野球の普及・指導で感じる、大きな課題 元ロッテ・清水直行、NZでの挑戦(8)

清水直行

ゲームに必要な準備とバックアップ

U−12やU−15世代の指導では、声を出すことなどに特に注意しているという 【(C)SAMURAI JAPAN】

 スポーツには全く同じシチュエーションが存在しないといっていいだろう。もちろん野球もそうだ。
 野球は、いわば“常に移り変わる状況の変化”に対応するゲームである。点差であったり、アウトカウントであったり……。もっと言えば、心理状況や試合展開もその範囲になるだろう。そこにイニングや点差であり打順や選手の調子などが組み込まれるから、野球というゲームはとても面白い。

 この“常に移り変わる状況の変化”の対応は、守備をする場面で必要になると、私は考えている。1つのボールを全員で追いかけるまではいかなくとも、その打球によってそれぞれの役割を果たしていくことが守備に求められる。
 サッカーやバスケットボールは決められたコート内からボールが外に出るとボールデッドになるが、野球はインプレー中にスタンド内やベンチ内にボールが入るか、あるいは特別ルール対応(球場による)にならない限りボールデッドにはならず、プレーは続く。練習ではそういったケースへの対応や、試合を想定しておかなければならないのだ。打球処理をする選手だけではなく、次を予測しておくことがそうであるように、全てのプレーが成功するとは限らないから、準備とバックアップが必要なのだ。

まずは声を出していくこと

 野球は“ミスのあるスポーツ”でもある。仲間が守備でエラーし、暴投などのミスをしたときに、必要以上の失点や進塁を防がなければならない。そのことを予測し、処理をしている選手に対し、重要になってくるのが聞こえる声で送球するベースであり、相手を示す「声」であり「指示」だろう。

「大きな声を出しなさい」「大きな声で次を指示してあげなさい」。ニュージーランドのナショナルチームU−12の練習中、私は子供たちに繰り返し指導をする。皆さんの想像通り、すぐに大きな声は出ない。自分のプレーで精いっぱいで、まだ周りを見る余裕がないからだ。無理もない。これまで習慣的に声を出さなければならないシチュエーション練習に時間を費やしてこなかったのだろう。試合などで歓声で声がかき消されるような経験もなく、進塁されることの危機感も少ない。そして、子供たちはみなシャイなのだ。そこにどうやって入り込んでいくか……。これからの私の大きな課題である。

 まずは簡単なことから始めたい。小さい声でもいいから声に出して指示すること。みんな連動して守っているのだということ。野球は「準備」「確認」することがいかに重要なのかということをU−12やU−15世代には特にしつこく指導していきたい。彼らは、10年先、20年先のニュージーランド野球を築きあげていく世代なのだから。

※ニュージーランドの野球事情と日本の役割を、元ロッテのエース・清水直行氏による手記から考えるシリーズ企画です。

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著者プロフィール

1975年11月24日生まれ 京都府出身。報徳学園高、日本大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位で千葉ロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回と2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現・横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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