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阪神の誤算と、首脳陣の無策
疑問に思う、若手を我慢しない和田采配

“計算”外の事態が続く今季の阪神

不振で2軍調整中のメッセンジャー(右)。昨季、最多勝投手の離脱も誤算の一つ
不振で2軍調整中のメッセンジャー(右)。昨季、最多勝投手の離脱も誤算の一つ【写真は共同】

 今季の阪神タイガースの戦いぶりは実に分かりやすい。主力選手が“計算”通りの活躍をすれば勝つ一方で、“計算”を裏切って沈黙すれば負ける。だから、主力選手の多くが“計算”に満たない成績しか残せていない今、当然のごとく苦戦を強いられている。


 思えば開幕前、阪神はセ・リーグの優勝候補と目されていた。確かに阪神には投打ともに実績豊富な主力選手がそろっていたため、机上の“計算”ではいかにも強そうな布陣に見えた。

 しかし、その一方で一抹の不安を指摘する野球評論家もいた。阪神の場合、野手では鳥谷敬、上本博紀、西岡剛、ゴメス、マートン、福留孝介、投手ではメッセンジャー、能見篤史、岩田稔、藤浪晋太郎、呉昇桓などといった主力選手が、みんな実績から“計算”した通りの成績を残せば強いのだろうが、そのうちの何人かが故障で欠けたり、不振に陥ったりしたときに、その穴を埋められる選手が一気に見当たらなくなるため、あっけなく弱体化する危うさを秘めている。


 すなわち、選手層が薄いということだ。


 かくして今季の阪神は、その不安が見事に的中したと言えるだろう。投打の軸として“計算”していたマートンとメッセンジャーは不振に陥り、チームリーダー・鳥谷も左脇腹痛の影響なのか、ここまで“計算”を裏切っている。さらに、ここにきて西岡が故障離脱するなど、とにかく“計算”外の事態が続いているわけだ。

計算が合う日を待っているかのような采配

 ここで私が思うのは、冒頭から再三にわたって書いている“計算”についてだ。

 普通、プロ野球の首脳陣は開幕前に自軍の戦力を見極め、ある程度の計算を立てるものだ。主力選手それぞれの実績をベースにして、今季のソロバンをはじく。しかし、現実はその計算通りにいかないことがほとんどだから野球は難しい。実績から計算した能力値がそのまま成績に反映されるなら、それはもう一昔前の野球ゲームの世界だ。


 だからこそ、首脳陣は計算が狂ったときのことも考えておくという。「昨年のタイトルホルダーだから、今季もこれくらいはやるだろう」「うちのチームリーダーだから、これくらいやってもらわないと困る」などといった計算だけでなく、もしも故障や不振があったとき、つまりマイナス要素も想定したうえで、二の手、三の手も準備しておくわけだ。


 しかし、ここまでの阪神首脳陣を見ていると、そういったマイナス要素の想定があったようには思えない。特に野手陣はチーム打率と総得点がともにリーグ最下位(27日現在)で、開幕前に計算していた主力打者が軒並み打率2割台と低迷しているにもかかわらず、かたくなにスタメン起用を続けている。

 実際、和田豊監督は主力打者の誤算について「彼らはやってもらわないと困る選手だから」「個々の調子を上げていくしかない」などといったせりふを繰り返すだけで、決して二の手をちらつかせるようなことはしない。野球ゲームのコントローラーを握りながら、いつか計算が合う日をひたすら待っているかのような采配だ。

山田隆道
山田隆道

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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