父ディープのダービー馬弟が千葉セールに サラブレッドセリ市勢力図に変化の兆し

橋本全弘

馬主たちのマネーバトル

父ディープインパクト、兄はダービー馬エイシンフラッシュの超良血馬ムーンレディの13 【提供:橋本全弘】

 競馬サークルは春の本格的なシーズンに突入、毎週のようにビッグレースが行われ、激しい戦いが繰り広げられているが、その裏舞台でも馬主達による“明日に向けた”熱い戦いが展開されていることをご存じだろうか。

 明日に向けた戦い――それはサラブレッドセール(セリ市)である。

 サラブレッドのセリ市は毎年、春シーズンにスタート、夏、秋へと続いていく。ターフでの激闘の裏で、馬主やバイヤーたちは、来年、さらには未来に向けて、優秀なサラブレッドを獲得しよう……とマネーバトルが繰り広げられているのである。

2歳トレーニングセールにあっと驚く超良血馬

毎年セリ市では馬主、バイヤーたちが未来のスターホースを求めて激しい争奪戦を繰り広げている 【提供:橋本全弘】

 日本に於けるサラブレッドセールは、一般的に競走年齢に達していない若駒(0〜1歳馬)によるセール、競走年齢となる2歳に達し、調教が施された未出走馬によるトレーニングセール、繁殖牝馬セールに分けられる。

 若駒によるセリ市では良血馬を目指して馬主、バイヤーたちが激しい争奪戦を繰り広げ、毎年7月、北海道・千歳のノーザンホースパークで行われる「セレクトセール」では、数億円もする高額馬が飛び出し、世間とかけ離れたバブリーな競馬の世界の一端を垣間見る思いがするものである。

 これに対して2歳トレーニングセールは血統や資質よりも、実際の競走能力がそのベースにある。0歳(当歳)や1歳のセリ等で買い手がつかなかった若駒に調教を施し、その走りを公開した上でセリが行われる。つまり、血統よりも個体能力。“即戦力”としての期待が懸けられるのである。

 確かに走るかどうかも分からない良血馬に何千万、何億円も払うより、調教を積んで競走能力がはっきりしている馬を購入した方がリスクは少なくなるのは当然で、近年、日本の競馬サークルにも浸透。先月28日、中山競馬場で行われたJRA主催ブリーズアップセールでは最高価格3240万円を筆頭に上場された全67頭が売却された。

 このように従来“トレーニングセールには良血馬は出てこない”というのが通説だったが、それに反発するように、今週15日(金)に船橋競馬場で行われる2歳トレーニングセール「2015千葉サラブレッドセール」にあっと驚く垂涎の超良血馬が上場されるとあって競馬サークル内が騒然となっている。

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著者プロフィール

 1954年生まれ。愛知県出身。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社に入社。87年、中央競馬担当記者となり、武豊騎手やオグリキャップ、トウカイテイオー、ナリタブライアンなどの活躍で競馬ブーム真っ盛りの中、最前線記者として奔走した。2004年スポニチ退社後はケンタッキーダービー優勝フサイチペガサス等で知られる馬主・関口房朗氏の競馬顧問に就任、同オーナーとともに世界中のサラブレッドセールに帯同した。その他、共同通信社記者などを経て現在は競馬評論家。また、ジャーナリスト活動の傍ら立ち上げた全日本馬事株式会社では東京馬主協会公式HP(http://www.toa.or.jp/)を制作、管理。さらに競馬コンサルタントとして馬主サポート、香港、韓国の馬主へ日本競馬の紹介など幅広く活動している。著書に「名駿オグリキャップ」(毎日新聞社)「ナリタブライアンを忘れない」(KKベストセラーズ)などがある。

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