バロンドールにふさわしきノイアー 問われる世界最高サッカー選手の意義

「世界最高のサッカー選手だなんてナンセンス」

ドイツはブラジルW杯初戦でC・ロナウド擁するポルトガルに圧勝。その後、一気に優勝まで駆け上った 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 一方で、C・ロナウドはエゴが強すぎると言う者もある。戦術とチームが彼を中心に作られた時にだけ機能する選手だ、と。確かに、クラブでは最高の選手たちに囲まれている。世界の舞台で失敗してしまったポルトガル代表と決定的に違う部分は、そこだ。

 ブラジルワールドカップでは、グループステージで姿を消した。彼のポルトガルを大会から追いやった一因は、4−0と一蹴したドイツである。誰もノイアーを打ち破ることはできなかったのだ。『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』のコラムで、クリスティアン・カンプ記者は「チューリッヒではチームワークに対する賞は存在しなかった」と記した。そのコラムの見出しには、こうあった。「ロナウドというブランドの勝利」。クラウス・ヘルツェンバイン記者はこうつづった。「今や明らかになったことがある。スポーツマンが負けるのだ。C・ロナウドに負け、メッシに負け、そういった世界的なサッカーの親善大使たちに負けるのだ」。VIPという要素が、革新的なメッセージを打ち消す。『南ドイツ新聞』に掲載された、うめきである。

「まともな話をすれば、世界最高のサッカー選手だなんてナンセンスだ。サッカーはチームスポーツであり、これまで自分一人で試合に勝った選手などいない。たった一人の選手を選んで、黄金に染め上げて他と際立たせるなんて、この競技の摂理に反している」。『ツァイト』誌のクリスティアン・シュピラーは、バロンドールの存在意義自体に疑問を投げかけた。「バロンドールの選考にはセービングやヘディングの数がカウントされず、考慮されるのがゴールしかないのか。だからこそ、選ばれるべきは一人しかいなかったのだ」。そう、記者は書き続けた。62試合で61得点。C・ロナウドが14年に残した数字だ。驚異的であることは否定できない。

GKはいつだって日陰者

ブラジルでのノイアーのセーブを忘れる者などいない 【写真:Action Images/アフロ】

「ウォォォォォォォ」。トロフィーをその手に抱いた時、C・ロナウドは雄叫びを上げた。レアル・マドリーのチームメートへの思いを伝えたかったのだと、彼は説いた。

 結局、チューリッヒでは見慣れた光景が繰り返された。生み出されるべきは得点で、試合で栄光のスポットライトを浴びるのは攻撃的選手だ。GKは、いつだって日陰者。スペシャルなセーブやPKストップを繰り出したって、思い出どまり。同じ大事な試合で生まれたものでも、ゴールにはかないっこない。

 だがドイツでは、ブラジルでのノイアーのセーブを忘れる者などいない。バイエルン・ミュンヘンのGKなくして、世界王者のタイトルは自分たちの国にはやって来なかった。そう、理解しているのだ。

 だからこそ、バロンドール授賞式の後、ノイアーはクールにこう話した。

「笑顔で家を出てきたんだ。僕にとっては勝利の一日だった。14年丸ごとそのままが、僕にとってはただただ信じられないものだった。一緒に祝える成功を、僕らはたくさん手に入れた。僕の心に、永遠に残るだろう」

 何も言い足すことはない。

 そうそう、付け加えるなら、一つだけ。これからも、ノイアーは世界王者になれるだろう。C・ロナウドには、決してかなわぬ夢である。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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