「野球よりもソフトボール」という現実 元ロッテ・清水直行、NZでの挑戦(7)

清水直行

NZで見かける室内版バッティングセンター

インドアスポーツ施設で練習に汗を流すU‐12の子供たち 【(C)SAMURAI JAPAN】

 ニュージーランドは南半球に位置しているため日本との季節は逆。いま、最大の都市・オークランドは秋を迎えている。こちらの秋と冬には雨の日が多くなるそうだ。

 そんなオークランドに、雨の日に重宝するインドアスポーツ施設がある。「Field House」というインドアスポーツ施設だ。個人が運営するこの施設では、利用料金を支払えば誰でも利用できる。ニュージーランド野球連盟もお金を支払って練習に活用することもある。この名前のインドアスポーツ施設はオークランドに2店舗ある。1つの施設の中にバッティングケージが4カ所ほどあり、見学スペースやスポーツショップも入っている。いわゆる、日本でよく見かける「バッティングセンター」の室内版のようなものだ。しかし、それほど大きくはなく、天井も十分な高さがあるわけではない。

 施設内は、それぞれの利用目的に対応できるようにネットで仕切れるように設計してある。これは、プールなどで行われる水泳教室で、レベルや内容によって、コースロープで仕切っている感じでイメージしてもらえると分かりやすいかもしれない。

ソフトボール用マシンで打つ大人たち

ニュージーランドでは、雨の多い秋や冬は室内版バッティングセンターのような屋内施設で練習を行うことが多いようだ 【(C)SAMURAI JAPAN】

 この時期は、その4カ所の内の2〜3カ所を借りて、7月末に出場するU‐12の子供たちがバッティング練習とキャッチボールなどをこなす。

 ある日のこと、U‐12の子供たちが使用している横のケージでは、一般にこの施設を利用しているのであろう家族や友人たちの集まりなのかが、バッティングマシンをセッティングしていた。よく観察してみるとそれは「ソフトボール用」のマシンだった。野球後進国なのに、なぜこのような設備がと思っていたが、これで合点がいった。ソフトボールやクリケット、フットボールにも対応しているので、そのために可動式のネットで仕切っているそうだ。むしろ野球で使うほうがマイナーな扱いだ。

ソフトボール用バッティングマシンを野球で使うほうがマイナー 【(C)SAMURAI JAPAN】

 マシンか飛び出す大きなソフトボール。そのボールを簡単にヒットしていた。女性も混じりながら一緒にバッティングを楽しんでいる。何ら日本と変わらない。家族や友人とバッティングセンターを訪れ、ボールを打つ子供に親が後ろから指導する。指示する親に向かって子供は、「そんなに言うなら打ってみてよ! 見本を見せてよ!」と言わんばかりに親にバットを差し出す。こんな光景はいくつものバッティングセンターであるだろう。

 違うのは、まだ圧倒的に「野球」よりも「ソフトボール」「クリケット」の認知度が高いということ。それと、圧倒的に子供よりも大人の方が、ボールを打っていた時間が長かったことだ(笑)。これもニュージーランドらしいと言えばそうかもしれない。

 雨の日の室内施設は助かる。ただ、雨じゃなくても平日は室内施設じゃないとなかなか場所を確保できないのも事実だ。野球をやる環境は……まだ前途多難である。

※ニュージーランドの野球事情と日本の役割を、元ロッテのエース・清水直行氏による手記から考えるシリーズ企画です。
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著者プロフィール

1975年11月24日生まれ 京都府出身。報徳学園高、日本大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位で千葉ロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回と2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現・横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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