私が野球新興国に渡った理由 元ロッテ・清水直行、NZでの挑戦(1)

清水直行

知らなかった世界の野球事情

ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐として、野球普及に励んでいる元ロッテの清水直行氏 【(C)SAMURAI JAPAN】

「日本野球をニュージーランドに伝えよう」

 空港に降り立ったときのすがすがしい気持ちは今も忘れていない。約1年前、2014年1月にニュージーランドのオークランドへ向かった。

 縁もゆかりもない国へ渡航する決断に至った理由は、さらに1年前にさかのぼる。横浜DeNAを退団し、進退に悩んでいた時期だった。第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開催に合わせ、テレビ局から解説の仕事をいただいた。「どんな国が出場するのか」。出場国を調べて驚いた。ニュージーランド、ドイツ、南アフリカ、フィリピン……。これらの国を聞いて、正直に言えば、野球と結びつけることが難しかった。

 私は6歳から野球を始め、プロ野球選手になり04年アテネ五輪と06年第1回WBCで日本代表選手にも選ばれた。しかし、世界の野球事情をあまりにも知らなかったのだ。

 当時はまだ現役復帰できるか、引退になるかをさまよいながらリハビリに励んでいたが、このことが「第2の野球人生」を考える大きなきっかけになった。世界の野球について多くを学ばなければいけないと考えるようになった。

「日本の野球は世界の野球へ貢献できているのか」
「プロ野球のOBはどのぐらい野球普及活動をしているのか」
「野球という競技はグローバルになっていくのか」

 思い立つと、行動に移すタイプだ。家族で生活できることも視野に、ニュージーランドで野球の普及に携わりたいと強く思うようになった。

可能性を感じニュージーランドへ

野球の専用球場はなく、冬はラグビー場として使用されるなど、まだまだ野球をする環境は整っていない 【(C)SAMURAI JAPAN】

 ニュージーランドから野球を連想するのは難しい。私自身もそうだったからだ。WBCには第3回から参加した野球新興国。私がゼネラルマネジャー(GM)補佐に就任したニュージーランド野球連盟は現在、12歳以下からトップチームまで5つのカテゴリーで世界の大会に出場している。

 もちろん、まだまだ野球をする環境は整っていない。日本のプロ野球が使用するスタンド席があるような専用球場は皆無で、プロリーグも存在しない。強化を進めるにあたって痛感させられるのが、国やその他からの支援の少なさだ。

 しかし、ニュージーランドにはオールブラックス(ラグビーナショナルチームの呼称)がある。言わずと知れたラグビー大国だ。人材には可能性を感じる。そこにどう関わっていくか。日本球界に育ててもらった私ができる野球への恩返しでもあると感じ、地道に活動していきたい。そして、そこでの活動や現地の野球事情をこのコラムを通して日本の野球ファンにも伝えていきたい。

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著者プロフィール

1975年11月24日生まれ 京都府出身。報徳学園高、日本大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位で千葉ロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回と2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現・横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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