身近な“指導者”が支える野球力 元ロッテ・清水直行、NZでの挑戦(5)

清水直行

野球の基本はキャッチボール

日本と違い、わずか数年の歴史しかないニュージーランド野球。キャッチボール一つをとっても、まだまだ野球を教える人材が不足している 【(C)SAMURAI JAPAN】

 野球の世界では、よく「キャッチボールをしっかりとやりなさい」「野球の基本はキャッチボールだ」というフレーズをよく耳にする。

 私自身も、野球を始めた頃に多くの大人から、「相手の胸へ投げなさい」「相手のことを考えて投げなさい」などと、いろいろな言い回しで指導してもらった記憶がある。キャッチボールは、プロ野球選手になってからも、引退するまでも一番大切にしていた練習だった。

 実は、キャッチボールの大切さをほとんどの人が知っているのは、日本が野球大国だからだ。日本野球の歴史をさかのぼれば、1870年頃からと記されており、今日でも多くの日本の大人は、この「キャッチボール」をすることができるのではないだろうか。

 これに対して、ニュージーランド野球の歴史は、わずか数年だ。現在の世界ランキングは25位に位置しているが、数年前にはランキングすら入っていなかった。当然、野球を教える人材が不足していることは言うまでもない。

キャッチボールができる大人を増やす

清水氏はニュージーランドで「キャッチボール講座」を開き、“指導者”を増やしていく計画だ 【(C)SAMURAI JAPAN】

 野球の歴史が浅いということは、子供とキャッチボールができる大人も少ないということである。

 私の最初の“指導者”は「父」であった。私と同じように、日本での多くの野球少年の最初の“指導者”は「お父さん」や「お母さん」、あるいは「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではないだろうか。日本では、こんなごく身近にいる“指導者”がたくさんいることに対して、ニュージーランドではこんな良い関係が多く存在していない。日本の野球力の根底には、そんなたくさんの“指導者”の存在が大きいと知っている。

 今年の2月、私の勉強も兼ねて、現地の日本人のお父さんに対して「キャッチボール講座」というプログラムを実施した。肩や肘のストレッチからボールの握り方や足のステップまで、約1時間半、「キャッチボール」を中心に指導をさせていただいた。今後はニュージーランドの、子供が野球をしている方やしていない方に対しても「キャッチボール講座」を実施していこうと計画している。

 ニュージーランド野球が世界に挑戦する過程のひとつに、“指導者”を増やしていく活動も必要だと考えている。

※ニュージーランドの野球事情と日本の役割を、元ロッテのエース・清水直行氏による手記から考えるシリーズ企画です。
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著者プロフィール

1975年11月24日生まれ 京都府出身。報徳学園高、日本大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位で千葉ロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回と2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現・横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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