ハリルホジッチ「勝つ文化を伝えたい」 イラク戦、シンガポール戦メンバー発表
90分タクティクスをコントロールしたい
W杯予選を勝ち抜く上で必要なことを問われたハリルホジッチ監督は「チームにメンタルをもたらすのはアウェーでの勝利」と語った 【スポーツナビ】
ハリルホジッチ 各試合で準備がある。われわれがどの相手と対戦するかによるということだ。どのタクティクスを試合で使うのかは、いろいろなシチュエーションを考え、相手をしっかりと見て考える。チームの力強さというのは、タクティクスを使うということだ。
ウズベキスタンと対戦した時のハーフタイムがいい例だ。試合が30分経過したところで、フィジカルの部分を変えなければいけないと思った。最初は「プレスをかけながら、われわれのブロックを高くしなさい」と言っていたがそれができなかった。なので、ハーフタイムに根本的に全てを変えた。ブロックを引いて、しめて、ボールを奪ってからできるだけ早く1〜3人の選手で攻めて、さらに5〜6人の選手が続いて、たくさんの機会(チャンス)を作った。そして(後半に)4点取った。今回はこのメンバーを選んだが、川又を選んだのはパワーがある選手だから。テクニックは他の選手の方があるかも知れないが、こういう選手も必要だ。どの相手と戦うかによる。
そして、イラクに関してはシンガポールよりもかなりレベルが高いと思う。シンガポール戦では普通に考えると(日本が多く)攻撃をする。オフェンスの中盤が3人いる。つまり攻撃に力を入れたいということ。ディフェンスをしないという意味ではない。各プレーヤーがディフェンスをしなければいけない。もちろん、FWの選手が吉田や森重のようにはボールを奪うことはできないが、全員でシェアする。
今度はブロックを高い位置にするか、低い位置にするかについてだが、それはピッチの状況による。そして、低いからといって弱いチームだということはない。これはテクニックの選択で、相手を引きつける意味もある。例えば宇佐美や武藤のような速い選手を使って、岡崎などがカウンターで速い攻撃をするなど。つまり、各試合に応じた準備がある。そして、タクティクスを選択する。相手がもしかしたらわれわれより強いかもしれない。そういうことを考えなければいけない。
そして、過去の日本はタクティクスをアタックしていないのではないかと思う。90分かけてタクティクスをコントロールしたいと私は考えている。そのためには定めなければいけないし、説明しなければいけない。この2試合に向けてだが、イラクに対してはこういう風にやるよという話はする。試合の中でも、何も変えなくてもいい時もあるし、(変えなくては)難しい時もある。メンタルもタクティクスも変えなくてはいけない。だから発展させていかなくてはいけないという話だ。
――コミュニケーションを非常に重要視しているが、監督にとってコミュニケーションはどういった重要性があるのかを具体的に教えてほしい。また、今回の合宿ではどのようなコミュニケーションを選手たちと取っていきたいと考えているのか?
ハリルホジッチ これについては何時間も話さなければいけない。私は日本にまだ来たばかりだ。スタッフとオーガナイズしている。私はパトロンなのでコミュニケーションをしているが、もしかしたら次は違うスタッフが話すかもしれない。技術委員長の霜田さんも話すし、私からだけでなく、彼らからも意見をして、いろいろなところを変えなくてはいけない。そして日本代表だけでなく、いろいろなカテゴリーのチームがあるから、コミュニケーションは確かに大事だ。
例えば、こういう風に(資料を)見せる。ただこれは私だけがやったわけではない。皆でやったものをオーガナイズしただけだ。ここにいる全員が仕事をした。前はなかった代表監督の部屋に、今は毎日来て、かなり新しいものをもたらしているし、厳しさももたらしている。今のところは私からのコミュニケーションだが、霜田さんにもかなりコミュニケーションしてもらっている。
そして選手とのコミュニケーションの話だが、皆さんに言えることと言えないことがある。選手にしか言えないこともある。この前の2日間のミニ合宿だが、大仁(邦彌)会長も霜田さんも、今までやったことがなかったのでしっかりと準備をしなければいけなかった。もしかしたらこれをいきなり言うと、クラブは「いいよ」と言わないかもしれないという話もした。なので、大仁会長と霜田さんはコミュニケーションを取ってかなりのサポートをしてくれた。そしてクラブの方が全員受けてくれ、2日間仕事をすることができた。3回のトレーニングをすることができた。その中でもかなりのコミュニケーションを取った。最後に、ほぼ全クラブが「ありがとう」と言ってくれた。全選手、各自にいろいろな提案を行い、選手もうれしがっていた。そして、次もまたミニ合宿をやりたいと思っている。これは私だけで決めることではなく、クラブにも聞かなければいけない。ただ、要求はしたいと思う。
