端な話、阪神の優勝は望んでいるが、和田監督の続投は望んでいないという暗の意図があるかのようだ。

 一方、阪神ファンの声はもっと明快だ。8月25日、サンケイスポーツが「和田監督、来季続投へ!」という記事を報じたが、それに対するネット上のファンの反応はとても首位を走っているチームとは思えないほど冷ややかなものが多かった。SNSなどでは和田監督続投への反対意見が多数を占め、一方の続投支持派も「和田監督を歓迎しているわけではないが、優勝したら続投も仕方ない」などという、言わば消極的支持がほとんどだ。

 ファンは阪神の優勝を本気で望んでいるわけだから、これは非常に珍しいケースだと思う。シーズン終盤に首位を走りながら、ファンから来季続投を支持されていない監督。長いプロ野球史の中で、あまり聞いたことがない。

「優勝逃したら解任」に舵を切るべき

 思えば、昨年の阪神も夏までは優勝争いを繰り広げていたが、9月の大失速により巨人の優勝が確実視されると、その後は広島との2位争いが注目の的となった。その際、「2位なら和田監督続投、3位なら解任」という球団方針が各マスコミを通じて報じられた。

 しかし、今季は「2位でも解任」という機運が高まりそうだ。先述のサンケイスポーツ(別日付の周辺記事)では、ある阪神球団のフロントが「このままリーグ優勝するか、最後まで優勝争いを続けた場合」という条件付きで、和田監督続投の基本方針を明かしたとも書かれていたが、それが事実(つまり、優勝争いの末での2位なら続投)だとしたら、球団フロントは現状を正しく認識していないのではないかと思えてしまう。

 近年の阪神は優勝争いの末の惜敗がおなじみのパターンになっており、もはや「Aクラスで万々歳」「4位でもBクラスの中の1位だ」などとネタにされていた暗黒時代のダメ虎ではない。ましてや、優勝争いの末の2位なら、球団は最後まで儲かる上、選手の給料も抑えられるから理想的だと考えている――などといった球団体質に関する古い噂も、現代では多くの阪神ファンが知っている。だからこそ、球団フロントもそろそろ認識をあらため、「たとえ僅差でも、優勝を逃したら監督解任」という方針に舵を切るべきなのではないか。

 巨人はもちろん、黄金時代の西武などもそうだったが、真の強豪球団は「優勝以外は2位も3位も一緒」という厳しい考えが徹底されている。「2位ならOK」という阪神と「優勝以外はNO」という巨人。両球団の優勝回数の差(巨人36回、阪神5回)は、その考えの差だろう。

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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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