反撃のロズベルグ、緻密な走りで追う 王者争いの正念場はこれから
新たな“モナコマイスター”に君臨
エンジニアリングに精通するロズベルグは、セットアップが決まれば無類の強さを発揮する 【写真:代表撮影/ロイター/アフロ】
これは子どものころからの特徴で、カート時代を知るディノ・キエーザは「ニコはカート時代からエンジニアやメカニックと多くの時間を過ごし、セットアップを地道に積み上げる作業をいとわなかった。ワールドチャンピオンの息子でモナコ育ち。そういう外観とは真逆でね、手を汚す地道な仕事ができる子だった」と語っている。実際、筆者もF3時代にロズベルグとピケ・ジュニアを取材したとき、ピケはマシンについて一般的なことしか話さなかったが、ロズベルグはエンジニアリング好きを公言し、当時から論理的かつ分かりやすい説明で、コースの戦略方法などを語ってくれた。
F1ドライバーとしては、13年から3年連続でモナコGPに勝利しており、これはグラハム・ヒル(63〜65年)、アラン・プロスト(84〜86年)、アイルトン・セナ(89〜93年の5年連続)以来であり、3年連続勝利という栄誉は、ミハエル・シューマッハ(5勝)やジャッキー・スチュワート(3勝)、スターリング・モス(3勝)といった名ドライバーも実現できなかった大記録である。ロズベルグは新たな“モナコマイスター”に君臨している。
さらに、親子でモナコGPを勝利したのも初である(ケケ・ロズベルグは83年に勝利)。今年のモナコGPでは、ハミルトンが圧勝かと思われたが、セーフティーカーのタイミングでのチーム判断ミスで思わぬ勝利を拾った。ハミルトンがレース後にショックを隠せなかったのは、自らの勝利を失っただけでなく、歴史に残る大記録をチームメートが打ち立てたことも影響しているのかもしれない。
ところで先日、ハミルトンの契約延長が話題になっていたが、ロズベルグは14年7月14日に3年間で推定5500万ユーロ(約77億円)+出来高オプションの契約を更新しており(公式発表は7月16日)、このまま順調にいけば次の契約更改は16年に迎えることになる。それまでに総合王者の称号を手に入れることができるか。ライバルとのし烈なチャンピオン争いは続く。