低迷続くアイススレッジホッケー日本代表 パラリンピック出場に向け解決すべき課題

荒木美晴/MA SPORTS

北米の“2強”が強烈な存在感

米国・バッファローで開催されたアイススレッジホッケー世界選手権。日本は出場国中最下位となる8位に終わった 【吉村もと/MA SPORTS】

 4月26日から米国ニューヨーク州バッファローで行われたアイススレッジホッケーの世界選手権が、5月3日に閉幕した。世界のトップ8カ国(カナダ、米国、ロシア、チェコ、ノルウェー、イタリア、ドイツ、日本)が参戦。決勝戦でカナダを3−0で破った米国が2大会ぶりに頂点に立ち、2018年の平昌パラリンピックに向けて好スタートを切った。

 ソチパラリンピック金メダルの米国と前回大会優勝のカナダの一戦は、最終的に点差が開いたものの、見応えは十分だった。あっという間にゴール前に詰めるスピードとスケーティング、当たり負けしないフィジカル、精度の高いパスとレシーブ、パックを確実にキープするハンドリング。ハイレベルだった1年前のソチパラリンピックより、さらに進化していた。

 何と言っても、彼らのプレーにはアイスホッケーを愛する目の肥えた満員の観客をも魅了する「華」がある。アイススレッジホッケー界のさらなる飛躍を期待させるエンディングだった。

日本は惨敗でBプールに降格

5戦全敗に終わった日本。プレー面の要因は、組織的な守備が機能しなかったことだろう 【吉村もと/MA SPORTS】

 一方、日本にとっては世界との差を痛感する、悔いの残る結果となった。まず、2つのグループに分かれて行われた予選ではカナダ、チェコ、ノルウェーと対戦。

 初戦の相手カナダは格上の相手とはいえ、日本は一度もチャンスを作れないまま、0−17と歴史的大敗を喫してしまう。続くチェコ、ノルウェーとの対戦でも試合の主導権を握れず、3連敗。プレーオフでイタリアと、また順位決定戦でチェコと再戦するもいずれも敗れ、1勝もできないまま最下位の8位に沈んだ。同時に、次回(16−17シーズン)はBプールへの降格が決まった。

 実際のところ日本代表は、13年10月のソチパラリンピック最終予選以来、1年半にわたって実戦を積めず、国内で調整を図ってきた。中北浩仁監督は、「失われた試合勘を埋めて本番に臨めなかったことが監督としての最大の敗因」と語り、「新たな日本のシステムを作り出せる体制を整えていかなければならない」とコメントした。

 プレー面での敗因は、日本の組織的な守備がほとんど機能しなかったことに尽きるだろう。フィジカルの強い海外勢がプレッシャーに来ると、簡単にディフェンスラインが崩され、パックを奪われてしまう。それを挽回するスピードも技術も足りず、ミスを重ねてしまうメンタル面の弱さも浮き彫りになった。

 海外勢は確かに強敵だが、実力が突出している米国とカナダを除けば、スピードはさほど脅威ではないという印象だ。実際に、日本と同様にベテラン勢が多いノルウェーとチェコは、走れない分パスワークの精度を上げて、体力を消耗せずに攻撃の機会を作りだし、勝機を見いだしていた。日本にもこうしたチャンスが十分にあったはずだが、結果に結びつけることができなかった。

 1998年長野パラリンピックから日本代表に名を連ねる三澤英司(DF)は、「何度もこの舞台に立っているが、個のフィジカルもメンタルも頭の中のホッケーのセンスも、すべてにおいて差を感じた」と話し、悔しさをにじませた。

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著者プロフィール

1998年の長野パラリンピック観戦を機に、パラスポーツの取材を開始。より多くの人に魅力を伝えるべく、国内外の大会に足を運び、スポーツ雑誌やWebサイトに寄稿している。パラリンピックはシドニー大会から東京大会まで、夏季・冬季をあわせて11大会を取材。パラスポーツの報道を専門に行う一般社団法人MA SPORTSの代表を務める。

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