バロンドールにふさわしきノイアー 問われる世界最高サッカー選手の意義

「ノイアーこそがバロンドールにふさわしい」

ノイアーは2014年のバロンドール有力候補といわれながらも受賞には至らなかった 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 今回、“世界最高の男”はマヌエル・ノイアーではなかった。

 世界一のタイトルがもたらされたドイツの人々は、次のタイトルが来るのを待つばかりだった。そう、ノイアーは民衆の英雄となった。世界最高のGKとなり、GKのプレーの概念を進化させてさえいたのだ。

 このGKは、世界王者を支える存在として、ブラジルで傑出したプレーを披露した。ペナルティーボックスから遠く離れた位置でのタックルや、ボールを扱うプレー。自分の仕事場を広げ、正確なスローイングも備える。精緻なのはキックも同様だ。スピードもあり試合のリズムを紡ぎ、世界中のファンとサッカーの専門家に強いインパクトを残してきた。

 その結果として、2014年の年間最優秀選手の最終3候補にまで残った。理由はさまざまあるが、彼の残した数字は印象的なものだった。だからこそ、世界王者となった国において最終選考を前にした人々は、進化したこのGKに受賞の大きなチャンスがあることを理解していた。「マヌエル・ノイアーは、フランツ・ベッケンバウアー以降で最高のスイーパーだ」。ドイツ代表チームのGKコーチ、アンドレアス・ケプケはそう称した。単に傑出したGKではなく、素晴らしい“プレーヤー”である彼に向けられるべき言葉だった。

「(リオネル・)メッシでもクリスティアーノ・ロナウドでもなく、ノイアーこそがバロンドールにふさわしい。ロナウドとメッシは一休みした」と語ったのは、“神の手”ことディエゴ・マラドーナだ。またジョバンニ・トラパットーニもペトル・チェフも、バスケットボールのスターであるダーク・ノビツキーもノイアーの大ファンだ。ドイツ人の目からすれば、受賞者は決まっていた。

C・ロナウドの受賞にドイツの声は二分

リーグ最多得点を記録し、レアル・マドリーを“ラ・デシマ”へと導いたC・ロナウドが2年連続でのバロンドール受賞となった 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 FIFA(国際サッカー連盟)のバロンドール授賞式を前にして、メディアに登場するサッカーの専門家たちはノイアーの受賞の可能性ばかりを語り続けた。受賞者に推した声は、決して少なくなかった。だが、違う声が存在したのも確かだ。C・ロナウドの力が、いかに強大であるかを知る人々の声だった。

 C・ロナウドの隣に立ったノイアーは、少しおびえているようだった。投票の結果にではなく、フェロモンをまき散らすスーパースターの隣にいることの方に、まごついているように映った。そして栄光は、13年同様に外向的なポルトガル人の頭上に輝いた。彼にとって3度目の受賞。ノイアーと、彼の最大のライバルであるメッシを差し置いての選出だった。

 この結果に、ドイツの声は二分された。ある者は、C・ロナウドは受賞に値すると話した。昨シーズン、クラブではリーグ最多得点を記録し、レアル・マドリーを長らく待ち望んだ10度目のチャンピオンズリーグ制覇、“ラ・デシマ”へと導いたのだから。現代のアスリートの見本だとする向きもあった。

 そしてもちろん、『CR7』(編注:C・ロナウドが自身で立ち上げたファッションブランド)はれっきとしたブランドである。なにしろ、飛ぶように売れるのだ。フェイスブックでは1億500万人以上のファンがおり、彼のツイッターは3300万人以上にフォローされている。この数字が、彼の人気を何よりも雄弁に語っている。

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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