正規王者ベラスケスに試練の一戦
高阪剛が語るUFCヘビー級王座統一戦
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 UFC「UFC188 in メキシコ」が日本時間14日、メキシコのメキシコシティ・アリーナで行われる。メインイベントは王者ケイン・ベラスケスvs.暫定王者ファブリシオ・ヴェウドゥムによるヘビー級王座統一戦。ケガにより1年8カ月ぶりの復帰戦となるベラスケスは、王者対決でもその実力の健在ぶりを証明することができるのか。またセミファイナルには、ギルバート・メレンデスvs.エディ・アルバレスという、日本でも大活躍した二人のドリームマッチも実現! この2試合の見どころを、WOWOW『UFC−究極格闘技』解説者、高阪剛氏に語ってもらった。

ファブリシオのやわらかい寝技

1年8カ月ぶりの復帰となるUFCヘビー級正規王者ベラスケス。地元メキシコで暫定王者ヴェウドゥムとの統一戦に臨む
1年8カ月ぶりの復帰となるUFCヘビー級正規王者ベラスケス。地元メキシコで暫定王者ヴェウドゥムとの統一戦に臨む【(C)Photo Courtesy of UFC】

――「UFC188」のメインイベントは、ケイン・ベラスケスvs.ファブリシオ・ヴェウドゥムのヘビー級統一戦。ようやく実現した一戦ですが、この試合をどう見ていますか?


 当初は「UFC180」でやる予定でしたよね?


――そうですね。昨年11月に行なわれたメキシコ大会で組まれていたんですけど、直前に王者ベラスケスが右ヒザをけがして欠場。急きょ、ヴェウドゥムvs.マーク・ハントの暫定王座決定戦になり、ヴェウドゥムが王者になったかたちですね。


 だから、ファブリシオにしてみたら、真のヘビー級王者になるために、タイトルマッチを2回やるような感じだと思うんですけど。そのぶん、モチベーションは高いと思いますね。前回、暫定とはいえ、ベルトが巻ける試合でマーク・ハントをKOで倒して、正王者と統一戦をやるというのは、精神的にすごく自信を持って闘えるだろうし。そういう意味で、メンタル面ではファブリシオがアドバンテージを取っていると思います。


――気持ち的に乗ってるというか、充実した状態で統一戦に臨めるわけですね。


 そうですね。一方、ベラスケスのほうは、ケガからの復帰戦で、いきなり調子を上げてきている暫定王者を相手に、ベルトを賭けて闘わなきゃいけないわけだから。それって通常なら、メンタルのコントロールが大変だと思うんですよ。


――ベラスケスはじつに1年8カ月ぶりの復帰戦ですからね。試合勘という意味でも不安はあるだろうし。本来ならチューンナップファイトを挟みたいところかもしれませんが、それが許されないのが、UFC王者という立場であるという。


 そうなんですよね。だからベラスケスの目線で言うと、そういう1年半以上のブランクがあったとしてもしっかり勝って。技術もフィジカルもありつつ、精神的にも強い、つまり心技体が揃ったチャンピオンだということを証明できるかどうか。対するファブリシオは、いま乗っている状況そのままに、正王者を倒して、UFCで自分の強さを証明できるか、という闘いになるんじゃないかと思いますね。あとは選手によって、自分がなぜ強いのか、なぜ勝てているのかを把握している選手と、そういうことを考えていない選手に分けられるんですけど、ベラスケスはどちらかと言うと後者だと思うんですよね。


――達人系ではなく、本人もどれぐらい強いかわからない、潜在能力がすごいタイプというか。


 そうなんですよ。もちろん、しっかりとした技術の練習をトレーナーから受けていると思うんですけど。いざ試合になったら、練習でやったことのない動きができてしまったりとか。突発的なことに対応する能力が抜群だったりするところが、ベラスケスにはあると思うんですよ。自分がよくいう、“Xファクター”っていうヤツですね。


