【ラグビー/NTTリーグワン】世界的スタンドオフからの金言。 日本ラストゲームでも魅せたボーデン・バレット<BR東京 vs トヨタV>

トヨタヴェルブリッツ アーロン・スミス選手(左)とボーデン・バレット選手(右) 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
BR東京 18–45 トヨタV


リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)のホストゲームとしては今季最多の16,951人が来場した秩父宮ラグビー場での一戦は、後半20分ほどまでは互角の展開だったものの、ビジターのトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)は、世界的なスクラムハーフであるアーロン・スミスなど、途中出場の選手たちがチームにエナジーを加え、逆転勝ちを収めた。

この試合で最も注目されたのはトヨタVのボーデン・バレットだった。今後もニュージーランド代表として戦いたいと、単年契約を前提として今季はトヨタVでプレー。この試合が日本での最終戦だった。後半28分には絶妙なキックパスから古川聖人のトライをアシスト。BR東京ファンからも大きな拍手が贈られた。

「リーグワンはいろいろな国から素晴らしい選手がやってきてプレーしています。その中でより多くのプレースタイルを学びました。それはニュージーランドでも生かせると思います」とボーデン・バレット。2020年にはトップリーグのサントリーサンゴリアス(当時)でも同じように1シーズンプレーをしたが、レベルが向上したリーグワンから多くの学びを得たという。

逆にボーデン・バレットは、トヨタVに在籍したおよそ半年間で、日本ラグビー界やチームに大きなものをもたらした。「一緒にやっていて思ったのは、すごくディテールにこだわるし、常にノートを見て緻密にラグビーを考えている」と、キャプテンの姫野和樹はその勤勉性に影響を受けた選手も多いと語った。それは今後のトヨタVにとってのレガシーになっていくだろう。

ただ、そのボーデン・バレットやアーロン・スミスという世界的なスーパースターが加入しても、トヨタVはプレーオフトーナメントに進出できなかった。ボーデン・バレットは今後のトヨタVの改善点について、「上位チームは一貫性をもっているし、メンバーも長い時間をかけて同じコンビネーションで育成されている。それがチームのDNAとなり、それを選手たちも信じて、コミットしてやっていくことが大事」だと提言した。

最後まで千両役者として輝いたボーデン・バレット。彼の助言をどのように受け止め来季トヨタVはどのように変わるのか楽しみだ。

(斎藤孝一)

リコーブラックラムズ東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(右)、松橋周平 共同バイスキャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「まずはトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんにおめでとうと言いたいです。60分くらい(後半17分)までは13対12でしたが、60分を過ぎたあとはアーロン・スミスなどが変化をもたらしたと感じました。(アーロン・スミスが)ゲームのテンポを上げたり、ウチの選手に疲れがちょっと見えたりしました。60分までは本当に良かったと思いました。僕の隣に座っている彼(松橋周平)も、また今日も素晴らしかったと思いました。若い選手たちにとっていい学びになったと思います。80分間高いレベルを続けないといけないということ、それができなかったときにどうなるのか、残念ながら辛い思いをしながら経験をすることも必要なのかなと思います。いい状態でスペシャルなプレーヤーが残り20分から出てきたゲームでした。

ポヒヴァ(ロトアヘア ポヒヴァ大和)が今日(ジャパンラグビー トップリーグとジャパンラグビー リーグワン通算)100試合ということで、彼にとっても今季1年は簡単ではなかったと思いますけど、その中でもしっかりとレジリエンス(耐久力)を見せ続けて、しっかりとファイトし続けて、チームにとってどれだけ大切なのか、そういった行動を見せてくれたと思います。(リーグワンデビューとなった津村)大志に関してはベンチスタートの予定でしたが、ウォーミングアップ中に(中村)公星が肩をけがしてしまって、彼にとって想像していた形ではなかったかもしれないですけど、その中でもよくやってくれたと思います」

――伊藤耕太郎をフルバックで使った意図を教えてください。
「今週(の練習で)は1秒も15番で(周りと連係を)合わせていません。セミシ(・トゥポウ)がハムストリングを痛めたので、そこでの交替が必要でした。(15番の選手として)カバーする可能性はあると話はしていたんです。ラグビー選手としてのベースはあるので、どこでもプレーできると思いました。センスをしっかりと見せてくれて、これからすごく楽しみだと思います。

