過酷なサバイバルマッチがずらり――大みそかDEEPは格闘人生をかけた祭り

長谷川亮
 大晦日のさいたまスーパーアリーナへ格闘技が2年ぶりに戻ってくる。「DEEP DREAM IMPACT 2014 大晦日SPECIAL」――大会はDEEPが主催するが、パンクラスとの全面対抗戦、さらに修斗から世界王者も参戦と、日本総合格闘技の総力を上げた決戦が行われる。地上波放送がなくなった今も戦いの熱は変わらない。むしろ世界へ打って出るため国内の戦いはより過酷さを増している。勝ち抜きか脱落か、格闘家として生き死にを分ける、戦いの見どころを解説する。

異なる道を歩んできた北岡と吉田

DEEPライト級王者・北岡悟は海外での試合経験豊富な難敵・吉田善行を迎え撃つ 【田栗かおる】

 オープニングファイトを含め20試合以上となる大会で、唯一行われるDEEPタイトルマッチがライト級王者・北岡悟vs.挑戦者・吉田善行の一戦。パンクラスでデビューし戦極、DREAM、IGFとメジャーマットを軒並み踏んできた北岡は、まさにジャパニーズMMA(総合格闘技)の権化というべき存在。肉厚な体から繰り出すタックルで相手を刈り倒し、グラウンドへ移れば捻じ切らんかのフロントチョーク、足関節技で絞め上げる。これまで五味隆典、弘中邦佳、菊野克紀、中村大介といった強豪をいずれも国内大会のメインで下しており、北岡が果たした日本MMAへの功績は大きい。

 一方、吉田は柔道をベースにケージフォースで王者となった後、2008年からUFCに参戦。UFCでは不運もあり2勝3敗となったところでリリースとなってしまったが、その後も復帰を目指して海外を転戦。やはり組み技に強みを持つ点こそ重なるが、北岡とはまるで別の道を歩んできた。ファイターとして全く異なる文化の中で過ごしてきたとも言える2人、まずは北岡の武器であるタックルを吉田が防ぎ切れるかが、その後の展開を大きく左右するだろう。

軽量級期待・元谷は海外強豪と激突

堀口恭司に続いて、UFC参戦、そして王者が期待される元谷は元RAF王者マンザナレスと激突 【花田裕次郎】

 現在UFCで日本初の王座奪取を期待されているのが最軽量フライ級の“超新星”堀口恭司だが、そんな堀口に次ぐUFC参戦と活躍を期待されているのがDEEPフライ級王者である元谷友貴。この元谷、なんと言ってもその進化の速度が尋常ではなく、デビューからわずか1年で王座を獲得。同王座は1年後に失うも、そこから清水清隆、今成正和、前田吉朗、和田竜光と名だたる実力者を立て続けに退けて、当初はスピードある打撃のラッシュが印象的だったが、ここ2戦では続けて一本勝ちを見せており、その驚異的進化の速さで自身の穴を着々と埋めている。それでいながらまだデビューから3年半ほどなのだ。

 そんな元谷にとって試金石になると思われるのが今回組まれたマット・マンザナレス戦。歴代王者がUFCへ進出している米国RFAの元王者であり、マンザナレス自身も評価の高い元谷を下してUFC出場を狙っている。ボクシングをベースとした好戦的なマンザナレスを元谷はいかに料理するのか。UFC行きにつなげるアピールは果たせるか!?

横田vsISAOは連勝街道同士の一戦

4年連続黒星なし、現在10連勝中のパンクラスISAOは現在9連勝・4年間負けなしのDEEP横田との対決に挑む 【t.SAKUMA】

 今年から関係が雪解けし交流がスタートしたDEEPとパンクラスだが、大晦日では王者を含むトップファイター同士による5対5全面対抗戦が実現する。中でも注目は王者対決となるバンタム級の大塚隆史(DEEP)vs.石渡伸太郎(パンクラス)、そしてフェザー級の横田一則(DEEP)vs.ISAO(パンクラス)の2試合だ。

 現在9連勝・4年間負けなしの横田と、こちらも引き分けを挟んで10連勝・4年半黒星のないISAOの対戦は、勝敗の行方が非常に気になる組み合わせ。階級屈指のスピードと察知能力、そして攻防どちらにも機能するタックルを持つ横田を、野生あるいは本能的当て勘を持つISAOが攻略に掛かる。長きに渡る不敗レコードに土がつくのはどちらとなるか。

 前戦では終始圧倒して一本勝ちで締めた大塚に対し、石渡は長身の元UFCファイターにタックルで再三押し込まれてよさを発揮できずに判定負け。大塚が今回も同様に得意のタックルで封じ込めるのか、石渡が前回の不完全燃焼分も爆発させソリッドな打撃を炸裂させるのか。

女子も実力者同士の一戦がマッチメイク

女子も実力者同士の一戦が数多く組まれた。ビジュアルファイター杉山しずかは元プロボクシング世界王者ライカと対戦する 【田栗かおる】

 4試合が行われる女子も、ママさんファイターとなったしなしさとこの復帰第2戦、人気・実力を兼ね備えた杉山しずかvs.キックデビューを果たしたばかりの元ボクシング王者ライカと話題のカードが並ぶが、ここでも浜崎朱加vs.V.V Mei、藤野恵実vs.富松恵美と、それぞれ海外でも試合を行う各選手の格付けマッチとでもいうべき対戦が行われる。UFCでもストロー級が新設され活況を呈する女子MMA、ここは熾烈な国内サバイバルの2試合となる。

 他にも元谷と五分以上の戦いを繰り広げた前DEEPフライ級王者・和田竜光と現修斗世界王者である神酒龍一の一戦など、通常のナンバーシリーズであればメインイベントや間違いなくそれ付近に置かれるであろうカードが目白押し。試合数のボリュームだけでなく、同格・同列の選手を容赦なくぶつけるマッチメイクで、生き残りを懸けた厳しさと緊張感の伝わる年末格闘祭りだ。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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