バスケ界になくてはならない企業の力 JXがバスケと深く関わり続けてきた理由

スポーツナビ

日本のバスケットボール界を古くから支え続けてきた企業であるJXホールディングスの取締役・副社長執行役員であり、サンフラワーズの代表でもある川田氏に話を聞いた 【スポーツナビ】

 五輪出場への期待値が男子に比べてはるかに高い女子バスケットボール日本代表。JBA(日本バスケットボール協会)がFIBA(国際バスケットボール連盟)より受けていた制裁問題は、川淵三郎チェアマンを始めとするタスクフォースチームの働きによって今月事実上の解除を迎え、代表チームは晴れてリオ五輪へ向けた活動を再開させた。

 そんな日本のバスケットボール界をスポンサーという立場で古くから支え続けてきた、JXホールディングス株式会社。Wリーグで女王の地位を築くJX−ENEOSサンフラワーズを持ち、高校年代の憧れの大会であるウィンターカップや日本代表へのスポンサード、全国でのクリニック開催などバスケットボールとの関わりは深く、多岐に渡る。

 日本バスケットボール界にはなくてはならない存在とも言えるJXホールディングスは、なぜここまでバスケットボールと深く関わりを持ってきたのだろうか。そして、不本意な形で世間の注目を集めていた最近の日本バスケットボール界の喧騒をどのように見つめていたのだろうか。

 今回のインタビューでは会社の取締役・副社長執行役員であり、サンフラワーズの代表兼GMでもある川田順一氏に、企業におけるバスケットボールの価値と、今後の日本バスケットボール界に求めることを率直に語ってもらった。

JXにとってのサンフラワーズの存在

JXホールディングスはサンフラワーズの選手たちに「勝つことが仕事だ」と伝えており、見事Wリーグ7連覇という形で期待に応えている 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――旧・共同石油時代にサンフラワーズの前身である女子バスケットボール部が創部されたわけですが、なぜ御社はバスケットボールに力を入れてきたのでしょうか?

 創部に至る経緯は、旧・日本鉱業(現・JX日鉱日石金属)が男子バスケットボール部を古くから持っており、共同石油はその兄弟会社ということもあって、女子のバスケットボール部を作ろうということで創部になりました。当時の創部の狙いは、新鮮さと躍動感があるスポーツを通じて、社員の連帯感を高める、強める。そして、企業のイメージアップです。

 会社として女子バスケットボールチームに期待することはいろいろありますが、Wリーグのシーズン前に行われる壮行会で私がいつも話をしていることが4つあります。

 まず一つはJXという名前の知名度アップです。石油会社は、統合を繰り返しており、現在のJXという名前は十分に浸透していない状況にあります。チームが活躍すればマスコミに出ますし、地域のいろいろなファンを通してJXという名前が浸透していく。そういう期待があります。

 二つ目がグループ社員や取引先を含めて、団結力、連帯意識の向上を期待しています。私が地方の試合会場へ応援に行きますと、その地域でENEOSのガソリンスタンドを経営されている社長さん、従業員の皆さん、製油所や協力会社の皆さんが家族とともに応援に来てくださっているんですね。「JX! ENEOS!」って連呼しながら応援することによって、JXグループとしての団結心、連帯感が生まれています。

 三つ目がCSRの観点で、女子バスケの振興です。女子バスケは高校、大学でプレーした後に活躍する場が少ない。そこでチームを持ち、良い練習場所や生活環境を提供しながらバスケットの振興に少なからずお役に立ちたいという想いがあります。

 四つ目が、女子バスケに励む子どもたちに夢・目標を与えることです。「私も頑張ればあのお姉さんのようになれるんだ。強いチームの一員として活躍できるんだ。」というモチベーションになればと思っています。

 このようなことをいつも申し上げています。選手たちにも「だから君たちは勝たなければいけないんだ」ということを伝えています。勝たなければならないし、勝つことが仕事だと私は言っています。

――三つ目に出てきたCSRとは?

 コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティーの略で、企業の社会的責任という意味です。「コーポレート」は会社、企業の。「ソーシャル」は市民としての。「レスポンシビリティ―」は責任。良き企業市民として活動しましょうということです。スポーツもそうですし、地域の方々との交流であったり、災害があった時に寄付や支援をしたり、そういう利益とは直接結びつかないけれども、組織活動が社会へ与える影響に責任を持ち、地域や消費者、さまざまな方々とともに、社会のニーズに合った活動をしようというものです。

全国に及ぶさまざまな活動

――サンフラワーズは一企業チーム以上の存在意義も持ち始めていると思いますが、チームの活躍をどのように見ていますか?

 うちのチームが強くなることによって、日本全体の女子バスケ選手のレベルアップにつながればいいなと思っています。私たちは企業チームとして、そこで彼女たちの活躍の場が終わりということではなくて、彼女たちがさらに努力して成長し、日本代表で五輪選手として活躍する。また、渡嘉敷来夢(シアトル・ストーム/WNBA)のように米国に行って活躍するということは、われわれとしてもとてもうれしいことですし、応援したいと思います。企業のイメージアップという枠組みを超えて、世界を相手に活躍する場を提供したい、その考えが選手たちの励みにもなると思います。

――チーム運営のほかにも車椅子バスケやウィンターカップ、日本代表など幅広くスポンサードもされていますが、その狙いは?

 ウィンターカップへの協賛に関してはJOMO時代から継続してやっています。ウィンターカップに出場するような強豪校で活躍した選手をサンフラワーズに獲得することが狙いの一つです。また、ウィンターカップは高校生の中でも目標となるような重要な大会の一つです。この大会にJX−ENEOSというサンフラワーズを持っている会社が協賛をすることによって、全国の高校生たちに「バスケット界を支援してくれている会社なんだ」ということを知っていただける場になると考えています。

 車椅子バスケに関しては、毎年5月に日本車椅子バスケットボール連盟が主催している内閣総理大臣杯争奪 日本選手権という大会が東京体育館であるのですが、その大会への協賛をしています。この大会では、社員でボランティアを募り運営のサポートも行っています。

 このように、われわれがバスケットボールに対するさまざまな活動を行い、理解の深い会社であるということはJBAの方も認識してくださっています。そこで、日本代表へのスポンサードについては協会の方から、ぜひ代表も支えてほしいということでお受けしている形です。代表でもサンフラワーズのチームの中心選手が活躍しているので、頑張ってほしいという意味もあります。サンフラワーズから代表に選ばれた選手も、JX−ENEOSのロゴがユニホームに入ると気合いが入るらしく、「会社も私たちの背中を押してくれている」と感じています。

 もう一つ、チームを引退したOGたちによるクリニックも全国で小・中学生を中心に行っています。五輪で活躍した選手(萩原美樹子や大山妙子)が教えていることもあり、子どもたちが大変喜んでくれています。このクリニックを通じて五輪に出場した選手を身近に感じていただき、「私も五輪を目指して頑張ろう」という子どもたちの熱意が全国に広がっていけばうれしいと考えています。

――さきほどのバスケットと深く関わる目的の4つ目につながりますね。

 そうですね。サンフラワーズだけでなく全国でバスケットの支援を行っています。それがクリニックやウィンターカップへの協賛ということです。

 バスケットボールは当社にとって“連帯の象徴”です。JXグループ社員、お取引先やその従業員、それを取り巻くいろいろな協力をしていただいている方々をつなぐ大切な存在なんです。

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