国枝、上地 新技術の習得でさらに強く――過酷な全仏のクレーは「まるで生き物」
対応が難しい全仏のサーフェス
車いすテニス界の“絶対王者”国枝。サーブの質向上に取り組み、今年の全仏でも優勝の本命に挙げられる 【吉村もと/MA SPORTS】
車いすの部も一般と同じく、全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン、全豪オープンが世界の4大大会と位置づけられる(ウィンブルドンはダブルスのみの開催)。予選はなく、世界ランキングのトップ7とワイルドカード1枠の8名のみが参加できる。
クレーコートは、車いすの場合は直線にこぐときは重く、ターンするときは車いすごと横滑りする特徴がある。また、動けば動くほどコートにわだちが刻まれ、そこに自分のタイヤがはまってしまうこともあるなど、対応が難しいサーフェスだ。プレー面では、高い打点でボールをさばくパワーとラケットワーク、そしてコートを広く使う巧みなチェアワーク、ロングラリーにも耐えうる強いフィジカルが求められる。4大大会のなかでもタフな試合になることで知られる全仏は、車いすテニスプレーヤーにとって、もっとも過酷な大会なのである。
そんな、「まるで生き物のよう」とも表現される全仏のクレーコートを昨年制したのが、日本の国枝と上地だ。現在、ともに世界ランキング1位。今大会も堂々第1シードに名を連ね、国枝は2年連続6度目の優勝を、上地は単複2連覇を狙う。
常に高みを目指す国枝の強さの秘けつ
(映像提供:MA SPORTS)
サーブ改良、盤石の体勢でクレーに臨む
国枝はさらなる高みを目指して、丸山弘道コーチと取り組んでいることがある。それがサーブの改良だ。もともとコントロールは抜群で、エースの数も多いのだが、スピードだけを見ると速い選手が他にもいる。“パワーテニス時代”と言われる男子では、特にサーブが重視される傾向にあることから、2月のキャンプから強化を始めた。筋力をつけて速さを出すというより、サーブの一連の流れを見直して、ラケットワークを含めて動作のロスをなくしてスピードアップにつなげるというもの。実戦としては5月のジャパンオープンで試し、手ごたえを感じた。
「緩急をつけてコントロールするというプレースタイルは変わらない。そのなかでサーブのバリエーションを増やし、“こういうのもあるぞ”と相手を惑わすのが大事だと思っています。全仏でも重要な局面で使っていければ」
王者の新たな挑戦から目が離せない。