フォルクスワーゲンF1参戦が現実に? 赤井邦彦の「エフワン見聞録」第41回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

きっかけは会長の辞任

噂が再燃するVWグループのF1参戦。そのブランドは、やはり経験者を集めるアウディなのか? 【LAT Photographic】

 フォルクスワーゲン(VW)の取締役会長(1993〜2002年)、監査役会長(2002〜2015年)を長く務めたフェルディナンド・ピエヒが辞任して、いよいよVWブランドがF1に参戦するという噂がモータースポーツ界をにぎわせている。

 VWグループは多くの自動車ブランドを有するコングロマリットとも呼べる企業体だが、その核をなすのはVW、アウディ、ポルシェの3大ブランドだ。現在これらのブランドは、VWがWRC(世界ラリー選手権)、アウディはWEC(世界耐久選手権)とDTM(ドイツツーリングカー選手権)、ポルシェはWECでモータースポーツ活動を行っている。

 VWブランドがF1へ出て行く噂は数年前からあり、その先鋒(せんぽう)はアウディということだった。アウディはル・マンをはじめとする耐久レースで連戦連勝の大記録を打ち立て、次のステップを模索中だと伝えられた。そして、その噂を後押ししたのがポルシェのWEC参戦で、それが実現した今、同じVWグループの中から2社が同じシリーズに出て行く意味はないだろうとの見解が語られた。ポルシェがWEC、アウディがF1と言われたのはそうした理由による。まあ、理論的には筋道が通っている。

アウディとポルシェがWECに出続ける理由

 ただ、アウディとポルシェは同じVWグループとはいえ、それぞれ独立した企業。そして、それぞれがWECを非常に効果的なPRの場と認識して活動をしている。WECが自動車メーカーの支持を得るのは、技術の自由な競争域を残しているからだ。あらゆる種類のパワーユニット採用を許しながら、性能を均一化させることで戦いを面白くする。ディーゼルエンジンのアウディ、ターボエンジンのポルシェが同じ土俵で戦えるのもそのレギュレーションゆえだ。

 そこにアウディもポルシェもWECで戦うことに価値を見いだしている。ましてやクルマの形状もフォーミュラと比べると市販車に近い。そして、アウディがWECから撤退しない決定的な理由は「ポルシェが勝ってもアウディは売れない」というアウディチーム代表の言葉だ。アウディが売れるためには、WECでアウディがポルシェを破ることが重要なのだ。戦いの場にグループ意識はない。

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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