野球の普及・指導で感じる、大きな課題 元ロッテ・清水直行、NZでの挑戦(8)

清水直行

「普及」「振興」のためにできること

清水氏はニュージーランドで、どうやったら野球の普及や振興を進めていけるか、悩みながらも、日々、活動を続けている 【(C)SAMURAI JAPAN】

「普及」や「振興」をいつも大切なキーワードだと思っている。そして、その具現化にはさまざまな方法や手段があることもわかってきた。

 日本のような野球先進国からいらなくなった道具などを届けることや、現地へ出向いてグラウンドで一緒にプレーすることは代表例だ。手とり足とり、投球や打撃、守備のフォームを指導し、良い成果が出た時には共感できる時間をつくること、野球をする環境づくりを支援していくこともそうだ。日本へ子供たちを招待してプロ野球などを観戦してもらい、自国へ持ち帰り野球を伝えてもらうことも手立てだろう。それがつながり、広がっていくとすれば、これも活動のひとつだと思っている。

 しかし、果たしてそれ以外は、それ以上はないのだろうか……。そんな思いがあり、私はニュージーランドに来ている。

現地だから見える活動の意味

 実際に現地での活動は大変だ。野球技術のコーチやナショナルチームの強化ということもそうだが、やはり環境の整備や新しい取り組みを作り出すことに圧倒的に多くの時間を費やしている。地道な掘り起こしが不可欠だからだ。

 個人的には、現地の企業や支援者を探すことを行ってきた。というのは、今までも、そして、おそらくこれからもそうだろうが、ニュージーランド野球連盟という組織に所属してはいるが、連盟からの指示はナショナルチームの編成と強化がほとんどなのだ。トップが強くなると、底辺にまで野球の魅力が浸透するかと言えば、決してそんな単純なことではない。だからこそ、「普及」や「振興」の部分を個人として担い、活動している。

 これまでもいくつかの企業にあいさつに行き、野球について説明してきた。その上で、今後の取り組みなどを理解してもらう。一筋縄にはいかない。私が野球の話を切り出しても、いつのまにかラグビーやクリケットの話に変わることが日常茶飯事の土地だ。野球というスポーツに全く興味を示してもらえないこともしばしばだ。日本では想像のできない現状に、心が折れそうになるときもある。もちろん、中には、大きなビジョンで考えてくださる方もいたが……。

 これも野球に支援してもらうためだ。支援というのは、ニュージーランド野球へのサポート費であり、野球大会を開催してもらうことであり、野球教室の開催もそのひとつだ。しかし、まだ何も決定できていないのが現実だ。

 ただ、現地の状況を把握しながら現地で必要なことにコンタクトしていく。そこに新しいサービスを作り出していこうとすることも「普及」「振興」なのだと。日本からでは見えないところを現地の人たちと作り出していくことや、現地で日本野球との交流や野球力を浸透させていくことにも意味が深いように思っている。

 7年ほど前まで、ニュージーランドは野球の「や」の字も知らなかったというお国柄だ。だからこそ、苦労も多いが、花が咲いたときの達成感も計り知れないはずだ。

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著者プロフィール

1975年11月24日生まれ 京都府出身。報徳学園高、日本大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位で千葉ロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回と2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現・横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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