バスケ界になくてはならない企業の力 JXがバスケと深く関わり続けてきた理由

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制裁問題の影響

リオ五輪への活動を再開した女子日本代表の胸には「JX−ENEOS」の文字がしっかりとプリントされている 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

――去年の10月にJBAがFIBAからの制裁を受けました。そういった状況を、バスケット界を広くサポートしている企業の立場として、どのように見ていましたか?

 サンフラワーズの代表として選手たちを見ていて強く感じるのですが、彼女たちの最大の目標というのはやはり五輪なんですよね。日の丸を背負って日本を代表して戦う。そういう場で活躍する。それが彼女たちの夢なんです。それを壊すような、阻害するようなものはいかがなものかなと。細かい理由は私たちにはよく分からないですし、さまざまな事情があるとは思います。ですが、そういう夢を、あるいはそういう活躍の場を失うようなことはいかがなものかなと。私の正直な印象ですね。

 正直に申し上げて、男子バスケの問題に関連して女子バスケにも影響が出るということは心配していました。日本代表に多くの選手を送り出している女子バスケチームの代表として、五輪出場への影響があると困るなという思いでした。

――制裁を受けて、社内で話し合いなどは行われたのでしょうか?

 会社としての会議などはありませんでしたが、われわれ事務方というか現場レベルではありました。日本代表のスポンサーをしていましたが、代表としての活動が11月25日に完全に止まってしまいました。それに対して、JBAに対してどういうことを申し入れたらいいのか、というような打ち合わせは行いましたね。その時点で今年度の協賛に関してはまったく効力を発揮しない形になるので、その期間どう対応するかを話し合いました。具体的には、活動停止期間中は協賛金の支払いはしないという判断になりました。

 当初、代表のスポンサーは3年間やるということでスタートしたんです。2014年から16年まで。現在は制裁が完全に解除されたときに再度話し合いをしましょうということになっています。

――制裁後、チームへの影響はありましたか?

 直接の影響はないと思います。ただ先ほど申し上げたように、選手たちの最大の目的というのは五輪出場ですから、そぶりは見せませんでしたが、少なからず動揺はあったと思います。

 表情やモチベーションに変化はなかったですね。とりあえずはWリーグで勝つことが彼女たちの目先の目標でしたので、それに向かって本当に一生懸命やってくれました。

――タスクフォースやJBAなどとの話し合いの場はあったのでしょうか?

 ありませんでしたね。

JBA理事に執行役員を派遣

JXホールディングスの執行役員としてJBAの理事に就任した山本氏 【スポーツナビ】

――その後、JXホールディングス執行役員の山本一郎さんがJBAの理事に就任されます。この経緯はどういったものだったのでしょうか?

 これはですね、ちょうどサンフラワーズがWリーグで優勝した直後でした。タスクフォース事務局から、連覇を重ねている女子バスケチームを持つ当社に「理事を誰か出していただけないだろうか?」という打診がありました。先ほどから申し上げているように、女子バスケの選手にとっての最大の目標は五輪出場ですので、五輪出場を目指して協力ができるのであればということでお引き受けすることとし、社内の人選が始まりました。

――山本さんを理事に推薦することになった理由は?

 彼は私の部下で、執行役員の総務部長をやっており、彼の業務の中にはCSRの推進であるとか、広報活動なども含まれています。

 また、学生時代にバスケットボールをやっていたので知識もありますし、以前はサンフラワーズで副部長をやっており、現在のバスケット界の事情に精通しています。

 JBAの執行部ではなく理事ということで、非常勤でありますので、バスケット界のこれからの振興のために少しでもお役に立てればと思い、当社の総務部長を続けながら、派遣することといたしました。

――山本さんがJBAの理事になるにあたり期待することは?

 彼は総務部長として、ガバナンスに関する知識・経験があります。会社と協会ではガバナンスの性格はかなり違うとは思いますが、民間企業での知識・経験が協会の運営に少しでもお役に立てれば良いと思います。

――川淵会長が以前「資金力のある企業はバスケ界発展のために必要だ」と話していたことがあります。

 その言葉に違和感はありませんね。スポーツを支えるのはいろいろなファン、国の支援が必要であると思いますが、企業の支援もまた大事だと思います。スポーツを続けるためには資金が必要です。体育館やアリーナを作ったり、遠征費を工面したり、また、選手の生活資金も必要です。そのためには企業も、それぞれの事情に応じて応分の負担・支援することが必要だと思っています。

――今後のバスケットボール界に期待することは?

 チームの代表になって3年になりますが、地方大会に足を運びますと、多くの子どもたちが一生懸命応援をしてくれている姿が印象的です。バスケットを楽しむファンは非常に多い。その割には野球・サッカーなどと違い、マスコミの扱いが小さいと感じています。

 バスケに対する世間の関心を高めるためには、五輪で活躍することが非常に大きいと思います。五輪で日本代表が活躍すると応援に熱が入り、ファンの裾野がさらに広がっていくと思います。女子バスケの選手たちが五輪出場を目指すうえで、精一杯練習できる、あるいは力を発揮できる環境を整えていくことを望んでいます。

 失礼を承知で申し上げますと、現在は男子よりも女子の方が五輪出場の可能性が高いと思います。リオ五輪大会でサンフラワーズの選手たちが、日本代表女子バスケチームの一員として日の丸を背負って大いに活躍することを夢見ています。

川田順一

「五輪でサンフラワーズの選手が活躍することを夢見ている」と笑顔で語った川田副社長 【スポーツナビ】

JXホールディングス株式会社 取締役 副社長執行役員 社長補佐、秘書部・総務部・法務部管掌
JX−ENEOSサンフラワーズ 代表
1955年生まれ、栃木県出身。東北大学法学部を卒業後、78年に日本石油に入社。94年に福岡支店総務課長を務めたのち、グループマネージャーや総務部長など役職を歴任。2010年にJXホールディングスの取締役・常務執行役員を務め、15年6月より副社長に就任。

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