川淵チェアマンが示した制裁解除への道筋 日本のバスケファミリーに求められる我慢
タスクフォースの精力的な動き
タスクフォースのチェアマンとして精力的な動きを見せる川淵チェアマン 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
しかし川淵はタスクフォースのチェアマンとして、47歳のパトリック・バウマンFIBA(国際バスケットボール連盟)事務総長が「彼は私より若いよ」と苦笑するほどの精力的な動きを見せている。
今回の議論を把握する上で、15年6月のタイムリミットは大前提だ。JBA(日本バスケットボール協会)は現在、FIBAから資格停止処分を受けており、一切の国際的な活動を禁じられている。15年8月末から開始されるリオデジャネイロ五輪のアジア予選に日本の男女代表が出場するためには、6月中に問題解決のめどをつけ、処分が解除されることが必須条件だ。
川淵チェアマンは1月下旬に行われたタスクフォースの第1回会見から、早くも具体的で、踏み込んだ提案を行った。6月上旬までに開催されるタスクフォースは計6回の予定で、結論までの流れに費やせる時間も4カ月強しかない。加えて既存の論点は陳腐化しており、過去に結論が出なかった話を蒸し返しても、終着点は見えない。川淵チェアマンは「同じ話を繰り返さず、堂々巡りにならない形をとれるかが勝負」と決着に向けた歩みを口にする。
新リーグの“最終案に近い私案”
バウマン事務総長が繰り返し指摘しているのが、日本バスケ界のビジョン欠如だ。ビジョンとは集団を導く地図であり、これが全体で共有されていないから、バスケ界は迷走せざるを得なかった。川淵チェアマンはまさにビジョンを最初に提示した。初回の会合で参加メンバーに確認した「地域に根差すことが大事」という大原則に止まらない、具体的な提案も行った。
主な内容は下記の通りだ。
・社団法人を設立して、新リーグを立ち上げる
・最上位リーグにおける参加チームの独立法人化
・2015−16シーズンは2つのカンファレンスを作り、チャンピオンシップなどの形で優勝チームを決める
・2016−17シーズンに新リーグを開幕する
・1部、2部、地域リーグとピラミッド型で運営する
・各チームが試合の8割をホームアリーナで行う
・ホームアリーナの最低収容人数は5,000人
・アリーナの建設、優先使用などで行政の支援を得る
・サラリーキャップ(年俸総額制限)を廃止する
川淵チェアマンは“私案”と断り、異議や反論にも耳を傾ける姿勢を取っている。とはいえ時間の乏しさを考えれば、“最終案に近い私案”なのだろう。
バスケ界の現状を考えれば、実現の可能性に疑問符を付ける人もいるかもしれない。しかし川淵チェアマンは第1回タスクフォース後の記者会見でこう述べている。「完璧なものは初めからできません。とりあえずスタートして、トライ&エラーで、PDCA(Plan“計画”→Do“実施・実行”→Check“点検・評価”→Act“処置・改善”)のサイクルを回して、まずければどんどん変えていけばいい。その前提となるものは魅力的な、子どもたちがプロ選手になりたいなと思えるビジョンを、あるべきプロとしてのトップリーグの姿を示して、それに向けて各クラブが努力していくこと」(川淵チェアマン)。要は“まず計画、実行をしてからダメ出しをするべし”という話である。強引と言われれば強引だが、乏しい時間を考えれば、強引さは必須条件だ。
3月4日に行われる第2回タスクフォースでは、球団側へ対し新リーグへの参入基準が伝えられる予定だ。となれば今はすでに“詰め”の段階と言っていい。