30・31日で井上尚、内山ら世界戦7つ=12月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

V8王者・内山「右を打ち抜ける」と調子も好調

大みそかには内山が9度目の防衛戦、田口は世界初挑戦、河野は初防衛戦とワタナベジム3人衆がトリプル世界戦に出陣する 【船橋真二郎】

 31日の東京・大田区総合体育館もトリプル世界戦。世界王者として、4年連続で大みそかのメインを務めることになったWBA世界スーパーフェザー級王者の内山は、丸1年ぶりのリングに9度目の防衛戦を迎える。挑戦者は同級9位のイスラエル・ペレス(アルゼンチン)。ランクは下位ながら、内山と同じ35歳のペレスはシドニー五輪に出場しており、「アマチュアの実績は自分より上」とV8王者は敬意を示す。

「世間から忘れられたころに試合をする」と冗談めかすが、常に「1日1日、強くなるのが仕事」と口にする内山はこの1年間、ハードなトレーニングと節制を変わらず自らに課してきた。痛めていた右拳の調子も良いようで「(右を)打ち抜けるようになったのは大きい」と話す。国内にとどまるべき器でないことは誰もが認めるところ。「来年は4カ月ペースで(3試合)やりたい」という中には、海外で力を示したいという切なる願いも含まれている。まずは目の前のペレス戦で「内山はやっぱりすごいなと思ってもらえる試合をしたい」と日本の絶対王者は意気込んでいる。

河野が初防衛戦、田口は世界初挑戦

 WBA世界スーパーフライ級王者の河野公平(ワタナベ)は同級5位のノルベルト・ヒメネス(ドミニカ共和国)との初防衛戦に臨む。当初、WBAから挑戦者に指名された亀田興毅は国内で試合ができない状況が続き、調整に時間を取られたこともあって、王座に返り咲いた試合以来、9カ月ぶりのリング。「世界戦ができる喜びをかみ締めて、何が何でも勝ちたい」と河野は“2度目”の初防衛戦に全力を注ぐ。

 トリプル戦の最初に行われるのはWBA世界ライトフライ級王者のアルベルト・ロセル(ペルー)に、同級9位の田口良一(ワタナベ)が挑む一戦。これが世界初挑戦の田口は昨年8月、井上尚弥に日本王座を奪われるも、フルラウンド奮闘し、逆に評価を高めた。ロセルはアトランタ五輪にも出場しているアマ経験豊富でプロキャリアも上回る36歳のベテランだが、田口は「こんなチャンスは2度とない。自分からアグレッシブに攻めて、必ず勝ちたい」と燃えている。大みそかの『THE BEST OF BEST』はテレビ東京が中継する。

大阪では井岡が3階級制覇見据えて前哨戦

大みそかの顔でもある井岡は来春の3階級制覇挑戦を見据え、大事な前哨戦を迎える 【中原義史】

 31日の大阪・ボディメーカーコロシアムでは井岡が元WBA世界フライ級暫定王者のジャン・ピエロ・ペレス(ベネズエラ)とのノンタイトル戦に臨む。陣営は3階級制覇を目指して、WBA世界フライ級王者のファン・カルロス・レベコ(アルゼンチン)と交渉してきたが、王者の負傷でまとまらなかった。来春の挑戦を見据え、井岡にとっては大事な前哨戦となる。

 さらに、ミニマム級で世界3団体(WBA、WBC、IBF)を制し、4団体制覇を目指す高山勝成(仲里)と日本同級王者で2度防衛中のサウスポー・大平剛(花形)とのIBF世界ミニマム級王座決定戦、元WBA世界ミニマム級王者の宮崎亮(井岡)のノンタイトル戦、日本スーパーフライ級王者の石田匠(井岡)の初防衛戦が行われる。大みそかの大阪興行はTBS系列で中継される。

6日の後楽園は日本の実力者が勢ぞろい

 6日に東京・後楽園ホールで行われる『ダイナミックグローブ』もトリプルメインイベント。WBC世界ライト級11位の荒川仁人(八王子中屋)と日本同級王者の加藤善孝(角海老宝石)の一戦は、新人時代の1勝1敗を受けての8年越しのラバーマッチ(決着戦)。サウスポーの荒川は昨夏のオマール・フィゲロア(アメリカ)とのWBCライト級暫定王座決定戦、今年3月のリナレスとのWBC同級挑戦者決定戦とアメリカで連敗したが、勇敢な戦いぶりが評価された。右ファイター型の加藤は現役日本王者で最多となる7連続防衛中と、国内で地力をたくわえてきた。国内ライト級トップ同士の激突は、プライドと意地を懸けた戦いになる。

 そのほか、東洋太平洋・日本ミドル級王者の柴田明雄(ワタナベ)に元王者の淵上誠(八王子中屋)の昨年5月以来の再戦(柴田の9ラウンド負傷判定勝ち)、元東洋太平洋王者の小國以載(角海老宝石)と昨年4月、マカオで元世界王者に判定勝ちしている石本康隆(帝拳)の実力者同士の日本スーパーバンタム級王座決定戦と、12月の先陣を切って行われる興行も盛りだくさんだ。ちなみに試合の模様はCS放送日テレG+(ジータス)で後日、録画放送される。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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