秋山成勲が語るケガと復活勝利と今後

長谷川亮

「何と言っても強い選手が好き」

約2年半ぶりの復帰を果たした9月のUFC日本大会で勝利した秋山成勲。今回は左ひざのケガ、復活勝利、今後の目標について話を聞いた 【長谷川亮】

 9月の「UFC FIGHT NIGHT JAPAN 2014」で左ひざのケガを乗り越え復活勝利を果たし、今月7日の「UFC181」でゲスト解説を務めた秋山成勲を番組収録後にキャッチ。復帰戦はもちろん再起までの日々と胸中、そして見据える来年の戦いとを聞いた。

――今日はWOWOWでの「UFC181」解説後のインタビューとなりましたが、大会の感想はいかがですか。

 すごく面白い大会でしたし、同時にすごく勉強になりました。やっぱり(アンソニー・)ペティスの試合もそうですし、最後のロビー・ローラーの試合もそうですし、トップの選手はトップの選手の戦い方があるんだなと思いました。気持ちの部分とか技術もそうですけど、フィジカルであったり、全てにおいてトップであるからこそあの場に立てる、全てを兼ね備えた選手たちだなと思いました。

――どこかの部分が突出しているのではなく、全てを高いレベルで兼ね備えていると。

 もう全てが突出している感じです。そうでないとあの場所には立てないですし、ベルトも巻けないんじゃないかと思いました。

――まずライト級ではアンソニー・ペティスが苦しんでいたギルバート・メレンデスのタックルへ徐々に対応していき、2Rにタックルを切ったと思った瞬間、ギロチンチョークを極め勝者となりました。

 あの場面はあのまま立って打撃で行くんじゃないかと思ったんですけど、あそこでスッとチョークに行けたっていうのはすごい切り替えの速さで、もしあそこで取れなかったらまたタックルで押し込まれて削られるパターンになる可能性が高いので、そこの判断、そして取り切ってしまう技術がスゴいなと思いました。

――ご自身の階級であるウェルター級ではロビー・ローラーが接戦を制して王者ジョニー・ヘンドリックスを下し、新たなチャンピオンとなりました。

 彼を目標にまたみんなが動き出すと思いますし、彼の戦い方を次は参考にしていきたいなと思いました。でも判定は微妙で本当に甲乙つけがたい、だから実際2−1に割れましたし、また普通にファンとしてもう1回見たいですよね。

――「ファンとして」という言葉が出ましたが、秋山選手自身は「こういうファイターが好き」という傾向が何かあるのでしょうか。

 うーん、ペティスなんかはカッコいいし、派手なので好きですけど、前にGSPが見せていたようにタックルへしっかり行ってテイクダウンを取るっていうのを徹底する、ああいう選手も好きですし、「こういうタイプが好き」っていうのはないんですけど、もう何と言っても強かったら好きです(笑)。

ケガの間に備わった豊富な知識

復帰戦ではアミール・サドラー相手に判定3−0と勝利。UFCデビュー戦となった2009年7月以来の勝利となった 【花田裕次郎】

――なるほど、やはり強さこそ最大の魅力であると(笑)。では、次に2年半ぶりとなったご自身の試合を振り返っていただきたいのですが、ブランクの原因となったケガのことから教えてください。

 練習中のケガで左ひざの前十字靭帯をやって(断裂)しまって、柔道時代にもないぐらいのものでした。ケガがケガで、年齢とかいろんなことも考えて、どうしようかと思ったんですけど、でもそれは本当に少しの間しか思わないで、すぐに気持ちを切り替えて、次の試合に出るために今何をしなくてはいけないのかということを考えてスケジュールを立て、一生懸命リハビリに打ち込んできました。

――解説でも前回ケガを負ったジョニー・ヘンドリックスの状態を気にされていて、そこは同じ経験をした秋山選手ならではなのかなと思いました。

 ケガをして強くなる選手もいれば、それを気負って弱くなってしまう選手もいますけど、そういった意味でジョニー・ヘンドリックスがどういう形で試合に復帰するかっていうのは自分も興味がありました。そこはメンタル力だと思いますし、でもそういうことを全く見せない試合だったので、それも素晴らしいなと思いました。

――ひざは踏み込みだったり、さまざまな動きに影響してくる箇所で、そのため感覚が以前と異なったり、ブランクによる試合勘の衰えも考慮し、復帰戦となった9月のアミール・サドラー 戦は不利を予想していました。ですが、試合では終盤まで動きの落ちないスタミナを発揮し判定勝利となりました。ご自身で振り返っていかがですか?

