豪州・WSWに渡った2人の日本人 高萩と田中に求められる“二面作戦”

植松久隆

鹿島戦で加入早々に“凱旋帰国”

1月にWSWに移籍した高萩。25日のACL鹿島戦で早速の“凱旋帰国”を果たす 【Getty Images】

 小野伸二が2季に渡って所属して大活躍を見せたウエスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)。昨季はACL(AFCチャンピオンズリーグ)を制してアジアクラブ王者となった。ディフェンディング・チャンピオンとして25日に迫った初戦、アウェーでの鹿島アントラーズ戦に臨むクラブに、アジアカップ開催でのAリーグ中断期間に加入したのが、高萩洋次郎と田中裕介だ。

 いずれも昨季のJリーグで、それぞれサンフレッチェ広島、川崎フロンターレという強豪でレギュラーとして活躍していた選手なだけに、その彼らが加入早々に“凱旋帰国”を果たすとなれば、当然ながら注目は集まる。当の本人たちは「とても楽しみ」「鹿島は素晴らしいスタジアムなので良い結果を出したい」と気負いは無いが、やはり、メディアやスタンドのファンの視線は今までと違う見慣れないユニホームに身を包んだ背番号「10」(高萩)と「3」(田中)に集まるのは必至だ。

 実は、小野の退団が決まった直後の昨年5月、ある席でWSWのフロント幹部とオフレコで話し「これからも日本人選手にはアンテナを張っていくよ。誰か良い選手がいたら教えてくれ」という話を聞いた。その時に筆者は、「小野が抜けたばかりだし、またすぐに日本人獲得はないだろう」と冗談半分に思っており、豪州に来たら面白いと思うJリーグで活躍する現役選手の名を幾つか挙げていた。

 しかし、彼の言葉にうそは無かった。筆者が挙げた名前に高萩、田中両名は含まれていなかったが、WSWは小野退団後もしっかりと日本人をターゲットにリサーチしていた。だからこそ、1月11日に田中獲得の報に接した時は、驚きよりも「彼らは本気だったんだ」という気持ちが強かった。しかも、田中が昨季ACLで対戦して、直接プレーを見る機会のあった選手という点には、非常にリアリストと知られるトニー・ポポビッチ監督らしさを感じて、大いに得心した。

日本人選手に対するポジティブな反応

 しかしその3日後、高萩獲得の報せが飛び込んできた時には、ビザ枠の都合などの問題もあって、さすがに日本人選手2人を同時に獲得するなどとは思いもしていなかったので、とても驚いた。いつかは小野の衣鉢(いはつ)を継ぐ日本人選手がWSWで活躍することを願っていたが、1年も経たないうちにそれが実現、しかも2人同時獲得などとは考えも及ばなかった。

 彼らの入団が決まってからのソーシャル・メディア上は、WSWファンの歓迎の声に包まれた。やはりファンに愛された「シンジ・オノ」の影響が今でもファンの間には強いのだろう。まずは、日本人選手というだけでポジティブなリアクションが返ってくる。さらには、2人が共にAリーグよりレベルが高いと認められるJ1でバリバリのレギュラーだったという実績から、必然的に大きな期待が掛けられ、「即戦力に違いない」と期待する声が大半を占めた。中には、『YouTube』で高萩のプレー集を見つけ、「これなら大活躍間違いなしだ」と太鼓判を押すファン。田中が「運動量豊富なサイドバック(SB)の選手。両SBポジションができる。J1出場205試合を誇る」選手であることを調べて、昨季の主力であるジェローム・ポレンツ(現ブリスベン・ロアー)の退団後に埋まらなかった右SBの穴を埋める非常に的確な補強だと評価するなど、多くのファンが歓迎している様子が見てとれた。

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著者プロフィール

1974年福岡県生まれ。豪州ブリスベン在住。中高はボールをうまく足でコントロールできないなら手でというだけの理由でハンドボール部に所属。浪人で上京、草創期のJリーグや代表戦に足しげく通う。一所に落ち着けない20代を駆け抜け、30歳目前にして03年に豪州に渡る。豪州最大の邦字紙・日豪プレスで勤務、サッカー関連記事を担当。07年からはフリーランスとして活動する。日豪プレス連載の「日豪サッカー新時代」は、豪州サッカー愛好者にマニアックな支持を集め、好評を博している

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