バレー強化策『TeamCORE』発足後1年 強化・育成の現場で感じた手応えと危機感
代表合宿で得たそれぞれの刺激
所属チームとスタイルは異なるが、『TEAM CORE』メンバーの宮部は、代表合宿で刺激を受けていると言う 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
どちらも全国大会で何度も全国優勝を成し遂げている名門であり、どちらが正解、どちらが間違い、という答えはない。だが選手たちからすれば、これまでは所属先で行う練習や植えつけられる概念がすべてだった。学校でのスタイルと『TEAM CORE』での指導内容。求められることの違いを選手たちはどう受け止め、どのように解釈しているのか。
黒後はこう言う。
「高校は高さ、ここ(ユース合宿)では速さ。スパイクのタイミングを調整したり、すごく大変なことばかりですが、普段学校でできることと違うものが取り入れられて、それがなぜ必要かも説明してもらえる。単純に速い攻撃に対しての守備も、目や体が慣れるし、どちらも自分にとってはものすごくプラスだな、と感じるようになりました」
吉岡も黒後と同じく、課題よりも手応えを口にする。
「高校に入った直後のように、高さからスピード、スピードから高さの切り替えは簡単なようですごく難しくて最初は戸惑いました。でも、たとえバレースタイルは違っても、学校で先生に教えてもらったことがユースの合宿でプラスになることがたくさんあるし、ユースの合宿で監督やコーチ、シニアのスタッフの方々に教えてもらったことが生かされている面もたくさんあるんだ、と実感しています」
1年生ながらエースとして活躍し、インターハイ、国体、春高と三冠タイトルを獲得した宮部も同様だ。
「春高で優勝して、ちょっとだけ自分に自信を持てた部分もあったんです。でも、ユース合宿ではシニアのコーチから、良い部分だけでなく未熟な部分をどんどん指摘される。特にブロックは、学校では手の角度や指の出し方しか意識していなかったけれど、体幹を締めて形をつくるとか、動き方とか、もう一段上のレベルで指導される。なので、分からないこともあるけれど、理解して、できるようになればもっとうまくなれるのかな、頑張らなきゃいけないな、と思うようになりました」
プロジェクト全体の課題は山積み
東京五輪での金メダルに向け、今年は「ファイナリストの経験」を積ませたいと語った安保監督 【スポーツナビ】
とはいえ『Project CORE』に目を向ければ、着手しなければならない課題は山積みで、選手の発掘や指導者の育成など、最も重要視される点に関しても、具体的な策は示されていないのが現状でもある。
リオデジャネイロ五輪はわずか1年後に迫り、東京五輪も5年後に開幕する。強化の先端を行く『TEAM CORE』は今シーズンのアンダーカテゴリー(U−23、U−19、U−17)の世界大会すべてで金メダル獲得を目標に掲げていると安保監督は言う。
「この時期にファイナリストの経験を持たなければ、東京五輪で金メダルを狙うことなどできません。常に強いチーム、世界のトップを狙うチームであり続けるためにどうするか。人、金、時間をどう費やすか。プロジェクト全体から捉えれば、もっともっと考えてやらなければならないことがある。そのために現場から、解決しなければならない課題をどんどん上げていく。それが使命だと思っています」
8月には、リオ五輪の出場権が懸かったワールドカップが開幕する。その勝敗の行方だけでなく、これからを見据え「本気の改革」を掲げるバレーボール界の長期的視野での育成、強化策にも注目していきたい。