ソチ2冠の狩野、見据える先は3連覇「障がい者スポーツの迫力を伝えたい」

瀬長あすか

今からコツコツ積み上げていく

今季は夏場の雪上トレーニングも増やし、海外での時間も長くなっている 【Getty Images Sport】

――ソチから1年が経ちましたが、4年という時間は長いですか?

 新しいことを試していく時間を考えると、4年はあっという間。平昌はすぐ来ると思っています。ソチが終わったばかりの今年は、国によってはのんびり過ごしているところもありますが、とても休んでいる暇はありません。僕は実際にバンクーバー後の3年間はまったく結果を出すことができず、ソチの数週間前にようやく準備が整いました。平昌に向けて新たに何を取り入れるか。その試行錯誤はもう始めなければ間に合いません。

――パラリンピックが終わり、いろいろなチャレンジがしやすい年ではありますが、今年何かトレーニングや技術を一新したりしましたか?

 スキーのベースはソチまでのスタイルと変わりません。これまで通りに技術を磨きながら、どういう滑りをしようか新しいことにチャレンジしながら、コツコツと積み上げていくつもりです。そのために、夏場の雪上トレーニングの期間を長くし、海外で多くの時間を過ごしています。また、オフに行うフィジカルトレーニングは量を増やす必要はないので、(深層部まで意識を傾けるなど)質にこだわっていくだけです。

スポーツとして見てもらえるように

ソチ1年後の今シーズンも活躍を見せる狩野。「チェアスキーのスポーツとしての迫力を伝えたい」と意気込む 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――そんな中で今シーズンは、12月のヨーロッパカップでは大回転で優勝、スーパーコンバインドでも表彰台に上がるなど前半戦から結果も出ています。平昌までの4年は、ソチまでの4年とは違う4年になりそうですね。

(ソチまでのように)長い期間結果が出ないという苦しい経験はもうしたくないですからね。平昌では、スーパー大回転の3連覇、ダウンヒルの金メダルに加えて、もう1種目の表彰台を目指します。4年間安定した成績を残して平昌を迎えたいですね。そのために、今季のワールドカップから表彰台に絡めるよう攻めていきますよ。

――大回転で優勝しましたが、得意の高速系だけではなく、技術系にも力を入れてトレーニングするのですか?

 ゆくゆくはオールラウンダーを目指します。まず平昌では、高速系を除く何か1種目でもメダルを取れれば。得意種目で確実に結果を残すために、他の種目でもメダルを取れるように自信をつけて、高速系はリラックスしてレースに臨めるようにしておきたいですね。

――そして、1月にフランスで開催されたワールドカップでは、高速系であるダウンヒル2レースに出場し、初戦で1位、2戦目でも2位と強さを見せつけました。

 ダウンヒルは、チームの力も試される種目。トレーニングランから含めると3日間、長い時には5〜6日かけて行い、その間、スタッフやチームメートと戦略を練ります。さらにレース当日も、コース内にいるコーチから、刻々と変化するコース状況、前に滑っている選手のスピード、風の影響にラインの指示などの情報が上がってきます。すなわち僕だけではなく、チームで戦っているわけで、そんな中でこの成績を出せたことは本当にうれしいです。

――2月上旬にスイスで開催されたワールドカップ・ファイナルで、ダウンヒルとスーパー大回転の種目別タイトルを獲得。狩野選手自身初めてクリスタルトロフィーを手にしました。そのときの気持ちを教えてください。

 今シーズンのダウンヒルとスーパー大回転の種目別タイトルは、もともとダウンヒル2レース、スーパー大回転2レースの合計で争うことになっていました。しかし悪天候の影響でスーパー大回転はキャンセルになって、結局ダウンヒルの結果だけでタイトルを争うことに。レース数も少なかったので、タイトルが決まった瞬間は、気持ちの盛り上がりのようなものはなかったんです。でも、クリスタルトロフィーを手にしたときは気持ちの高ぶりを感じました。とはいえ、自分が本当の意味で高速系王者とは思っていません。今後、しっかりとレースが開催された時に、ダウンヒルとスーパー大回転のそれぞれのタイトルを獲得できるよう、もっともっと強くなりたいと思っています。

――これから3年間、安定した成績で平昌を迎える目標に向けて、幸先のいい一年になったのではないでしょうか?

 正直なところ、いいスタートを切れたことと、リスタートを切らなければならない両方の気持ちがあります。高速系で結果を出せて、試していることもいいデータが取れているので、この先段階を踏んで高めていく上で明るい材料を得ることができました。その一方で、技術系ではまったく歯が立たなかったので、何かを大きく変えなければとも感じています。自分が何をすべきかしっかり感じることができたので、今後も挑戦を続けていこうと考えています。

――平昌ではどんな姿を見せたいですか?

 パラリンピックはまだまだ障がい者によるものというイメージがあると思います。皆さんにスポーツとして見てもらえるように、僕ら選手も今まで以上に頑張らなければならない。チェアスキーのスポーツとしての迫力を伝えられれば、もっとこの(障がい者スポーツの)世界に興味を持ってもらえると確信しています。

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著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

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