巨人2軍に見る“プロ野球のリアル” 辻、和田、岡本…生き残る選手は誰だ?

中溝康隆

次世代三塁手争いは和田vs.岡本

 続いての注目株は、和田恋。「恋」と書いて「レン」と読む、ワダベンじゃなく、ワダレン。95年9月生まれの19歳。13年ドラフト2位指名、高校通算55本塁打の右の大砲候補の内野手。甲子園では当時・済美高のエース安楽智大(東北楽天)から左中間へ特大本塁打をかっ飛ばした。「村田修一2世」と大きな期待を寄せられてのプロ入りだったが、昨季イースタン228打席で2割ジャストの低打率にあえぎ、三塁守備でも21失策と不安定さを露呈した。秋季キャンプでは捕手にも挑戦し、今年の春季キャンプではノック中に右手中指を骨折するアクシデント。まさに波瀾万丈のプロ生活だが、今は堂々と「2軍の4番」を任せられている。現在29打点はチームトップ。守備位置は一塁中心の起用だが、将来を考えると、やはりサードも守れた方が起用の幅が広がる。

 となると、待っているのは2014年ドラフト1位ルーキー・岡本和真とのガチンコポジション争いだ。岡本は高校通算73本塁打のスラッガー。最近の巨人では珍しい一芸に秀でたドラ1高卒野手。誰もが期待せずにはいられない18歳の逸材だが、新人合同自主トレでは腰の張りでリタイア。イースタン・リーグ開幕直後にも腰の違和感を訴え、1カ月近く戦線離脱している。高校時代から腰に不安があり、まずは故障しない身体づくりからといった段階である。高校時代は一塁手だったが、首脳陣は三塁手として育てることを明言。「和田vs.岡本」。この2人の10代の争いについて岡崎郁2軍監督が興味深い発言をしている。

「和田や岡本が2人とも1軍に行って、2人とも中軸を打てれば素晴らしいと思います。しかし、そんなに甘い世界じゃない。この2人に関しては、2人のうちの1人しか生き残れないという覚悟の中で、どちらが勝つかという指導をしています。もちろん、その結果として2人とも順調に育ってくれればそれが一番いいと思います。ただ『2人ともがんばれ』と言うのが通用する世界ではありません。チャンスは平等に与えています。でも、1軍に行くための席は1つしかない場合がほとんどです」(『ヤングアニマル』11号、岡崎2軍監督インタビューより)

 これこそプロ野球のリアル。全員がハッピーなんてありえない。誰かが昇格すれば、代わりに誰かが降格する。まさに生きるか死ぬかの生存競争。毎年のように敢行される戦力補強。闘うべき相手は次から次へとやってくる。

 生き残るのは誰か? 今日もジャイアンツ球場では、辻東倫、和田恋、岡本和真の巨人軍「新闘魂三銃士」たちが己の野球人生を懸け、汗と泥にまみれている。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。デザイナーとして活動中の2010年10月に開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』が、累計7000万PVを記録するなど、野球ファンのみならず現役選手の間でも話題に。ほぼ日刊イトイ新聞主催『野球で遊ぼう。』プログラムに寄稿、『スポーツ報知 ズバッとG論』『Number Web』コラム連載を行うなど精力的にライター活動を続けている。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。主な著書にベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、最新作『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)などがある。

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