侍U-18代表が経験した特別な時間 大学代表が伝えた、世界で勝つ日本野球

中島大輔

大学代表・田中との対戦でつかんだ手応え

大学球界屈指の右腕・田中正義(手前)から、初回にセンター前タイムリーを放った清宮ら、今大会で手応えをつかんだ者も少なくないようだ 【写真は共同】

 手応えをつかんだのは、オコエばかりではない。初回、2者連続三振の後に打席に立った平沢大河(仙台育英高3年)は、153キロのストレートをライト前に運んだ。

「真っすぐが速いピッチャーで、オコエも篠原(涼/敦賀気比高3年)も振り遅れていたので、その真っすぐにまずは振り負けないようにしようと頭にありました。ヒットが出て自信になりましたね。大学にはすごく良いピッチャーばかりで、この上のピッチャーは世界にはいないなというのがあったので。こういうピッチャーを体験できたのは、すごく大会につながると思います」

 この平沢のライト前ヒットに相手エラーも絡んで2死三塁となり、いきなり結果を出したのが4番に抜てきされた清宮だ。

「今日のオーダー発表のときに4番ということで、打線の中心としてやっていかなければいけないなか、最初にチャンスで回ってきた。初回に先制されていたので、これで流れを変えてやろうという気持ちで打席に立ちました」

 148キロのストレートに詰まらされたが、センター前タイムリー。強い球に狙いを定め、いつも通りに振った結果だった。

「日本代表に入ってからずっと言っていますけど、木製だからとか、金属だからということで自分のスタイルを変えると、全然打てないと思うので。木だろうが、金属だろうが、自分の形を崩さずに、しっかり振っています」

U-18W杯につながる意義深い「ドリームマッチ」に

 確かなポテンシャルを示した高校日本代表だが、大学生との力の差は歴然だった。

 チーム結成から間もないU−18代表に対し、大学代表はユニバーシアードを勝ち抜いてきた面々だ。高校バッテリーが4つの暴投を記録した一方、大学代表は積極的に次の塁を狙う走塁を絡めて9点を奪っている。

 試合後、高校日本代表の西谷浩一監督はこう話した。
「もちろん力があるのは分かっていましたけど、私たち高校ジャパンがこんな野球をしたいなというものを見せていただいて、大変勉強になりました。スピードを前面に出して、それでも力強さと、日本の野球である細かさがある。今日、高校生の代表は追い込んでからボール球になる変化球を投げてもきっちり見切られて、投げる球がなくなって、ストライクをとりにいったボールを打たれて。精度の違いを見せつけられた試合でした」

 だが、こうした経験を積ませることこそ、「ドリームマッチ」のもうひとつの目的だった。西谷監督が続ける。
「『この大学生に勝つくらいの力がないと、世界一にはなれないんだ』と、この後、みんなに伝えようと思っています。本当に良い経験をさせてもらって、心から感謝しています」

 4打数2安打と結果を残した平沢も、指揮官と同じ気持ちだった。

「大学日本代表は個人個人の意識が高く、すべてにおいてスキのないチームでした。足を使ったり、ピッチャーならフォアボールを出さなかったり、連打をされないとか、すごく徹底されていたので。僕たちはすべてにおいてレベルアップしなきゃいけないと思うので、すべての力を底上げできるようにしたいと思います」

 日本球界にとって節目の夏に行われた高校と大学の侍ジャパン対決は、ファンにとって、そして何より直接肌を合わせた選手たちにとって、特別な時間になった。U−18日本代表は聖地で積んだ経験を糧に、28日から開幕する本番に挑む。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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