FIBAが日本への処分を正式解除 川淵会長「バスケ界の新たなスタート」

スポーツナビ

こういう団結をもっと早くやっていれば

自身のポストについての考えを説明した大河事務総長 【スポーツナビ】

――先ほどの話の中で、「日本がこの旧体制をすべてやめていただいた、そういうやり方を評価してもらった」ということだが、今回こうした非常に異例な形で強硬な制裁が入り、これを半年以上かけて解決されたことの価値はどういうところにあったと考えているか? それから、事務総長というポジションも各競技団体の中では、なかなか置いていない。こういったポジションについて、日本のスポーツ界の団体と議論できる部分はあると思うが、どういう形で考えているか聞かせてほしい。

川淵 バスケットボール協会は、僕が相談に乗り始めてから代行を含めて3人トップが替わっていますよね。それに代表されるようにお互いに協力し合って、一つの目標に向けて努力していこうという連帯感や一体感を持ちにくい協会だった。それはその2つのトップリーグが併存しているということにも象徴されていると思うのですが、「ガバナンスがまるでダメだ」とFIBAから言われることを、この10年間やってきたわけで……。そういう人的な問題を一番解決しなければならないだろうと。

「理事を6人にしろ」だとか「評議員の数を削れ」とか、いろいろなFIBAなりの意見が出されて、それに対して僕も当初は抵抗する気持ちがありました。ただ、とりあえず短期間でこの問題を解決するためにはFIBAの意見を聞いて、そういう人心を一新した方が改革が進みやすいと思い切って突破したところから、解決への道が開けていったと思います。初めに申し上げましたけれど、そういうことに対していろいろ言う人もいました。気持ちよく皆さんが理事を辞任されたということは、今日初めてFIBAの会長以下の談話の中で、そこを高く評価していたんだと。僕自身も今さらながら「ありがたかったな」というふうに思います。こじれるとそう簡単には進められなかったのではないかなという感じがします。そこで一致団結して、こういう団結をもっと早くやっていれば良かったんですよね(笑)

 まだ全部が解決したわけではありません。やはりガバナンスにはまだまだ問題があって、これからもっと精査し、その改善に努めていかなければいけないと思いますけれど、一歩一歩、都道府県協会の公認化を含めてあるべき方向に進み始めているので、この短期間で次のステップに進めていければいいなというふうに思います。

大河 事務総長というポストというのは確かにあまりないと思いますが、今まで理事会というところでいろいろな細かいことを決めて、審議して決定していたというところをある程度、事務総長に業務進行をどうするかの権限は委譲されている。理事会はそれを統治する場所で、理事会が大きな方針を決定したものを細かく執行していくのが事務総長というポストだと思います。いろいろな決めごと、執行をスピード感を持ってやっていけるのかなっていうふうに感じています。それが他のスポーツ競技団体との良い意味での違いになり、新しい業務執行、統治のあり方を試されているのかなというふうに思います。

W杯を招致する資格はまだない

06年に日本は世界選手権を開催したものの、「W杯を招致する資格はまだない」と川淵会長は語る 【写真:アフロスポーツ】

――FIBAが東京でセントラルボードを開いた意義をどうとらえているか? また東京で開催されたということで、協会の関係者がたくさんFIBAの方と会ったと思うが、今後の日本のバスケットボールが世界の中でどのように貢献していけると思うか?

川淵 当初、唐突な話で日本で総会をしてほしいと言われたんですね。本来は6月に総会が開かれるはずでしたが、W杯の開催地について折り合いが6月中にはつきそうにないので、8月に日本でやりたいという申し出でした。普通こういう総会の招致は手間暇がかかることで、世界の競技団体の総会を日本に呼んでくるのはなかなかエネルギーがいることです。そういった意味では日本のマーケット市場をFIBAとしては期待している面もあるのかなという思いもありました。(パトリック・)バウマン事務総長、(インゴ・)ヴァイス財務長らと親しくいろいろとお話している中で、日本でこういった総会をやることは、日本のバスケットボール協会の改革と、日本の多くの人にバスケットボールの位置づけを理解していただくためにいいんじゃないかと、FIBAは考えていたんだと思います。日本に呼べるのは願ってもないことですし、だからといって制裁解除と直結するとは思っていませんでしたけれど、費用はほとんど向こうが持つという話でしたし、もうけものだなという話もあって、日本のバスケットボール界にとってはとても良かったと思います。

――日本でも06年に世界選手権を開催している。残念ながらうまくいかなかった印象だが、遠くない将来に日本でもW杯をもう一回招致したほうがいいのではないかという考えは持っているのか?

川淵 僕が生きている間にはやる気がないですね(笑)。フィリピンでも、1万〜2万人が入るアリーナが国中にいっぱいあるわけですよね。そういう視点から言うと、有明(コロシアム)だとか埼玉(スーパーアリーナ)だとか使用料金はかなり高くても、それにふさわしい入れ物はあるけれど、普段ホームアリーナとして使っているところはないわけです。そういう意味ではW杯を招致する資格はまだないと思いますね。10年先や20年先に、そういったことをぜひやりたいという声が上がって、施設が整って、人気も実力も兼ね備えた日本代表が存在するということならばぜひ呼びたいと思いますが、それはこの10年じゃ無理だと思います。

――協会の財政基盤をしっかりして、そのためのマーケティングをきちんとしていく。そのマーケティング戦略の具体的な青写真とかがあれば教えてほしい。

川淵 今、電通さんにいろいろお願いしているけれど、自力でやらなければいけないこともあったりで、全体の流れがいまひとつ不明確なところもあります。現に今のbjリーグ、NBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)でスポンサーを獲得していて、それなりのスポンサー料などをもらっている。それを何倍かにするマーケティングでないと意味がないわけで、8月か9月あたりである程度目処がつけばいいかなと思っています。大体の目標額の設定はわれわれなりにしていますけれど、具体的な部分についてはまだちょっと目に見えないところがあります。

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