父ディープのダービー馬弟が千葉セールに サラブレッドセリ市勢力図に変化の兆し

橋本全弘

エイシンフラッシュの半弟、父はディープインパクト

ムーンレディ13のブラックタイプ 【提供:橋本全弘】

 公営・船橋競馬場を会場として開催される同セールは前身の両国市場を合わせて今年で19回目。その昔は公営競馬レベルの上場馬がほとんどを占めていた。それが近年、セリ出身馬が中央競馬でも活躍を見せ始め注目が上がってきたが、その背景に見え隠れするのが“社台パワー”である。

 主催する千葉県両総馬匹農業協同組合の代表理事が社台の総帥・吉田照哉氏ということもあり、近年は社台ファーム生産馬を中心に良血・優秀な上場馬が多くなり、結果も伴うようになって、昨年のセール出身馬ではミュゼエイリアンが毎日杯、ノットフォーマルがフェアリーSと、2頭が重賞勝ち馬になっているのだ。

 その社台ファームが今セールに送り出す超目玉ホースが「ムーンレディの13」。父は今、競馬サークルを席巻する大種牡馬ディープインパクトで、兄にダービー、天皇賞・秋を制したエイシンフラッシュという超良血馬。セレクトセールに出たとしても黙って億の値がつくようなプラチナホースといってもいいだろう。

 この垂涎の超良血馬が調教もしっかりと施されて即戦力として上場されてくるのだから大手馬主たちのハートは熱くなるばかりである。

吉田照哉氏「こういった流れはこの後も続いていく」

黙っていても億の値がつく超良血馬、どんな高額がつくのだろうか 【提供:橋本全弘】

 吉田照哉氏がその背景を語る。「やはりこういったセールはいい馬を出して盛り上げないと……思って出すんですよ」と平然と話すが、まさに日本の競馬を牽引する社台グループの総帥だからこそできる事。「去年のセリの出身馬もいい結果を残しているし、これからもこのトレーニングセールを盛り上げて行きたいですね」と話す。

 もちろん、上場馬名簿が発表された直後から競馬サークル内でも話題の的。セレクトセールで高額バイヤーとして名が知れているトーセン軍団の島川隆哉オーナーや、サトノ軍団の里見治オーナーが「あの馬は絶対、俺が落とす(落札する)」と豪語しているとも言われており、セリ当日は激しい争奪戦が繰り広げられると思われる。

 従来はお世辞にも良血と言えないようなレベルの馬に“調教”という付加価値をつけられて行われていたトレーニングセールだったが、これからは調教も積まれた即戦力良血馬がどんどん上場されてきそうで吉田照哉氏も「こういった流れはこの後もどんどん続いていくと思うよ」と話すようにサラブレッドセールの勢力図が大きく変化していくのではないだろうか。

 果たして、今週15日、船橋競馬場で行われるトレーニングセールでこの注目のディープ二世にはどんな高額がつくのだろうか。競馬サークル内では今この話題で持ち切りである。

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著者プロフィール

 1954年生まれ。愛知県出身。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社に入社。87年、中央競馬担当記者となり、武豊騎手やオグリキャップ、トウカイテイオー、ナリタブライアンなどの活躍で競馬ブーム真っ盛りの中、最前線記者として奔走した。2004年スポニチ退社後はケンタッキーダービー優勝フサイチペガサス等で知られる馬主・関口房朗氏の競馬顧問に就任、同オーナーとともに世界中のサラブレッドセールに帯同した。その他、共同通信社記者などを経て現在は競馬評論家。また、ジャーナリスト活動の傍ら立ち上げた全日本馬事株式会社では東京馬主協会公式HP(http://www.toa.or.jp/)を制作、管理。さらに競馬コンサルタントとして馬主サポート、香港、韓国の馬主へ日本競馬の紹介など幅広く活動している。著書に「名駿オグリキャップ」(毎日新聞社)「ナリタブライアンを忘れない」(KKベストセラーズ)などがある。

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