13歳・久保建英が下した苦渋の決断 帰国後も再びバルサでのプレーを目標に

工藤拓

現時点でプレーできるのはただ一人

活動停止が続く状況に、久保(右)は日本への帰国を決断した 【写真:アフロスポーツ】

 欧州各国がセマナ・サンタ(カトリックの聖週間)の連休でにぎわう中、一人の少年が帰国を決断した。2011年に日本人として初めてFCバルセロナと選手契約を結んで以降、現地での目覚ましい活躍が注目されていた久保建英である。

 EU(欧州連合)圏内では16歳未満、それ以外では18歳未満の選手の国際移籍を原則禁止するFIFA(国際サッカー連盟)の規約19条に違反しているとして、バルセロナがFIFAから該当選手の活動停止を命じられたのは13年2月のこと。その後の調査により該当する選手は10人に上り、昨年4月には45万スイスフラン(約5200万円)の罰金と、全カテゴリーにおける新規の選手登録を1年間禁止する処分が正式に通告される。この時まだ活動停止の該当選手には含まれていなかったものの、クラブは規約違反の対象となり得る建英とアメリカ人MFのベン・レーダーマン、フランス人MFのカイ・ルイスの3選手についても、公式戦のみならず国内外で行われるFIFA非公認の各種大会まで出場を“自制”させることを決めた。

 その後バルセロナはまずFIFAに、続いてスポーツ仲裁裁判所(TAS)に処分の取り消しもしくは軽減を求めて上訴するも、前者は昨年8月、後者は同12月末に「未成年選手にとって理想的な育成環境を提供しているクラブには規約19条を適用すべきではない」と主張するバルセロナの訴えを棄却する。この時点ではまだ通常の司法裁判に訴える道が残されていたが、その場合最終的な判決が下されるまでには何年もかかってしまう。その間、子供たちがプレーできないのであれば何の解決にもならないため、クラブはこれ以上の抵抗を断念。同時に、最長で2年近くも試合なき日々に耐え続けてきた子供たちのわずかな希望も断たれることになった。

 最終的にFIFAから活動停止の対象とされた9選手のうち、現時点で再びバルセロナでプレーできるようになっているのはフランス人MFのテオ・チェンドリただ一人だ。EU国籍の選手は16歳から他国での登録が可能となるため、彼の活動停止は13年5月に16歳の誕生日を迎えるまでの4カ月間で済んでいる。

先の見えない状況に退団する選手も

 一方、13年2月に事の発端となる訴えを受けた韓国人FWのイ・スンウは、18歳の誕生日を迎える来年1月まで我慢の日々が続く。同じく2年以上も登録禁止の状態が続いている同郷のMFパク・スンホは今年3月に18歳を迎えたものの、タイミングの悪いことに1月からバルセロナの新規登録が禁止となったため、他クラブにプレーの場を求めない限りは来年1月まで練習のみの日々を送らなければならない。もう一人の韓国人FWチャン・ギョルヒはもう少し長く、18歳に至る来年4月の誕生日まで復帰を待つことになる。

 彼ら3人と同じく13年2月からプレーの機会を失っていたナイジェリア人のボビー・アデカニェは、今年2月に18歳を迎えた。昨年11月より生まれ故郷であるオランダのPSVに期限付き移籍中の彼は、バルセロナでの登録が解禁となる来年1月に復帰する予定だ。

 他の4人はもっと先の見えない状況にある。現在15歳のカメルーン人FWパトリス・ソウシアが日の目を見るのは17年1月、先述したベン・レーダーマンは18年5月の誕生日まで母国以外でのプレーが叶わない。それでもまだバルセロナに残っている2人とは裏腹に、同じく18年の6月まで登録ができない12歳のカイ・ルイスは1月にバルセロナを退団し、フランス国内で移籍先のクラブを探している。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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