対照的なヘルタ・ベルリンの2人 苦しむ細貝と試合に出続ける原口の未来

初ゴールを決め戦力となった原口

原口(左)はダルダイ監督の下での最初の5試合では出場機会を得られなかったが、シャルケ戦で初ゴールを決め戦力として認められた 【写真:ロイター/アフロ】

 一方で、原口の状況は異なる。「彼らの立場は、まったく違う方向へと様相を変えていった」とアキレスは言う。細貝は中盤のキープレーヤーという立場から、スタンドへと居場所を変えた。逆に、原口は無名の存在から先発レギュラーへと変貌した。マインは「良いスタートを切ったものの、負傷で後退してしまった」と振り返る。他の選手は良いプレーを披露し、原口の立場は揺らいだ。さらに監督が代わったことで、原口は難しい時間を過ごすことになった。ダルダイの下での最初の5試合で、原口はまったく出場時間を与えられなかった。

 だが、懸命に練習を続ける原口に幸運が降りかかった。エニス・ベナティラが負傷したことで、ダルダイはバレンティン・ストッカーを中央に据えた。したがって、左ウィングのポジションは原口のために空けられたのだ。シャルケ戦(2−2)で、原口はこのチャンスをものにした。ヘルタ加入後初となる、リーグ戦でのゴールを決めたのだ。

 ダルダイは最大級の賛辞で若き才能を称えた。原口は武器となるだろうし、素早く、運動量があり、「驚きをもたらしてくれる」だろう。さらに原口の急成長も、指揮官の目をひきつけているはずだ。「原口はドイツのフィジカル的にきついサッカーにも、うまく対応するようになっている」とフンジンガーも話す。才能があるのは間違いない。つまり、「まだ成長の余地がある」というわけだ。

 ただし、「フィジカル面での勝負になると問題がある」とフンジンガーは語る。彼が思い出すのは、『キッカー』に載せるためのインタビューをした時のことだ。「最後にはいつも、ドイツ人が勝つんです」と原口は話した。「スピードと動きで、相手選手を抜くようにしなければなりません。相手の足が届いた時には、ボールはどこかに行っています」。一方で、我慢強さと戦術理解度という武器は備えてはいる。

 それに、23歳の原口にとってのプライベートタイムが、ドイツの首都にやって来たようだという。ガールフレンドが彼の下を訪れ、ギターを弾き始め、犬との時間も楽しんでいるという。「パピー(愛犬)を連れて、よく街中を散歩しているよ」とアキレスは微笑む。それが彼の気を紛らわせ、厳しい時期にも助けになったのだろう。

劇的に改善されれば細貝にもチャンスはある

 今季残りの数試合で、はっきりしていることがある。細貝がまた役割を与えられることはなく、原口は試合に出続けるだろうということだ。残留を争うヘルタは、今後数週間で厳しい対戦に挑む。トップチームとの試合の後に、別のトップチームとの対戦が待つのだ。「また苦い思いをすることになるかもしれない」とマインは考える。

 だが、ヘルタは本当に必死にブンデスリーガ残留へ奮闘を続けている。ダルダイはチームに、新たな落ち着きを与えた。ヘルタはやや守備的なプレーをするようになり、安定感を増している。「しかも今季前半戦ほどには、個人のミスで痛手を被ることがないという幸運にも恵まれている」とマイン。選手たちの運動量は増し、バトルでも勝てるようになっている。「ブロック間の距離は、さらに縮まった」とフンジンガー。そここそ細貝が生きる道だが、試合に出ることができないというのが残念な現状だ。

 もしヘルタが1部リーグに残ることができたら、パル・ダルダイには新契約が提示されることだろう。だが、細貝と原口の今後はどうなのだろうか? 若きドリブラーに関しては、アキレスの「本当のジャッジを下すのは来季」との言葉を待つまでもなく、心配する必要はないだろう。

 ただし、細貝の状況は異なるようだ。ヘルタは“背番号6”(守備的MF)のポジションに、新たな選手を買いたいと思っている。細貝は、散々なシーズンという重荷を背負っている。ダルダイはいつまでも選手を許したり、何かを帳消しにするような人物ではない。劇的に改善されれば、細貝はもう一度チャンスを与えられるだろう、というのがフンジンガーの見方だ。マインはこう話す。「個人的には、細貝を高く評価している。ヘルタのようなクラブでも、背番号6として素晴らしい選手になれるはずだ。ヘルタは細貝を放出しないと、僕の勘がささやいてる」。

 もしヘルタがリーグに残ったとしても、また新シーズンに向けての新しいカードがすぐに配られることになる。またもすべてはスピードを上げて動き出すのだ。その時まで、原口は自信をにじませる力強いプレーを続けているのか、細貝が本当に居場所を取り戻すことができないのか、確実なことを言える者は誰もいない。今はただ、チームの未来に自分を重ねて、前へと進んでいくだけだ。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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