――たしかに乱戦になっても強いですよね。


 だからそのへんのところの、競り合いになったときに、勝ちをつかみにいけるのは、ベラスケスのほうだと思いますね。あと、ベラスケスと言えば、スタミナですよね。対するファブリシオは、不思議なスタミナを持ってるんですよね。ラウンドで言うと、1ラウンドはしっかりできたのが、2ラウンドにちょっと落ちることが多いんですよ。それで「スタミナが切れてきたかな」と思ったら、そこから盛り返したりもする。ちょっと、他にはないスタミナがあるんです。


――爆発力を出さなくとも、一本奪えるものを持ってるということですよね。


 柔術とか寝技の動き自体がそうなんですよ。これは10年以上前の話なんで、ちょっと参考にはならないかもしれないですけど、自分もファブリシオとはアブダビ(ADCC=グラップリングの世界大会)で対戦したこともあるし、軽くスパーリングしたこともあるんですよ。そのとき感じたのは、組む力は強いんですけど、寝技になると途端に“やわらかく”なるんです。


――やわらかい寝技ですか。


 力を使わないというか、自然と隙間がない動きができるんですよね。だからそれが、スタミナが続く秘密なのかもしれない。逆に相手側は、ファブリシオは力を抜いてやってるのに、寝技で極められたらマズいってことで、必死に動こうとするわけだから。どんどんスタミナを消耗していくっていうのがあると思うんですよね。

左ジャブが強いベラスケス

日本でもお馴染みのハントをKOして暫定王者に輝いたヴェウドゥム。勢いに乗って正規王者ベラスケスに挑む
日本でもお馴染みのハントをKOして暫定王者に輝いたヴェウドゥム。勢いに乗って正規王者ベラスケスに挑む【(C)Photo Courtesy of UFC】

――寝技で削られてしまうわけですね。では、スタミナの化け物であるベラスケス相手でも、削れるかどうかっていうこともポイントになりますね。


 そうなんですけど、ベラスケスは寝技には付き合わない気がするし。また、ベラスケスは80%の力で、5ラウンドずっと闘える選手ですからね。途中で力が落ちることもなければ、ギアを上げることもない。ずーっと高いテンションで攻め続けられるっていう。あれは相手にとってみたら嫌ですよ。


 あと、自分はベラスケスの試合映像を見直してみて、ひとつ気づいたことがあったんですよ。ベラスケスって、右ストレートや右フックがフィニッシュブローになることが多いんですけど、じつは前手である左のジャブが強いんですよね。たとえばブロック・レスナーをKOしてチャンピオンになった試合なんかは、前手のジャブで差し勝ってるんですよ。そして、ジャブを効かせたあと、さらに追いかけての右オーバーハンドだったり、右ストレートでKOすることが多いんです。だから、最終的に右で倒しているシーンが多いので、「こいつは右が強いな」ってイメージを持ちがちなんですけど、じつは左のジャブが強いから、そのあとの右がより効果を増してるんじゃないかと思うんですよね。


――しっかりと左ジャブで、先手が取れてるわけですね。


 一方でファブリシオは最近、蹴り技が非常に有効に使えるようになってるんですよ。前蹴りや、相手が前に出てこようとするところでのテンカオ(カウンターのヒザ蹴り)ですよね。ファブリシオはハイキックも打ちますけど、どちらかと言えば前蹴りとヒザ蹴り、あの縦の攻撃のほうが、相手は嫌だと思うんですよ。


――とくにベラスケスは前に出てくるタイプですからね。


 あの縦の蹴り技を、高いレベルで相手を仕留める技術として習得しているので。あれをうまく使われると、なかなか懐には入れませんよね。ただ、それもまた普通の選手の話で、ベラスケスはそんな足技なんて関係なく、前にガンガン出てくる気もしますけどね(笑)。そして、そうあってほしい。あと、この試合がメキシコで行われるというのも、個人的には楽しみなんですよ。


――メキシコが生んだヘビー級チャンピオン、ベラスケスのメキシコ初登場ですからね。


 あとメキシコという国が、どれだけMMAに対して熱があるのか、試合に対してどんな見方をしているのか。お客さんの沸き方を見れば、だいたいわかるんで。観客の反応にも注目してみたいですね。

