リスクを背負って獲得したソチでの勲章 スキージャンプ・清水礼留飛が得た経験
ソチ五輪スキージャンプ男子ラージヒル団体で銅メダルを獲得した日本代表メンバーとなった清水礼留飛 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
弱冠20歳にして対峙することのできた経験、あの場に至るまでにどんなことを考え、行ったのか。そして、ソチ以前と以後で何が変わり、何が変わらなかったのか。3年後の平昌五輪まではどんな道程を描こうとしているのか。
日本ジャンプ界の若きホープの本音に迫った。
競技人生にとってプラスの経験
気持ちの切り替えができてからは、良いジャンプを連発した 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
五輪は小さい頃からのあこがれでした。ソチの舞台に立った時は、「これは五輪なんだ」と意識していたことが一番大きいと思います。観客の数も多いですし、メディアの注目度も違います。でも緊張したのは、ノーマルヒルの予選の1本だけで、それ以降はすぐに緊張が解けた感じです。
もう割り切ったというか。これが五輪なんだなと思った後は、それも踏まえて普通通りやるしかないなと思えました。
――自然体になれた感じですか?
そうですね。ワールドカップ(W杯)に何十試合も出ている中で、そんなに気持ちを引きずっていたら結果も出ないし、海外にいる意味もないというか。せっかく海外に行っているのに同じことを何回もやっていても、時間がもったいない。そういう切り替えという面では、普段の経験が生きたのかなと思います。
――清水選手にとってのソチ五輪は、出場自体が当落線上から引き寄せたものでした。ここ一番での勝負強さと集中力が発揮できましたか?
特別、集中力があったということはありません。シーズン序盤はW杯の成績があまり良くなかったので、当初は出られるとは考えていませんでした。でも、あきらめてはいなくて、必死で最後の雪印メグミルク杯を戦った結果、優勝することができました。その時は、最低限の仕事はできたと思いました。
――ソチ五輪に出場できなかった自分を思った時に、実際に出たことの意味をどう感じていますか?
もちろん、僕の競技人生にとって、ものすごくプラスになると思います。やっぱり、五輪で金メダルを取るという目標があって、初出場で取るのは難しいことだと思いますし、経験に勝るものはありません。その舞台を経験しておくことによって、次は、よりスムーズに、ストレスなく臨めると思うので、すごくプラスになったと思います。
飛べば飛ぶほど調子が上がる
団体のメダル獲得にも貢献できた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
ソチに入ってから、飛べば飛ぶほどどんどん調子が上がっていたので、トレーニングの段階から見れば、ありえない順位ではないのかなと思いました。
――直前のW杯も20位台後半などの成績でした。調子が急上昇したと?
はい。現地入りしてから、ノーマルヒルのトレーニングが始まって、いきなり飛んでいくようになり、自分でも驚いたくらいです。ソチのジャンプ台では前の年にW杯の最高順位の9位を取ることができていたので自信もあったし、相性の良い台だと思っていました。自信を持って臨めたのは良かったなと思います。
――最初の予選での緊張と失敗から修正できたのも、そのあたりの自信があったからでしょうか?
予選のジャンプは、かなり大きなミスでした。気持ちを前に前に出してしまって、テイクオフ(踏み切り)の時に前方へ飛び出し過ぎてしまうことが多く、それが露骨に出てしまいました。次からはもっと良いジャンプをする自信があったので、今までやってきたことを準備の段階でうまく整理できたので、あとはやるだけでした。