そして、日本代表の監督はカレンダーにもちょっとアイデアを入れたい。これは私の意見だ。日本代表の位置がそこまでプロテクトされていないのではないか。例えば、国内組が6月8日に着く。できるだけ私は選手と過ごしたい。そして彼らとトレーニングをする時間が欲しい。そして、私の考えやメソッドも伝えたい。ただ、いつもそんなに時間があるわけではない。話すのはいいが、グラウンドでやる方がいい。ここにいる全員で仕事をしている。今のところうまくっていっている。しかし、それは結果次第でもある。それは私が全責任を負う。
誰にも特別な権利は与えない
ハリルホジッチ まず勝つ文化をみなさんに伝えたい。それがかなり重要なことになってくると思う。私は霜田委員長と最初の2試合は絶対に勝つという話をした。ただ、それだけでは満足しない。これを続けて確認しなければならない。そして今度はアウェーでの戦いが始まる。メンタルの強さ、戦術の強さなどを確認できるのがアウェーだ。チームにメンタルをもたらすのはアウェーでの勝利だ。次はアウェーで戦うがその時の言葉はビクトリー。話すのは簡単だがやらなければならないし、コミュニケーションを取らなければならない。そして選手たちがいつも勝ちたいと思わなければならない。この勝つ文化というのが大事になってくる。W杯予選というのは特にそうだ。最初の試合から、日本がW杯に行くという野心があることを見せたい。
――FIFA(国際サッカー連盟)の汚職事件についてどう見ているか? また、アジアのW杯出場枠が4.5枠で維持されたことについてはどう思うか?
ハリルホジッチ FIFAの話はよく耳にしている。彼らについては以前から知っているけれど、常に良いイメージを与えるわけではない。ただ、正直な状況を作りたいし、正直に仕事がしたい。ただ、正直者ではない人も世界にはいる。この心配は最後まで続くと思うが、フットボールに関することなので、そういったものは排除してもらいたい。私もそういったところに知り合いはいるし、そこで仕事をしている人を知っている。そこに対して意見を言えないこともある。私は選手であったし、今は代表監督でもある。FIFAに関する話よりもフットボールの話をしたい。
4.5枠についての話は小倉(純二)名誉会長とも、FIFAの理事に選ばれた田嶋(幸三)副会長とも話をした。アジアが4.5枠を確保したという話を聞いている。それに関しては守りたいと思っていたので満足している。われわれの仲間が良い仕事をしてくれた。これに関してはしっかりとまた戦っていかなければならないと思っている。
――海外組で新たに招集したのが原口。今後海外の選手をどのように招集していきたいと考えているのか? また、東アジアカップとW杯予選の日程をどう考えているか?(河治良幸/フリーランス)
ハリルホジッチ 今回のリストについて、私の日本人プレーヤーに関する知識は最初とは全く異なる。全員を知っているわけではないが、多くのことを学んだ。そしてパフォーマンスで今後は判断していかなければならない。海外組と国内組で分けることは本来あまり好きではない。サムライブルーがあり、その中で海外でプレーする選手がいるだけだ。違いをあまり作りたくない。例えば日本でプレーする選手にチャンスがない状態を作りたくない。海外でプレーしているからといって自動的に代表に選ばれることもやりたくない。例えば乾(貴士)なんかもずっと海外にいる。私たちはずっと(動向を)追っているし、彼のことも考えている。でも今回は原口や宇佐美、武藤らを選んだ。なぜかと言うとパフォーマンスの差だ。選んだ選手たちはたくさんの試合に出ている。このポジションでは本当に定期的に試合に出てもらわなければならない。
とは言っても、川島は(所属クラブで)プレーをしていない。今回は彼がどんな状態かを見たかったからだ。そして(酒井)高徳もあまりプレーしていない。国内のサイドバックのプレーを見たが、高徳よりもパフォーマンスが良い選手を今は見つけていないだけだ。ただ、高徳より良い選手を見つければ明日にでもすぐ呼ぶ。日本代表は誰も保障されていない。全員が戦わなければならないのだ。つまりそういったことも含めて、ミニ合宿を国内組だけでやりたい。競争心を海外でプレーする選手たちにも見せたいと思っている。帯同する選手の90%が海外組となることもあるかもしれないけれど、今はバランスを取ろうとしている。ただ海外だから、国内だからということで選んでいるわけではない。この試合ではどのようなタイプの選手が必要かということも含めて考える。誰にも特別な権利を与えない。良いパフォーマンスを見せれば招集する。そして競争心を植え付けたい。今はそれを作っている最中だ。
なでしこジャパンにエール
霜田委員長 イラク戦はW杯予選前の非常に重要な親善試合です。アジアの最終予選で対戦するかもしれないイラクをここでしっかりとたたいて、緊張感を持ってシンガポール戦の良い結果につなげたいと思います。応援よろしくお願い致します。