今が一番の危機、取り残される巨人と阪神 年忘れ、プロ野球大放談(後編)

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セ・パともに実数発表開始以降では初となる観客動員1000万人超えを記録した2014年。球場には連日多くのファンが足を運んだ 【写真は共同】

 2014年プロ野球を総括し、15年の展望を考える座談会は今回が後編となる。

 12月某日、近鉄などで中継ぎ投手として活躍した佐野慈紀氏、作家・コメンテーターの山田隆道氏、スポーツナビ+の人気ブログ「プロ野球死亡遊戯」の運営者である中溝康隆氏が都内に集合。今回は来季の監督人事、ストーブリーグ、流行語になったあの言葉など、プロ野球の過去から未来について熱く、激しく、語り合った。

※前編「来季の大谷、山本昌に求める成績は?」はページ下部の関連リンクからご覧ください。

パの隆盛はスター監督がいないから?

「原vs.落合」のようなスター選手出身の監督をファンは望むが、それは新たなスターが出ていないことであると佐野氏は解説 【写真は共同】

山田隆道氏(以下、山田):来年の話をすると、新人監督が多いです。他球団を見ても、以前のように全員がスター選手だったというわけではないですね。こういう人事はどう思いますか?

中溝康隆氏(以下、中溝):やはり、ファンとしてはスターが監督になった方がうれしい。ビジュアルも映えますし、現役時代からのストーリーも楽しめる。“原(辰徳)対落合(博満)”は、盛り上がりましたからね。

山田:それはある! 阪神・巨人戦でも、岡田(彰布)さんの時は楽しかった。原さんと岡田さんが試合前に握手するだけでワクワクしましたからね。

佐野慈紀氏(以下、佐野):いや、そうかもしれませんが、そのファン心理がセ・リーグの発展を遅らせているんですよ。若い監督が増えましたが、この流れがどこから来たかと言ったら、全部パ・リーグ。地域密着もそうだし、パの球団はいろいろ工夫して努力、発展していますよ。その中でスター選手もどんどん出てきている。一方で、セはずいぶんと遅れ、「巨人のスターは誰?」と言われたら、まだ原監督ですよね。それだけスター選手が出てきていないということですよ。

山田:なるほど。そう考えると監督にスター性を求めるという発想をなくしたことが、今のパの隆盛を生んだきっかけかもしれないですね。

中溝:巨人も最近は危機感を感じて人気回復へいろいろと変えようとしていると思います。育成重視の考え方や、選手の獲得もです。一定の成果は出ていると思いますが、ファンとしては物足りなさもあります。

野球人気の低迷は本当か?

中溝:プロ野球人気という面では、オールスター戦のテレビ中継が2試合とも途中で打ち切りとなりましたが?

佐野:今のテレビの限界とも言えるでしょうね。

山田:テレビ局が悪いのではなく、専門チャンネルの時代になっているのだろうと思います。

佐野:野球では視聴率が取れないとか言っていますが、昔と違って趣味が多様化して、何よりテレビを見なくなったから仕方ないですよ。だから視聴率にこだわるより、球場に見に来てもらう方に力を入れていけば良いと思います。

中溝:今はTwitterで日本シリーズのダイジェスト映像が流れる時代ですから、地上波で視聴率をどうのこうのと騒ぐのは時代遅れかと思いますね。

佐野:でも、僕は今のパ・リーグの選手に言いたい!「お前ら、お客さん50人の中で投げたことあるんか?」ってね。一生懸命投げているのに、スタンドから「佐野さ〜ん、終わった後に飲みに来てなぁ〜」って声をかけられますからね(苦笑)。

山田:(近鉄の本拠地・)藤井寺球場はスタンドが近かったですからね(笑)。

佐野:昔、「珍プレー好プレー」の番組でよくガラガラの客席でカップルが野球を見ずにイチャついているシーンなんかがよく取り上げられていましたけど、あれ、ホンマですからね。昔、(近鉄の準本拠地・)日生球場で試合前の練習を終えた(当時・千葉ロッテの)バレンタイン監督が、「ところでメーン球場はどこにあるんだ?」って言いましたからね(苦笑)

山田:そう考えると、報道されている“プロ野球人気低迷”っていうのはウソなんじゃないかと思いますね。ただ単に地上波の視聴率が下がっているだけ。単純に見て、球場に足を運ぶファンの数は確実に増えてきている。

中溝:地上波の視聴率低迷に一番影響を受けているのが巨人です。昔はテレビをつけたら普通に巨人戦をやっていましたし、そこまで興味がない人でも、なんとなく見て、そこから巨人ファンになった。野球ファンの数は変わらない、あるいは増えているかもしれませんが、巨人ファンの数は確実に減ってきたと思います。

佐野:最近は阪神の中継も減りましたから、関西における阪神もそういう影響が出てくるでしょうね。でも、テレビでやってないから球場に見に行くという人もいる。そこが難しいところですね。

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