セミはメレンデスvs.アルバレス

――またセミファイナルには、ギルバート・メレンデスvs.エディ・アルバレスの試合も組まれていますが、これも楽しみですね。


 間違いなく、ド突き合いになるだろうし。また個人的な予想なんですけど、アルバレスは一度、パンチでダウンするんじゃないかと思うんですよね。でも、またすぐ立ち上がって、殴り合いになる。そして、どこかのタイミングで、今度はアルバレスがカウンターでダウンを奪い返して……。そんな気がするだけですけどね(笑)。慎重に勝ちにいく試合じゃなくて、リスクを背負ってKO、一本を奪いにいく、仕留めにいく試合をお互いやるタイプの選手ですから。


――そんな中、一応、試合を見る上でのポイントを挙げるとなんですかね?


 ひとつ、自分が注目してるのは、メレンデスが以前と変わっているのかどうかですね。前回、アンソニー・ペティス戦で、メレンデスはテイクダウンを奪いながら、結果的にそれがアダになって、カウンターのフロントチョークで一本奪われてますからね。自分の一番強い武器がアダになってしまったことが、どれだけ影響するのかということ、それで何か試合のやり方を変えるということが起こったのかどうか。そこは気になるところですね。


――メレンデスは、ペティス戦の敗北でモデルチェンジしてる可能性がある、と。


 アルバレスは正直、そんなに変えないと思うんですよ。いつものように打ち合いにいくと思うし、ストレートなりフックが当たったら倒せるという。そこは変えないと思うんですけどね。


――ということは、メレンデスの出方次第ということですかね。


 そうですね。これまでと同様にテイクダウンを多用するのかどうか、ですよね。また、アルバレスはテイクダウンされても、立つのがうまいですからね。体型的なこともあると思うんですけど、押さえ込もうとする相手をすり抜けて立つのが、異常にうまいですよね。だから、結果的に打ち合いの試合になるんじゃないですかね。


――まあ、二人のことは日本のファンもよく知っているでしょうから、そんなことを前提にしながらも、目の前の闘いを楽しんでもらうのが一番ですかね。


 この試合に関しては、そのまま観てもらえれば、それでいいです。もちろん技術は高いし、いろいろ戦略も練ってきてると思いますけど、試合になればガンガンやってくれると思うんで。だから自分も、当日WOWOWの中継のときは、解説がまったくいらないような、いい試合をやってくれるんじゃないかと思いますね。


(取材・文:堀江ガンツ/WOWOW UFC解説者)

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★生中継!UFC−究極格闘技− UFC188 in メキシコ ヘビー級王座統一戦

正規王者ベラスケスVS暫定王者ヴェウドゥム! 怪我から復帰の正規王者ベラスケスと、マーク・ハントを破り暫定王者となったヴェウドゥムのヘビー級王座統一戦!

6月14日(日)午前11:00〜[WOWOWライブ]※生中継


■主な対戦カード

<ヘビー級王座統一戦>

[正規王者]ケイン・ベラスケス

[暫定王者]ファブリシオ・ヴェウドゥム


<ライト級>

ギルバート・メレンデス

エディ・アルバレス


<ミドル級>

ケルヴィン・ガステラム

ネイサン・マーコート


★生中継!UFC−究極格闘技− UFC189 in ラスベガス Aldo vs.. McGregor

王者アルドの8度目の防衛戦は彼を挑発し続けるエンターテイナー、マクレガーとの一戦。王者の貫録か、挑戦者が実力も証明するか。注目のフェザー級タイトルマッチ。

7月12日(日)午前11:00〜[WOWOWライブ]※生中継


■主な対戦カード

<フェザー級タイトルマッチ>

[王者]ジョゼ・アルド

[挑戦者]コナー・マクレガー


<ウェルター級タイトルマッチ>

[王者]ロビー・ローラー

[挑戦者]ローリー・マクドナルド

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