国枝、上地 新技術の習得でさらに強く――過酷な全仏のクレーは「まるで生き物」
2連覇狙う上地は、挫折経験でさらに強く
昨年のアジアパラで破れて以降、不振に陥った上地だが、今は気持ちが前向きになったという 【吉村もと/MA SPORTS】
ところが、昨年10月のアジアパラ競技大会ではタイの選手に敗れて3位に終わり、その後の世界マスターズ、今年1月の全豪オープンも優勝を逃した。「自分が帯同する大会が少なかったこともあって練習強度が足りなかったことが失速の要因のひとつ」と、千川理光コーチは振り返る。
だが、世界ランキング上位の選手も参加した5月のジャパンオープンでは、上地は見事に優勝を果たし、不振から脱却しつつある。全豪オープンのあとに千川コーチとじっくりと話し合い、「試合はもちろん勝つつもりで臨むが、今年は自分のプレーに納得できるような試合を増やしていくこと」を目標に据えた。千川コーチも「現状に満足せず、いったんリセットできたことで、気持ちも前向きになったと思う」と分析する。
(映像提供:MA SPORTS)
年間グランドスラムを狙うダブルスの絆
そんな2人の絆を示すようなエピソードがある。ホワイリーは昨年の活躍が評価され、母国で「ヒストリーメーカー」として脚光を浴びた。そして、その快挙を日本人と達成したことから、彼女は右腕に漢字で「前人未到」のタトゥーを入れたのだとか。「“ヒストリーメーカー”を意味する日本語をジョーダンに聞かれたんです。すごく悩んだんですけど、この言葉がぴったりかなと思って伝えました」と、上地ははにかむ。
「今はお互いのことをすごくよく分かってプレーできています。どういうふうにギアを上げて戦うか、2人で探りながら実行している感覚があるので、すごく楽しいです」
今大会は、ロンドンパラリンピック銀メダルペアのイエスカ・グリフォン、アニク・ファンクート組(ともにオランダ)が最大のライバルとなるだろう。昨年は上地組がこのペアにフルセットで勝利して優勝しているだけに、今年も大きな期待がかかる。