強者集いしフォーミュラE参戦のススメ=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第36回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

フォーミュラEで輝くF1経験者

北京で行われたフォーミュラE開幕戦でのドライバー集合写真。F1経験者をはじめとした、歴戦の強者ぞろいだ 【F1Sokuho】

 F1グランプリを経験したドライバーの技量の高さはさすがと言うべきだ。最近、そのことを確かめるチャンスが与えられて、あらためて感心している。その舞台になるのがフォーミュラEだ。今年から始まった新しいFIAの選手権シリーズ。バッテリーとモーターだけで走る完全EV(電気自動車)のフォーミュラカーによるレースだが、新しいモータースポーツの息吹を感じるカテゴリーとして、次第にファンを獲得しつつある。そのフォーミュラEが注目される理由のひとつに、世界中のあらゆるカテゴリーからドライバーが参加し、そこでF1経験者の実力が抜きん出ていることを確認できるからだ。

 フォーミュラEは先日、南米・ウルグアイのプンタ・デル・エステで第3戦が開催された。そのレースに参戦したドライバーの名前を挙げてみよう。

【F1決勝レース経験あり】
ジャン・エリック・ベルニュ、ネルソン・ピケJr.、ルーカス・ディ・グラッシ、ジェローム・ダンブロジオ、セバスチャン・ブエミ、カルン・チャンドック、ブルーノ・セナ、ヤルノ・トゥルーリ、ニック・ハイドフェルド、ステファン・サラザン、ハイメ・アルグエルスアリ

【F1テスト走行経験あり】
アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ、ニコラ・プロスト、サム・バード

【F1経験なし】
サルバドール・デュラン、マシュー・ブラバム、ダニエル・アプト、アントニオ・ガルシア、オリオール・セルビア、ミケーラ・セルッティ

 その他にはインディ、GP2、WECなどのドライバーもいるが、圧倒的にF1経験者が多い。20人のドライバーのうち実に14人ものドライバーがF1を経験しているのだ。開幕戦、第2戦に参戦したドライバーでは、以下の4名が加えられる。

【F1決勝レース経験あり】
佐藤琢磨、フランク・モンタニー、シャルル・ピック

【F1テスト走行経験あり】
ホーピン・タン

 なんとも豪華な顔ぶれがフォーミュラEで戦っている。

いきなりPP獲得のベルニュ

 これだけのドライバーが競うフォーミュラEが面白くないはずはなく、毎戦激しい戦いが繰り広げられている。特に、ディ・グラッシ、ブエミ、ハイドフェルドあたりの攻防戦は強烈な激しさだ。そこに、第3戦プンタ・デル・エステではもう一人のF1ドライバーが殴り込みをかけ、いきなりポールポジションを奪ってしまったからたまらない。

 ジャン・エリック・ベルニュだ。つい先日までF1に乗っていた経験を生かしたフォーミュラE挑戦。決勝ではリタイアしたものの、常にトップグループを走る速さを見せて現役F1ドライバーの力を示した。ただ、前半の俊足はバッテリーを酷使することになり、他車より1周早いピットインを強いられた。後半もトップを走るブエミを追いかけたが、壁に接触したのかサスペンションを壊している。そのベルニュは、フォーミュラEについてこう言う。

「F1と比べると出力も低いしスピードも低いが、レースとしては激しい争いがあって面白い。それに、バッテリーの使い方を間違うとレースには勝てない」

 こうしたトップドライバーの戦いが注目される中、レースを重ねるにつれて勢力図が固まりつつある。これはチームの体制、レースへの取り組みの差によるものかもしれない。例えばブエミの加入するe.ダムス・ルノーは、バッテリー、モーター、ギアボックスといったパワーユニットのコントロールに関してルノーから全面的なサポートを得ており、最も効率的な性能を発揮できるような開発が行われている。それはアウディ・アプトも同様で、彼らはアウディからの支援を受けてレースを戦う。1年目の今年はシャーシもパワーユニットもFEH(フォーミュラEホールディング・リミテッド)の定めるワンメイクではあるが、それらのコンポーネンツをいかに使用するかで性能は大きく変わるはずだからだ。

1/2ページ

著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント