「全国頂点へ」日大藤沢の美しき師弟愛 田場ディエゴを成長させた愚直な指揮官
スーパーサブからキャプテンへ
キャプテンに抜てきされた田場ディエゴ(写真)は2試合連続ゴールを決める活躍。指揮官の期待に見事応えた 【写真は共同】
キックオフ前の円陣で「前半から飛ばすぞ!」、「上げて行け!」と田場ディエゴが声を上げると、チームメートから「うぃー!」という返事が戻ってきた。そしてチームが「よし行くぞ!」となった。この日の日大藤沢はディエゴがキャプテンマークを巻いたのだった。チームはプラン通り、前半のうちに2点を奪った。
昨年7月、佐藤輝勝監督と衝突したディエゴが交換ノートによって心を入れ替え、神奈川県予選ではスーパーサブとして活躍。そして12月に入ってから、さらなる成長を遂げたことによって選手権でレギュラーの座を奪い返したのは、1回戦のリポートで詳報した通り。この徳島市立(徳島)戦でドリブルシュートを決め、PK戦では1番手のキッカーを務めて成功したディエゴに対するチームの信頼はさらに厚くなった。2回戦の高川学園戦を前にして、佐藤監督が「今日のキャプテンはディエゴ」と伝えると、チームが「わあ」と盛り上がったという。
「俺としては『何でこんな盛り上がってんだ』という感じでしたけど、うれしかった。頑張ろうと思いました」(ディエゴ)
監督、そしてチームメートの期待に応え、ディエゴは後半、3−1とリードを広げる強烈な左足シュートを決めた。
「彼のこれまでの成長を見て、自分が決断した。本当によく応えてくれました。高校生ですからこれまでの失敗もあるけど、『任せられる信頼性をしっかり作りなさい』と言ってきた。ここでよくこの重圧に応えてくれた。彼の3点目がなければ勝利はなかったと思う。キャプテンという重荷ではなく、それをパワーに変えてくれたと思う」(佐藤監督)
ディエゴと正面から向かい合った日々
それにしても高校サッカーという世界で、監督とけんかした選手が卒業間際になってレギュラーの座をつかみ、キャプテンまで任された例はなかなかないだろう。ぶつかりながらも、どれだけ佐藤監督が特別な情熱とエネルギーと時間をディエゴに費やしたのか、透けて見えてくる。センターバックの小野寺健也が証言する。
「ディエゴくんは監督とぶつかって、スタメンから外されて、罰走とか(交換ノートの)やり取りとかして、強くなって帰ってきた。DFとして後ろから見ていて、ディエゴくんのドリブルで試合の流れが変わったり点を取っているからチームも乗っている。監督は可能性のある選手にしか厳しく言わない。その中でもディエゴくんに対する接し方は違いますね。ディエゴくんに対する愛が伝わってきます」(小野寺)
佐藤監督はディエゴと正面から向かい合った日々を振り返る。
「自分は愚直なんで、愚かでも真っすぐぶつかって行った。お互いにオープンマインドでぶつかり合って良い物を見つけてあげる。特に良い選手には厳しくしてきた。チームというのはそういうもの。できない時には『いいんだぞ、できるんだぞ』と乗せながら、できるようになったらさらに今度は要求してあげる。高校生はまだまだ可能性がいっぱいある。『まだこんなもんじゃない。何でもっと前に仕掛けないんだ。4点目を取りにいくんだ』と、さっきディエゴに言ったら半べそをかいてました」(佐藤監督)
そのディエゴは、「3回戦では日藤(日大藤沢の略称)らしいサッカーで勝ちたい」と語る。ディエゴ曰く、日藤らしいサッカーとはボールと人が連動して回って、相手のDFが足をつるようなサッカー。その先に、日大藤沢が掲げる今季の目標「一気に全国頂点」(佐藤監督)がある。
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