対照的なヘルタ・ベルリンの2人 苦しむ細貝と試合に出続ける原口の未来
初ゴールを決め戦力となった原口
だが、懸命に練習を続ける原口に幸運が降りかかった。エニス・ベナティラが負傷したことで、ダルダイはバレンティン・ストッカーを中央に据えた。したがって、左ウィングのポジションは原口のために空けられたのだ。シャルケ戦(2−2)で、原口はこのチャンスをものにした。ヘルタ加入後初となる、リーグ戦でのゴールを決めたのだ。
ダルダイは最大級の賛辞で若き才能を称えた。原口は武器となるだろうし、素早く、運動量があり、「驚きをもたらしてくれる」だろう。さらに原口の急成長も、指揮官の目をひきつけているはずだ。「原口はドイツのフィジカル的にきついサッカーにも、うまく対応するようになっている」とフンジンガーも話す。才能があるのは間違いない。つまり、「まだ成長の余地がある」というわけだ。
ただし、「フィジカル面での勝負になると問題がある」とフンジンガーは語る。彼が思い出すのは、『キッカー』に載せるためのインタビューをした時のことだ。「最後にはいつも、ドイツ人が勝つんです」と原口は話した。「スピードと動きで、相手選手を抜くようにしなければなりません。相手の足が届いた時には、ボールはどこかに行っています」。一方で、我慢強さと戦術理解度という武器は備えてはいる。
それに、23歳の原口にとってのプライベートタイムが、ドイツの首都にやって来たようだという。ガールフレンドが彼の下を訪れ、ギターを弾き始め、犬との時間も楽しんでいるという。「パピー(愛犬)を連れて、よく街中を散歩しているよ」とアキレスは微笑む。それが彼の気を紛らわせ、厳しい時期にも助けになったのだろう。
劇的に改善されれば細貝にもチャンスはある
だが、ヘルタは本当に必死にブンデスリーガ残留へ奮闘を続けている。ダルダイはチームに、新たな落ち着きを与えた。ヘルタはやや守備的なプレーをするようになり、安定感を増している。「しかも今季前半戦ほどには、個人のミスで痛手を被ることがないという幸運にも恵まれている」とマイン。選手たちの運動量は増し、バトルでも勝てるようになっている。「ブロック間の距離は、さらに縮まった」とフンジンガー。そここそ細貝が生きる道だが、試合に出ることができないというのが残念な現状だ。
もしヘルタが1部リーグに残ることができたら、パル・ダルダイには新契約が提示されることだろう。だが、細貝と原口の今後はどうなのだろうか? 若きドリブラーに関しては、アキレスの「本当のジャッジを下すのは来季」との言葉を待つまでもなく、心配する必要はないだろう。
ただし、細貝の状況は異なるようだ。ヘルタは“背番号6”(守備的MF)のポジションに、新たな選手を買いたいと思っている。細貝は、散々なシーズンという重荷を背負っている。ダルダイはいつまでも選手を許したり、何かを帳消しにするような人物ではない。劇的に改善されれば、細貝はもう一度チャンスを与えられるだろう、というのがフンジンガーの見方だ。マインはこう話す。「個人的には、細貝を高く評価している。ヘルタのようなクラブでも、背番号6として素晴らしい選手になれるはずだ。ヘルタは細貝を放出しないと、僕の勘がささやいてる」。
もしヘルタがリーグに残ったとしても、また新シーズンに向けての新しいカードがすぐに配られることになる。またもすべてはスピードを上げて動き出すのだ。その時まで、原口は自信をにじませる力強いプレーを続けているのか、細貝が本当に居場所を取り戻すことができないのか、確実なことを言える者は誰もいない。今はただ、チームの未来に自分を重ねて、前へと進んでいくだけだ。
(翻訳:杉山孝)