 日本開催ということもありましたし、試合でのコンディションは本当に良かったです。それまで2年間、リハビリ+いろんな知識が自分の中へ豊富に備わって、それが体に反映して調子が良かったんじゃないかなと思います。

格闘技あってのタレント活動

今後の目標として、「もしUFCが開催されれば出場したい」と韓国での出場に意欲的だった 【長谷川亮】

――ひざの状態・感覚は、試合を終えた今も違うのでしょうか?

 やはり感覚は今も違いますし、なかなかこのひざだけは100%に戻らないんじゃないかと思います。年齢もありますし、でもどこそこが痛いっていうのは格闘家の誰しもが持っているものなので、あまりそういうことは考えていないです。

――いま話の中で出た、年齢についてはいかがでしょう。実感されるところはありますか?

 正直そこまで感じてないですが、疲れが取れなくなったり、フレッシュな気持ちで練習に打ち込めなかったりするのが、昔は昔であったんですけど、それが以前より1日増えたりっていう感じになってきています。それは疲れが体から完全に取れていない、そこが年齢なのかなと思ったりします。でも筋肉に関してはまだまだ成長しますし、どんどん力も付いてきます。もちろんそればかりに頼らずいろんなスピードであったりの強化もして、自分はまだこれからもやるつもりでいます。

――秋山選手はタレントとしての活動もしていますし、絶望的に思えるケガを負い、そちらへ専念しようという考えは浮かばなかったですか?

 うーん、やっぱり格闘技ありきの仕事だと思っているので、それを辞めてしまうことは自分の中では選択肢としてなかったです。今はまだ次の試合がいつ組まれるか分からない状態で、試合でのケガもあってやっと少しずつ動けるようになってきたので、また試合に向けて動き出して、もっともっとやっていきたいと思います。

――復活の年を終え、来年の意気込みを最後に聞かせてください。

 今は韓国でもUFCをやるかもしれないっていう状態で、やはり日本でもやったので韓国でもやりたいっていう気持ちがすごくあるので、うまくニーズと合えばいいですよね。もし開催が決まったらやっぱりそこに出たいですし、集中して気を引き締めていきたいと思います。

◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆

★UFC JAPAN 2014 完全版
12月31日(水)深夜1:00 [WOWOWライブ]
9月に放送した「UFC JAPAN 2014」の完全版。全試合に加え試合後記者会見、インタビューなど
未放送映像まで大晦日の深夜に完全放送!

★生中継!UFC−究極格闘技− UFC182 いよいよジョーンズvs.コーミエ!堀口参戦!
絶対王者ジョン・ジョーンズのけがで延期となっていたコーミエ戦がいよいよ実現!UFC3連勝で勢いに乗る堀口恭司も参戦!ライト級トップを狙うセローニvsジューリー戦も。
2015年1月4日(日)午後0:00〜[WOWOWライブ]※生中継

[主な対戦カード]

<ライトヘビー級タイトルマッチ>
ジョン・ジョーンズ
ダニエル・コーミエ

<ライト級>
ドナルド・セローニ
マイルズ・ジューリー

<フライ級>
堀口恭司
ルイス・ゴーディノ

★生中継!UFC−究極格闘技− UFC182.5 グスタフソン&ダンヘン 復活劇
ライトヘビー級タイトル挑戦に失敗し、もう一度頂点を狙うグスタフソン。階級をミドル級に下げ、もう一度トップを狙うダンヘン。このままでは終われない男2人の復活劇。
2015年1月25日(日)午前10:00〜[WOWOWメンバーズオンデマンド]※先行ライブ配信
2015年1月25日(日)深夜0:30〜[WOWOWプライム]

[主な対戦カード]

<ライトヘビー級>
アレクサンダー・グスタフソン
アンソニー・ジョンソン

<ミドル級>
ダン・ヘンダーソン
ゲガール・ムサシ
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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