13歳・久保建英が下した苦渋の決断 帰国後も再びバルサでのプレーを目標に

工藤拓

U−15日本代表の海外遠征に参加

精鋭ぞろいのバルセロナにおいても久保のインテリジェンスは群を抜く。帰国後は早速U−15日本代表の海外遠征に参加する 【写真:アフロスポーツ】

 そして最も長い“刑期”が確定したのが、他でもない建英だった。彼が日本以外でプレーできる権利を得られるのは19年6月。この1年は処分が取り消されるかもしれないという希望があったからこそ耐えることができたが、このままバルセロナに残るのであればさらに4年以上も試合に出場できない状況が続くことになる。それは才能豊かな13歳の少年にとって、あまりにも長過ぎる喪失である。

 それでもバルセロナに残り、質の高い指導を受けた方が良いと考える人もいるかもしれない。だが10代の選手にとって何よりも重要なのは毎週末の試合でプレーする環境であり、練習はあくまでも試合の準備を行う場である。そのような考え方が常識となっているスペインに3年半も身を置き、丸1年も試合から遠ざかる中でプレーすることの重要性を痛感してきたからこそ、彼は大好きなバルセロナを離れるという苦渋の決断を下してまで、試合に出られる環境を優先したのだ。

 それにしても、幼い頃からバルセロナでプレーするために必要な能力を磨き続け、11歳にして夢を実現させるに至った少年が、全くもって理不尽な形で退団を余儀なくされそうのは本当に残念なことだ。幸いその才能を高く評価しているクラブは帰国後も建英との契約を継続し、毎シーズンの練習参加と19−20シーズンでの復帰を現時点では約束している。とはいえこの国で4年前に交わした約束が果たされることなど期待していてはいけない。18歳での復帰を実現したいのであれば、新たに契約を勝ち獲るつもりでこれからの4年間を戦っていかねばならないだろう。

 いずれにせよ、精鋭ぞろいのバルセロナの中でも突出したインテリジェンスを擁していた建英のこと、どこへ行っても再びバルセロナでプレーするという目標を見失うことなく、必要な課題を1つ1つクリアしながら自身を磨いていくはずだ。

 それに建英がこの3年半にスペインで学んできたことのすべては、日本サッカー界にとっての財産でもある。帰国後ほどなくU−15日本代表の海外遠征に参加することが決まっているが、今後彼とロッカールームを共にする機会を得る選手たちには世界基準のフットボールを身近で学び、感じられる貴重なチャンスを最大限に生かしてもらいたい。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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