松坂大輔、独占インタビュー 厳しい意見は「結果で跳ね返す」

田尻耕太郎

以前とは違った形で楽しませる

松坂は9月に35歳となる。「若かった時の暴れるようなピッチングはもうないと思います」と笑う 【繁昌良司】

――メジャーでは西武ライオンズ時代には投げていなかった球種もマスターしました。以前に日本でプレーしたころと比べてピッチングスタイルに変化はありますか?

 ライオンズの時とは変わると思いますね。米国に行って新しいボールを覚えて、オープン戦ではそのボールが日本のバッターに通用するのか試している段階です。今は(キャッチャーの)鶴岡(慎也)くんと組ませてもらっていて、自分が気になっているボールについては「使える」と言ってもらえました。開幕までの登板では、新しいボール(球種)をシーズンでもしっかり使えるように、極端と言われるくらい使ってみようと思っています。

――日本のファンの中には西武時代のような投球を想像している方も多いと思いますが、新たな武器を手にし、またひと味違う姿が見られるということですね。

 若かった時の暴れるようなピッチングはもうないと思います(笑)。少しは歳も重ねたので、「大人になったな」と思ってもらえるようなピッチングをお見せできるとは思います。だけど、技巧派になるとか、そういうことではありません。以前とは違った見方、違った形で楽しませることができればいいなと思います。

――オープン戦初登板だった3月4日、甲子園での阪神戦ではいきなり146キロをマークしました。シーズンに入り、気候も良くなって体の状態が上がれば、やはり150キロの剛速球も期待してしまいます。

(スピードは)問題なく出てくると思います。ここ何年か、(開幕前の時期は)暖かいところで調整していた習慣が体に染みついていて、気候のおかげで自然と体の状態が上がっていく中でやっていました。3月中旬の時期はしばらくの間、ヤフオクドームで練習も試合もできるので、もう一段階(ギアを)上げられると思います。

――では、シーズンでは150キロ台を連発も。

 ハハハ(笑)。連発できるか分かりませんが、スピードは問題なく出てくると思います。

ナカジ、黒田さんは意識すると思う

松坂はインタビュー中も先発へのこだわりを見せた 【写真は共同】

――ところで、今季は松坂投手の他にもメジャーから日本球界に復帰した選手が数多くいます。ファンにとっては楽しみが増えましたが、松坂投手が何か意識することはありますか?

 ナカジ(中島裕之、オリックス)はライオンズ時代の後輩で普段から仲良くしていますし、対戦すれば当然意識すると思います。黒田さん(博樹、広島)は球場で話す程度でしたが、投げ合うことになればやはり意識はすると思いますね。(日本シリーズで実現するなら?)もちろん、そういう舞台で投げ合いたいです。

――昨年12月、ソフトバンクの入団会見の直後に話を伺いましたが、その際、「メジャーで引退するのではなく、いつかは日本に帰ってくるだろうと考えていました。期限なんて決めていませんでしたが、たまたまこのタイミングになったということ」とおっしゃっていました。あらためて、その真意を教えてください。

 日本に帰りたいというような気持ちとは別に、いつかはまた日本に戻ってきて、日本でプレーをして(現役生活を)終わるのかなというイメージというか、漠然と考えることはありましたね。

――日本球界のために?

 うーん、よく言われますけど、自分が日本球界のために何ができるかという明確な答えが僕の中にはまだ見えていません。ただ、経験してきたことをこれからの選手に伝えることはできる。今はまだそれくらいですね。

満足することがあれば、それは辞める時

「野球が1番うまい選手になりたい」。松坂は貪欲に上を目指している 【繁昌良司】

――松坂投手の加入で今年のホークス、そしてプロ野球界が非常に活気づいています。今シーズンの目標を聞かせてください。

 そう言ってもらえるのはうれしいです。それに、もし、新たに野球に興味を持ってくれる人が増えてくれれば、それはまたうれしいことです。そういった人たちの興味を離れさせないためにも、しっかり活躍することが大事だと思います。1年間しっかり働き、ホークスの日本一連覇に貢献したいです。

――やはり先発へのこだわりは大きい。

 ずっと先発をやってきましたから。試合の最初から最後まで、マウンドに立ち続けたいと思っています。

――西武時代のプロ1年目、「自信が確信に変わりました」(※筆者注、文末の説明を参照)という名言がありました。もちろん自信を持って臨む今季と思いますが、何があれば確信へ変わっていくでしょう?

 うーん、どんなに良い成績を残した時でも本当に満足できることはありませんでした。さらに上、さらに上、との思いでやってきましたから。いやー、あの時はなんであんな言葉が出たんだろう。自分でも分からない(笑)。うん、あの時は「この世界でできる」という自信が確信に変わったということでした。自分のやってきたことに満足することがあれば、それは辞める時じゃないですかね。そんな気がします。

――となれば、今季の数字的な目標も「過去最高の自分」ということに。

 難しいことですが、目指すのは常に1番でありたい、野球が1番うまい選手になりたいという気持ちです。それでずっとやってきたので、今年も変わらないですね。

――最後にあらためて、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

 僕が思うのは、野球を知るために見るのであればテレビの方がよく分かるんですけど、野球の楽しさや面白さを知るためには球場に足を運んでもらう方がいいと思うんです。僕もプロ野球選手としてたくさんの人に見に来てもらいたい。だから、ファンの方たちが見に来たいと思ってもらえるような、ピッチングをしたいと思います。よろしくお願いします。


※注:1999年5月16日のオリックス戦。イチロー(現マーリンズ)との初対決に日本中の注目が集まった。その対決で松坂は3打席連続三振を奪う会心のピッチングを見せる。試合後のヒーローインタビューで「これまでは何か自信がなかったけど、自信が確信に変わってきました」という台詞を残し、名言のひとつとして有名になった。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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