U−22日本に必要な国際試合の経験値 コスタリカ戦で感じられた成長への手応え

川端暁彦

守備意識の高まりと「世界基準」への意識

今回初めて選出された前田(左)は、激しい守備と運動量を前面に押し出したプレーでアピールした 【写真は共同】

 この日のコスタリカは、A代表に招集された選手1名を欠き、それ以外にも招集できない選手がいたようである。しかし日本も、海外組を招集できない中で個々人がタフに戦い、チームとしても戦術的柔軟性を発揮して、しっかりと勝ち切った意味は大きかった。

 この試合、日本側で目に付いたのは、ボールを奪われた際の対応の素早さと、各選手のフィジカルコンタクトでの粘り強さだ。一度は相手に吹き飛ばされた亀川が、再度ボールにチャレンジして奪い返すシーンも見られるなど、「間違いなく守備意識が高まったチームになってきたと感じている」と手倉森誠監督も納得のパフォーマンス。守備意識が高まったという一面があると同時に、そもそも守備意識の高い選手しか使われていないという別の一面もあるのだろう。

 象徴的だったのが、東京ヴェルディから今季松本山雅に移籍し、今回初めて「候補」ではない代表に入ったMF前田直輝だ。「自分を鍛えるために松本へ行った」と語る前田は、「本当にまるで変わったと思う」と激しい守備と運動量を前面に押し出して奮闘。「なぜ前田が選ばれたのか?」という周囲の疑問にプレーで回答してみせた。

 前田のような、代表へのなじみが薄い選手が頑張るのはある意味で必然だが、この試合は常連選手たちの士気の高さも強く感じられた。事前にリオ五輪欧州予選の映像を見せて「世界基準」をたたき込んだ効用も大きかったのだろう。「海外のレベルの高さを見せられた。日本に比べるとスピードや質がまるで違った。球際の強さもワンランク上」と浅野が言えば、DF植田直通も「まず体格がA代表のようで、スピード感もA代表レベル。まだまだ自分たちはその域まで達していない」とコメント。「上には上がいる」ことをあらためて意識した効果が、確かにあった。

若い世代の強化に、もっと投資を!

チーム発足から1年半が経過しているにもかかわらず、この日初めてアジア以外の国と対戦。もっと国際試合の経験値が必要ではないだろうか 【写真は共同】

 今回のコスタリカ戦が、相手の個々のタフネスも合わせて、個人としてもチームとしても実りの多い試合になったのは間違いない。「僕は代表歴が浅いし国際経験も少ないので、こういう経験を一つひとつ大事にしたかった」と亀川がコメントしていたが、この貴重な経験を無駄にするまいという意識を個々人が持っていたことが、手応えのあるゲームを生んだと言えそうだ。

 逆に言えば、これまでそうしたタフな国際試合の経験が、このチームに乏しかったということでもある。思えば、チーム発足から1年半を経過するのに、アジア以外の国と対戦したのは、実はこれが初めての経験である。「Jリーグでやるブラジル人選手とはまた違ったタイプの選手とできて、本当に良い経験になった」と岩波は声を弾ませたが、五輪はもちろん、彼らの将来を思うと、もっとこうした機会を増やすべきではないか。

 国際Aマッチウィークを活用した、海外遠征の実施や海外チームの招致など、対戦相手は必ずしも同年代の代表にこだわる必要はないように思う。むしろ最終予選に向けたチーム強化を考えても、個々人のレベルアップや意識の向上を考えても、若い世代に投資する価値はあるはず。コスタリカとの試合で成長への手応えを感じただけに、これが今年国内で最後の国際親善試合となってしまっていることが残念でならない。やはり若い選手たちには、もっと国際試合の経験値が必要ではないだろうか。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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