(中楠)一期についても、若い10番がチームを動かしてリードをするというのは簡単なことではないのかな、と。なので、練習試合で2試合プレーをしてもらって、そこでパフォーマンスを見せてくれて、もういけると(判断しました)。これから一期と耕太郎、二人であそこのポジション(10番)を奪い合ってもらう。これはすごく良いことがあるのではないかなと思います。そこにアイザック・ルーカスらもプラスできるので、かなり面白いものができると思います」

――『BREAKTHROUGH』がスローガンだったが、チームの成長を感じられた部分はありますか?
「若い選手たちがブレイクスルーするという形ができたのかなと。ここ最近で言えば、ルーキーのメンバーやアーリーエントリーのメンバーといった若い選手が絡んでいます。すごくポジティブな、ブレイクするストーリーができるのではないかなと思います。いまは痛みも伴っていますが、彼らがこれから成長して、そこに松橋や(武井)日向のようなリーダーが加わって前進していけば、すごくいいチームのベースができると思います。チームとしては自分たちの目指していた形にはならなかったですけど、個人としてはいいブレイクスルーのストーリーがいくつかあったと思います。

そして次の2、3週間は、松橋も言っていましたけど、とにかく自分たちが成長し続けること、日々成長していくことですかね。個人レベルでしっかりと成長していくことで、チームとしてプラスになって強くなっていくことにつなげたいと思います。

今日は16,000人を超えるファンの方々が来て下さったことをまず感謝したいです。“ブラックラムズファン”ばかりだったと思いますけど、トヨタVファンの方も来場していただき、すごく良い雰囲気の中でプレーができました。本当にありがとうございました」

リコーブラックラムズ東京
松橋周平共同バイスキャプテン

「やっぱり負けは悔しいです。本当に勝ちたかったし、たくさんのお客さんが来ていただいて、僕らが勝つチャンスもあったと思うので、残り20分で相手に勢いを与えてしまい、ああいう形になってしまったのは悔しいですし、その差というのは意外に大きいのかなと思っています。ラストの20分は控えも含めて、出ている選手がどれだけ集中して、自分たちのやることにもう1回戻れるのかということがすごく大事になると思いました。今週は相手というよりも自分たちにフォーカスして、ディフェンスでもアタックでも、僕らが相手に何をするのか、というのを言い聞かせて、そこにフォーカスする用意をしていました。プレッシャーもありましたが、本当に(集中が)切れずに60分まではできていたと思います。ただ、やっぱり80分をとおして勝たないといけないので、そこに関してはしっかりとリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)として変えていかないといけないと思いました。残り2試合(入替戦が)あるので、もう相手には容赦なく、80分間容赦なくやり続けたいなと思っています」

――D1/D2入替戦は異質な試合になると思います。上位チームとしてどんなメンタルで臨みますか?
「不安はまったくありません。僕らは1年間ちゃんとやってきた部分はあるので。結果としてこういう順位になってしまいましたけど、僕ら自身がディビジョン1でしっかりと戦えているのは証明できているので、それを常に見せるというか、フィジカルやスキルをプレッシャーの中でも出せるということを、しっかりと見せることが大事だと思っています。もちろん相手もD1を相手に100%で来ると思うので、自分たちが相手に何をするのか、僕たちにフォーカスをしてこの1年やってきたことをしっかりと証明したいと思います」

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(右)、姫野和樹キャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ

「今日の試合は暑さの中で、非常にフィジカルでタフな試合になりました。チームとしては姫野(和樹)を筆頭に粘り強くプレーし続け、その成果が後半に来たと思っています。チームを誇りに思います」

