今が一番の危機、取り残される巨人と阪神 年忘れ、プロ野球大放談(後編)

スポーツナビ

「カープ女子」は営業努力の成果

流行語大賞を受賞した「カープ女子」をはじめ、今年は球場で女性ファンの姿を多く見る1年だった 【写真は共同】

山田:来年はどんな年になるでしょうか? 今年は「カープ女子」なんて言葉も流行りましたが?

中溝:「カープ女子」は本当にすごかったですね。東京ドームでも広島のユニホームを着た女の人が本当に増えました。

山田:ファッション業界が特にですが、「シロガネーゼ」「アシヤレーヌ」のように、先にネーミングを作って、そこに参加することで(気持ちが)満たされるという女性心理は昔からあった。良いアイデアですよね。

佐野:営業努力ですよ。他球団でも、オリックスが「オリ姫」、(横浜)DeNAは「ハマガール」。残念なのは阪神……。「TORACO」はないやろって……。

山田:僕も思いましたよ、「TORACOて……」って(苦笑)

中溝:実際に広島、DeNAなどは観客動員数が増えましたし、地域活性化にもつながったと思います。ひと昔前まではすべてが東京中心でしたけど、それが変わりつつあるのかなと思います。

山田:それこそ佐野さんの時代はどうでしたか? 東京と大阪とでもかなり違いがあったのでは?

佐野:僕らの時代は、巨人、ヤクルトの選手がやっぱりモテていましたね。でも、最大の敵はJリーグですよ。もう、すごかった。スーツにマフラーですよ。僕らなんて、パンチパーマに金のネックレス、小脇にセカンドバックでしたからね(苦笑)。

山田:同じスーツでも原色のダブルでしたからね(苦笑)。でも最近は野球選手もスタイリッシュになってきましたよ。ただ、佐野さんは完全に近鉄顔ですね……。ところで、佐野さんの“ピッカリ投法”というのは、いつ完成したのですか? 僕の記憶では、もうプロの初めからピッカリなさっていたような気がするんですが?

佐野:そうね。プロ2年目ぐらいからメディアに対してハゲネタをやってましたね(笑)。キッカケはやっぱりJリーグ。当時、すごく人気があったのが、カズ(三浦知良)と、アルシンドだったんですよ。「コレだ!」って思いましたね(笑)

山田:なるほど(笑)。でも正直、それで一気に佐野さんの知名度が上がりましたからね。営業努力ですよね。

佐野:僕、ハゲて損したことはないですからね(笑)。人生、何が武器になるか分からないですよ!(一同笑)

さらなる変革、そして子供に夢を!

プロ野球の過去から未来までを思う存分語り尽くした3人。(左から)佐野氏、中溝氏、山田氏 【スポーツナビ】

山田:最後に来季の展望を聞きましょう!

佐野:大げさかもしれませんが、僕はこのプロ野球80年の中で一番の危機が訪れていると思います。パはここ10年、15年の試みがしっかりと実になっているのに対して、セが遅れている。特に巨人と阪神の人気球団が取り残されつつある。その一方で、パはずいぶん前からファンサービスに取り組んできた。それがほぼ確立できたので、ソフトバンクにしてもオリックスにしてもチームを強くするということにシフトしてきたと思う。そのパに立ち遅れないように、セの球団にぜひとも頑張ってもらいたい。

中溝:来年のセ・リーグは面白くなると思います。久々に巨人が優勝できるかどうか分からないシーズンになるはず。巨人ファンとしては複雑な気持ちはありますけど、優勝争い混戦になれば絶対に盛り上がる。そうなってもらいたいと期待しています。

山田:阪神ファンの僕としても複雑ですね。今、いろんな面で一番遅れているのが阪神だと思いますからね。チーム作り、選手育成も昔からぜんぜん変わってない。投手コーチも中西(清起)さん、久保(康生)さん、山口(高志)さんの3人が10年近くに渡ってずっとやっている。こんなチーム阪神だけですよ。そしてファンサービス、チームを取り巻くマスコミも古い体制がはびこっている。阪神はもっと変わらないといけない。パのチームのように、もっと新しいものを取り入れていかないといけないと思います。

佐野:最後に一つ言わせてください。現役選手たちはもっと子供たちに夢を与えてもらいたいですね。最近、僕が一番ガッカリしたのは、巨人の阿部(慎之助)が優勝旅行初日に練習したというニュース。真面目なのは良いかもしれないですけど、「もっと豪快に、派手になれ」と言いたい。活躍をして、お金をもらっているんだから、子供たちに「僕もプロ野球選手になりたい!」って思わせるような、派手で面白いニュースを、来年はもっと聞きたいですね。

(構成:三和直樹)

3/3ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント