強者集いしフォーミュラE参戦のススメ=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第36回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

進化へ、日本メーカーの参入求む

鈴木亜久里率いるアムリン・アグリも開幕年からフォーミュラEに参戦中 【写真:ロイター/アフロ】

「チームの力が成績に結びつく」と言うのは、ヴェンチュリーのハイドフェルドだ。

「フォーミュラEはドライバーの力だけでは勝てない。チームがどこまでクルマのことやレースのことを知っているかが成績に直接結びつく。幸い、われわれのヴェンチュリー・チームはEVに関して知識の高い者が多く、またルノーからの価値あるアドバイスがあって毎レース改良がなされ、速さが増してきている。自動車メーカーの支援は非常に心強い。彼らにとってもこれからのクルマに重要な技術開発の場だと考えているのではないか」

 自動車メーカーのフォーミュラEチーム支援といえば、わが国ではホンダが興味を持っていると言われる。鈴木亜久里率いるアムリン・アグリの参戦もあり、スーパーアグリF1などからの縁もある。シーズン2年目以降にパワーユニットが自由化された場合には、ぜひアムリン・アグリへ積極的な介入を果たしてもらいたい。ただ、開幕戦の行われた北京のレースに来場していたホンダ関係者の口からは、フォーミュラE参戦の確約は取れなかった。

 トヨタ同様にホンダもFCV(燃料電池自動車)にかじを切るとしても、モーターやシステムの性能向上は必須で、その先行開発にフォーミュラEを使用することは大いに価値のあることではないだろうか。そして、ホンダがフォーミュラEに取り組むことで、日本人ドライバーの参戦も期待できるかもしれない。

さらなる日本人ドライバー参戦を

 フォーミュラEの取材をしていて一番寂しいのはそこに日本人ドライバーが少ないことだ。フォーミュラEに限ったことではないが、欧米のレースにはとにかく日本人ドライバーが少ない。これは、日本でレーシングドライバーという職業が成立していない証拠だろう。

 プロのレーシングドライバーは、カテゴリーを問わず世界中のレースを渡り歩いて活動する。ステファン・サラザンはその好例で、WEC、WRC、フォーミュラEと何でもござれだ。請われればどこにでもヘルメットひとつ持って飛んで行く。こうしたドライバーが日本には不在だ。海外のレースに参加するドライバーといえば、猫もしゃくしも“F1目指して”という大仰な目標を持っている。もちろんそれはそれでいいが、そろそろF1という呪縛から自らを解き放してはどうか? 

 F1の前に、フォーミュラEのような歴戦の強者が戦う混沌(こんとん)とした舞台に身を投じ、自らの力を試してみるのはどうだろう。そこで連戦連勝できるようならF1への道も開けるかもしれない。しかし、10位や15位を低迷しているなら最初からF1なんて夢のまた夢。どこからもお呼びがかからなくなる前に、方向性を変えるぐらいの決断をすることも大切だ。

 さあ、現在のポジションに不満な人、オレにはもっと才能があると思っている人、とにかく日本を飛び出してみたいと思っている人、F1なんかクソ食らえと思っている人、ちょっとフォーミュラEに来て戦ってみないか? しかし、覚悟して来ないと、甘い世界じゃないよ。ブエミ、ディ・グラッシ、ハイドフェルド……。奴らをやっつけるのは相当に難しい仕事だ。それでもやってやろうという奴、一発自分を賭けてみるのもいいぜよ。

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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