日本にとって手ごわい相手は韓国 オーストラリアはグループリーグ2位通過

植松久隆

底力のある韓国がオーストラリアに辛勝

オーストラリア対韓国は、1−0で韓国が勝利を収めた 【写真:ロイター/アフロ】

「ひと昔前の『日韓戦』を見ているみたいだ」。連日の高温多湿の異常気象で大量発生したガが飛び交うブリスベン・スタジアムの6階の記者席から、ピッチ上で繰り広げられるオーストラリアと韓国の対戦を観戦しながら、そう思った。
 
 昨夜の90分の熱戦を、かなり強引に1パラグラフで言い表すと以下のようになる。「オーストラリアは、細かいパスをバイタルエリア周辺でつないでチャンスをうかがう。韓国の粘り強い守備に攻め手を欠くとサイドに流れる。守備の体勢が整った相手に、苦し紛れのクロスはすべて跳ね返される。そのこぼれ球が、カウンター気味に強力な『個』が創り出す危険な局面となり何とかしのぐ。再三の決定機も逃しているうちに、前半途中に一瞬の気の緩みで喫していた失点を取り戻せず惜敗」。

 このパラグラフの主語を「オーストラリア」から「日本」に置き換えてみるとどうだろう。そうすると、具体的にどの試合というわけではないが、「日韓戦」で苦しむ日本のイメージが浮かんできた。だからこそ、昨晩のサッカルーズ(オーストラリア代表の愛称)の苦闘を見ての冒頭のような感想となった。

 日本が決勝トーナメントの準決勝以降で対戦の可能性が高いオーストラリアと韓国の両方の試合内容を分析する必要があって、この試合は(観戦中のリアクションなどは別にして)、極力、ニュートラルな視点で観戦するように努めた。

 その結果は、昨夜の「オーストラリア」を悪い時の「日本」と見立てて考えれば明白。現況のチーム状態が必ずしも良くなくても、昨日の試合で押されながらもキッチリ勝利を引き寄せる底力のある韓国の方が、日本にとっては手ごわい嫌な相手になる。昨日のオーストラリアがはまってしまった展開に、日本も陥る可能性があるからだ。しかも、日韓戦となると韓国はいつも以上の“精神力”という“Xファクター”が加味されるから厄介だ。

 昨日の結果を受けて、韓国は、試合の内容や出来はともあれ、3連勝で勝ち点9を積み上げて堂々とグループAの1位通過を決めた。その結果、日本がグループDを2位で通過するようなことがあれば、26日のシドニーでの準決勝で日韓戦が行われる可能性は残る。日本が、20日のヨルダン戦を取りこぼすことなくグループリーグを1位通過すれば、決勝の大舞台での日韓戦が実現するかもしれない。

前回大会のリベンジを狙うオーストラリア

韓国戦で再三の決定機を逃したオーストラリア。この敗戦を受け、グーループリーグを2位で通過することとなった 【写真:ロイター/アフロ】

 何も、オーストラリアが韓国より弱いと言っているわけではない。結果では無く、コンディション面などのチーム状態や移動面の負担などで言えば、オーストラリアの方が格段恵まれている。ただ「日本の対戦相手としてどちらが手強いか」というオーストラリアと韓国かの二者択一を迫られれば、日本にとってオーストラリアの方が組みやすいだろうという考えだ。

 日本のパスサッカーに少なからずインスパイヤされているアンジ・ポスタコグルー監督は、昨年11月の長居での日豪戦(2−1で日本が勝利)で彼我の力関係をあらためて知らされ、日本相手に通用することとしないことの見極めはできている。一朝一夕で、オーストラリアのショートパススタイルがアジアのパスサッカーの本家・日本を凌駕(りょうが)するほどに発展しないことは、他でもない監督自身が分かっている。
  
 日本がグループDを1位通過する可能性を一番高く見積った結果、自分たちもグループAを1位通過すれば、日本との対戦を自国開催の決勝という大舞台まで持ち越すことができる。決勝トーナメントを勝ち進みながら、自らのスタイルに磨きを掛けて、乾坤一擲(けんこんいってき)の対戦で前大会の決勝のリベンジを果たすというのがポスタコグルー監督が描いた最良のシナリオだっただろう。

 しかし、昨夜の予期せぬ敗戦でその目論みは覆った。22日の準々決勝で中国を下せば、27日のニューカッスルで日豪両国があいまみえる可能性が高まった。昨日の試合後、右サイドバックで不動のレギュラーとして活躍するイバン・フラニッチに「中国の次は、日本の可能性が出ているが?」と尋ねると、「そこまではまだ考えていない。今は、次(中国戦)にフォーカスしたい」と優等生の答え。でも、監督も選手も含めてオーストラリア側が日本の動向を気にしていないはずがない。オーストラリアにとって、アジアカップ制覇は日本を破ってこそという思いがある。そうでないと、彼らの脳裏に焼き付いた李忠成のあのボレーシュートの残像は消えないのだから。

 日本が怖いのは、オーストラリアというチームはもとより、日本戦でいつも「2倍増し」の活躍を見せるティム・ケーヒルだ。今大会で日豪戦が実現した折には、ポスタコグルー監督が自らが理想とするパスサッカーにケーヒルをより生かすパワープレーも織り込む戦い方を効果的に見せることができれば、オーストラリアが日本を乗り越えるチャンスの目は出てくる。

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著者プロフィール

1974年福岡県生まれ。豪州ブリスベン在住。中高はボールをうまく足でコントロールできないなら手でというだけの理由でハンドボール部に所属。浪人で上京、草創期のJリーグや代表戦に足しげく通う。一所に落ち着けない20代を駆け抜け、30歳目前にして03年に豪州に渡る。豪州最大の邦字紙・日豪プレスで勤務、サッカー関連記事を担当。07年からはフリーランスとして活動する。日豪プレス連載の「日豪サッカー新時代」は、豪州サッカー愛好者にマニアックな支持を集め、好評を博している

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