未知の投手にチームとしていかに戦うか 課題と収穫つかみ、勝負の11月へ

高木遊

課題が出たことに意義がある

技巧派投手を打ち崩せず、侍ジャパンは打撃での課題を露呈。主砲・中田(中央)は2試合で1安打に終わった 【Getty Images】

 野球日本代表「侍ジャパン」と 欧州代表の第2戦が11日、東京ドームで行われた。東日本大震災から4年という節目の日に勝利を誓った侍ジャパンだったが、先発・松葉貴大(オリックス)が3回5失点と打ち込まれると、打線も拙攻が目立ち2対6で敗れた。
「(3月の開催について)意味が薄いとか、周りの方はいろいろ言うが、国際試合を戦うことは避けられなくなっている中で、選手もそれを理解し、それぞれが責任と使命を持ってやってくれました」

 試合後に小久保裕紀監督はこのように答え、「この2日間で出た課題は、11月から始動していたら11月に出ていたはずです。ここで課題が出たことにすごく意義があったと思います」と続けた。

 具体的には「知らない投手に対して個で戦うのではなく、もっとチームで戦わないといけない。負けられない秋のプレミア12では、逆方向中心の打撃を指示する可能性もある」と述べ、2日間通して、技巧派投手に対し雑な打撃、攻撃となってしまった点を一番の課題に挙げた。

 稲葉篤紀打撃コーチも「タイミングの取り方は各打者違うもの。外国人選手独特の投げ方、球の持ち方がありますので、それをベンチやネクストバッターズサークルで(タイミングを)取っていかないといけない。ただ、これは本当に難しいことです」と話し、この時期に課題が出たことを最大の収穫に挙げた。

「そういったタイミングの取り方というのは、シーズンを通じてやってほしい。場面によっては、国際大会でなくても1打席目から攻めて相手を崩すということが大事になってくるから」と、試合後に選手に語りかけたという。

 前日の松田宣浩(ソフトバンク)のように初球から積極的に打っていく姿勢も「チームとして初球から行こうという話はしてきた。今日で言うと、皆さんには淡白な攻めと映ったかもしれないが、その姿勢は大切です」と長期的な考えで語った。

満点に近い投球を見せた井納

2番手の井納はフォークを効果的に使って好投。本人は球数少なく抑えられたことを収穫に挙げた 【Getty Images】

 投手陣では、この日の2番手としてマウンドに上がった井納翔一(DeNA)が2回を投げ1安打4奪三振、26球でまとめ、松葉の5失点から続いていた嫌な流れを断ち切った。

「状況に関係なく、自分の投球で押していけば、良い結果が出ると信じて投げたので、僕が投げた後にチームが2点返したということは、イイ形でつなげられたかなと思います。(4奪三振については)普段から言っていることなんですが、三振は結果として出たものなので、4つ取れたことは良くてうれしいですが、球数少なくできたことの方が良かったですね」と、球数の少なさを収穫に挙げた。通用した要因については、「(海外の打者は)ストレートに強いからこそ、フォークが生きたのかなと思います」と話した。

 また9日の練習後には、若手の又吉克樹(中日)、松井裕樹(楽天)と食事に行き、親交を深め、野球論を交わした。先発にこだわりがある一方で、「与えられた役割(中継ぎ)でチームに貢献したい」と話す松井に対し、「この経験が必ず先発に戻っても生きてくる」という話や「場合によっては中継ぎでも1点取られて良い場面もある」という中継ぎとしての心構えを又吉とともに説いたという。

 課題と収穫が多く出たこの期間を、監督・コーチをはじめとしたスタッフ、そして選手たちが11月までにどのように進化させていくのか。

 試合は退屈とも言える内容であり、空席も目立つなど興行面での課題も多く残ったが、チーム強化の現場としては、練習日含め実りの多い3日間となった。
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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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