――今季出場機会が少なく、苦労していた古川聖人選手と須藤元樹選手にトライが生まれました。彼らの評価は?
「須藤に関しては、層が厚いポジションの中で、非常に前向きな状態を保ってくれました。今回も別の選手のけがが理由で出場することになり、試合の中でもけがを理由に(早目に)プレーすることになりましたけど、そういった局面の中でも非常に良いプレーを見せてくれて、トライする姿も見られて非常に良かったと思います。彼に限らず、秋山(大地)とか古川(聖人)とか、そういったベンチメンバーも持ち味を出して、いい仕事ぶりを見せてくれたと思います」

――プレーオフトーナメントに進出するために、チームに足りなかったところについて、どう考えていますか?
「昨シーズン、そして今シーズンに関しても、接戦で僅差の試合を落としてしまう場面があったと思います。第2節・横浜キヤノンイーグルス戦、そして第10節・東京サントリーサンゴリアス戦など、最終盤で負けてしまう場面が多くありました。そういった接戦の中でのメンタリティーを伸ばしていくことが重要だと思います。そこさえ修正できれば、トップ4、そしてそれ以上を目指すチームになれると思います」

――16,000人を超えるファンが集い、ビジターチームにも声援を送っていたことについてどう感じましたか?
「このリーグはファンの熱意やプレーヤーのスキルのレベルという部分を加味しても、本当に世界のトップリーグになり得るリーグだと思います。そういったリーグの一員になれたことを誇りに思います」

――ボーデン・バレットが日本ラグビーにもたらしたもの、チームにもたらしたものについて、どう感じていますか?
「2日前のチーム練習のあとに、彼がタックルバッグを持ってほかのメンバーのタックル練習をサポートするという場面がありました。そういうチームファーストの姿は、(選手たちの)鑑だと思います。彼のそういった姿勢や(ラグビーに対する)向き合い方というのはチームに残っていくものだと考えています」

――プレーオフトーナメント進出の可能性がなくなったあとのリーグ戦ラストゲームをどういうマインドで臨ませたのでしょうか?
「姫野、そしてリーダー陣が本当によくチームをまとめてくれて、この試合を消化試合にしないように、意味を持たせてくれました。それは多くのプレーヤーが今季でいなくなることや、そういった選手たちに対して、良いパフォーマンスをすることによって、良い送り出しをしようという話をしていました。そして私自身が感じていることとして、トヨタVというチームは本当にチームの絆を持っている、そしてお互いのためにプレーしようという気持ちが高い、そういうチームですので、今日の試合ではそういう選手の気持ちが見られたと思います」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「この暑さの中でハードワークしてくれた選手たち、そしてコーチたち、そして今シーズン本当にみんなが勝つという目標に向けて、すごくハードワークしてくれたことを誇りに思います。そしてありがとうございました。自分たちとしては今日の試合、順位というところにまったく関係なかったですが、自分たちの未来に向けて、自分たちの夢はやっぱりリーグを制することなので、そこに向かって自分たちのラグビーをすること、そういう意味のある試合だと伝えました。本当にそれをすごく体現してくれて、すごくいいラグビーができたのではないかと思います」

――プレーオフトーナメントに進出するために、チームに足りなかったところについて、どう考えていますか?
「ラグビーのことに関してはいろいろあると思いますし、これからもっと見ていかないといけない部分はありますけど、ベン(・ヘリング ヘッドコーチ)が言っていたようにメンタリティーの部分、それに勝ち切るというところと、今シーズン常々言っていましたけど、一貫性というところが非常に重要になると思います。いまのビジョンはみんなが分かっていると思いますし、進んでいく方向性は間違っていないと思うので、そこに関しての努力と一貫性(を意識して)、もっとリーダーとして引っ張っていきたいと思います」

――16,000人を超えるファンが来場し、トヨタVへの声援も大きかったことについてどう感じましたか?
「本当にラグビーのファンはみなさん温かくて、敵味方関係なく良いプレーが起きたら拍手をしてくれますし、これだけのお客さんがコンスタントに入ってくれているので、今シーズンを見ていると、本当にラグビーというスポーツの価値が高まっているなと感じています。なので、ここに留まることなくもっと一貫性を持って集客していくことが大事だと思いますし、プレーヤーとしてはもっとグラウンドで魅力のあるラグビーを発信し続けるということがすごく大事な責任だと思っているので、その責任を僕は今後も果たしていきたいと思います」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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