選手目線で語るつくばロボッツで起きた事 岡田優介から見た日本バスケ界<後編>

大島和人

岡田は昨年7月につくばロボッツに入団。しかし、その後に運営法人の経営悪化問題に巻き込まれ、チームを去ることとなった 【写真:アフロスポーツ】

 岡田優介がNBL(日本バスケットボールリーグ)・つくばロボッツと契約を締結したのは、2014年7月のこと。しかし夢を追って足を踏み入れた新天地で直面したものは、運営母体である「いばらきスポーツアカデミー」(旧つくばロボッツ運営会社、以下ISA)の経営悪化だった。選手たちは不安定な運営、契約条件の切り下げといった事態に巻き込まれ、昨年12月1日には11名の選手が自由契約リストに載るという異常事態も起こった。

 選手たちが頼みにしていたのは、つくば市に本拠を置く技術ベンチャーで、最大のスポンサーである「サイバーダイン」社だった。しかし運営法人や契約条件の継承はされず。今は別法人が立ち上げられ、残留した選手に中途加入選手を加えて、チームは残りのシーズンを戦っている。

 ロボッツの旧法人であるISA内部では何が起こっていたのか。そしてそこから見えてくる日本バスケの課題は何か――。後編では岡田につくばロボッツで起こったことの詳細と、その影響、そして提言を語ってもらった。

「入団前に伝えられていたことがほぼすべて違った」

当時を振り返り「入団前に伝えられていたことがほぼすべて違った」と衝撃の事実を語った岡田 【スポーツナビ】

――トヨタ自動車アルバルクから、つくばロボッツに移籍した経緯を聞かせてください。

 トヨタでは中心選手としてプレーして、優勝もさせてもらいました。僕が役割に徹する、チームの歯車になることはできていたと思います。今後ベテランになっていくと、なおさらそういったことが自然に求められると思うんです。しかし30歳を手前にして、個人としてレベルアップしたかった。東京オリンピックが(2020年に)あって、自分もまだそこでプレーすることを諦めていません。

 幅広いプレーができなければ、背負うものが無ければレベルアップは望めないのではないかと思って、つくばロボッツを選びました。移籍リストへ載ったときに、声のかかったチームがいくつかあって、その中の一つがつくばでした。

 つくばは昨シーズンの成績を見てもそうですが、正直言ってあまりレベルの高いチームではなかった。ただいろんなメンバー構成、今後の夢などを当時の社長(古原賢治氏)に言われて、それなら将来的には成長し、面白い試合もできると期待していました。

――その後の経緯を見ると入団後に、想定外の事態があったようですが。

 入団前に説明されたことのほぼすべてが、嘘で固められていたと僕は感じました。練習環境や運営体制はこう変わるというような、すべてです。夢や今後の話はともかく、練習はここでやるとか、スポンサーはここが付く、遠征がバス移動から新幹線になるとか、そういう確定事項として伝えられていたことが違いました。

 なぜそういうことになったか、何を考えていたかは正直言って分かりません。ただ現実として、まったく有り得ないことをやっていたわけです。ISAは、サイバーダイン社からのスポンサー収入を、2014−15年のシーズン開始前に、1年分を最初からもらっていたと聞いています。それはスポンサー収入の大半です。しかし14年6月のスポンサー収入がまとめて入っていたにもかかわらず、7月の給与から遅延が発生していました。それは(スポンサー収入を)前年度の損失に当てたということじゃないですか? とんでもないところに来ちゃったというのは、7月末の段階で感じていました。

――契約前の段階で、そういったことが起こり得ると感じることはなかったのですか?

 サイバーダインが(つくばロボッツを)子会社化するということも聞いていて、どちらかというとそこありきでした。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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